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2002.09.30

シロリムス溶出ステントの大規模試験「SIRIUS」が結果発表、総再狭窄を4分の1に抑制

 薬剤溶出ステントに心イベント・再狭窄予防効果があることが、1000人超を対象とした大規模試験で再び確認された。大規模無作為化比較試験「SIRIUS」*の最終結果で、米国Lenox Hill病院のJeffrey W. Moses氏らが、米国でこのほど開催された第14回経カテーテル心血管治療学会(TCT2002)で発表した。一次評価項目の「PTCA(経皮的冠動脈形成術)9カ月後の複合心イベント発生率」、二次評価項目の「8カ月後の再狭窄率」のいずれも、シロリムス(ラパマイシン、海外での商品名:Rapamune)溶出ステントが標準ステント(ベアステント)を有意に下回った。

 昨年秋の欧州心臓学会(ESC)で発表され、心イベント・再狭窄予防効果を示して大きな注目を集めた「RAVEL」**もシロリムス溶出ステントの試験だが、参加人数は200人強。より大規模な「SIRIUS」試験で同様の効果が示されたことで、心血管インターベンションにおけるシロリムス溶出ステントの位置付けが、より確固たるものとなったと言えそうだ。

 「SIRIUS」試験では、冠動脈1枝病変を持つ患者1058人を、シロリムス溶出ステント群(533人)とベアステント群(525人)に無作為に割り付けて、心血管イベントの発症や再灌流療法の実施率などを調べた。いずれの群にも、糖尿病や高脂血症など、再狭窄発症の有意な危険因子を有する患者が多く含まれていた。

 PTCA後9カ月間の複合心イベント(心臓死+心筋梗塞の発症+標的血管での再灌流療法の実施=TVR)発生率を一次評価項目として両群を比べると、ベアステント群で21.0%(110人)だったのに対し、シロリムス溶出ステント群では8.6%(46人)となり、シロリムス溶出ステント群で4割抑制されることがわかった。ただし、死亡率と心筋梗塞の発症率には両群に有意差がなく、大きな差を示したのは、標的病変に対する再灌流療法(TLR)の実施率(16.6%対4.1%)だった。

 また、二次評価項目の一つである再狭窄率(血管内径が50%以上短縮した症例)では、ステント内およびステント両端の再狭窄発生件数を合計した「総再狭窄率」を評価した。すると、総再狭窄率は標準ステント群で36.3%、シロリムス溶出ステント群で8.9%で、シロリムス溶出ステントにより4分の1に抑制されたことが明らかとなった。

ステントの近位端に再狭窄が偏在、薬剤溶出ステントの弱点に

 この再狭窄のパターン分析からは、薬剤溶出ステントの弱みも見えてきた。両群での再狭窄の発生パターンを調べると、ステント挿入の8カ月後、ベアステント群では再狭窄がステント内に均一して生じていたのに対し、シロリムス溶出ステント群では、再狭窄がステントの近位端に偏って生じていたのだ。

 具体的な部位別の再狭窄率をみると、ステント内ではシロリムス溶出ステント群が3.2%、ベアステント群が35.4%。ステント内に限れば、再狭窄は約10分の1に抑制される。ところが、ステント近位端よりも5mm中枢側では、再狭窄率に両群間で有意差が無かった(シロリムス溶出ステント5.8%対ベアステント8.1%)。遠位端より5mm末梢側はその中間で、シロリムス溶出ステント群の再狭窄率(2.0%)はベアステント群(7.2%)の4分の1に抑制されていた。

 今回明らかになった“再狭窄の偏在”について、「SIRIUS」試験に携わった板橋中央総合病院循環器内科の森野禎浩氏は、「ステント挿入の際に、中枢側の血管壁が傷害されるために再狭窄の抑制効果が低いのではないか。今後は、現行の薬剤溶出ステントよりも、より長い薬剤溶出ステントを留置したり、PTCAの際に使うバルーンの長さを短くしたりするなど、改善の余地がありそうだ」と話す。

 薬剤溶出ステントは、細胞増殖を抑制する薬剤などでコーティングされた血管形成用のステント。シロリムスのほかパクリタキセル、タクロリムスなど様々な薬剤が用いられているが(関連トピックス参照)、最も開発が先行しているのがシロリムス溶出ステントで、欧州では既にCordis社から「CYPHER」の商品名で発売されている。わが国でも2004年頃に上市される見込みだ。

 なお、「SIRIUS」のTCT2002における発表内容は、インターネット上でスライドと音声が公開されており、こちらからアクセスできる。この発表に関し、発売元のCordis社が発表したプレス・リリースは、こちらまで。(星良孝、日経メディカル

臨床試験名の略称】
 *SIRIUS=a U.S. multicenter,randomized double-blind study of the sirolimus-eluting stent in de novo native coronary lesions
 **RAVEL=Randomized Study with the Sirolimus-Coated Bx Velocity Balloon-Expandable Stent in the Treatment of Patients with de Novo Native Coronary Artery Lesions

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◆ 2002.9.17 解説●新たな時代を迎えた冠動脈インターベンション