2002.09.05

【EASD学会速報】 PPARγの遺伝子多型で運動療法の効果に差、変異型を持つ人でインスリン抵抗性が大きく改善

 金沢大学内分泌代謝内科の河原利夫氏らは、ペルオキシゾーム増殖促進受容体γ(PPARγ)の、変異型の遺伝子を持つ人では、運動療法でインスリン抵抗性が改善されやすいことを確認。9月4日のポスターセッションで報告した。PPARγは、脂質代謝や骨代謝、血管新生など様々な生理反応を制御する核内受容体。変異型の遺伝子を持つ人では、インスリン感受性が高いことなどが知られていたが、運動療法などの「介入」に対する反応性にも差があることがわかったのは初めて。この幸運な体質(遺伝的素因)の持ち主は日本人では20人に一人程度だが、個々人の体質に合わせた「オーダーメード治療」につながる成果として注目されそうだ。

 河原氏らは、21〜69歳の健康な日本人男性123人に対し、3カ月間の運動療法を実施。運動療法の前後で、体重や血圧、脂質・糖代謝などがどう変わったかを調べ、遺伝子型による介入の効果の違いを評価した。

 対象者の平均年齢は45歳で耐糖能は正常、糖尿病だけでなく高脂血症、高血圧にも罹患していない。体格指数(BMI)は平均23.3で、空腹時インスリン量は40.9pmol/l、インスリン抵抗性指数(HOMA)は1.3。運動療法は、最大心拍数の50%の強度の運動を1日20〜60分、週2〜3回行った。

 すると、3カ月後のBMIは変わらなかったものの、体脂肪量は有意に減少。血清レプチン量、空腹時血糖値も低下した。ただし、空腹時インスリン量やHOMAには目立った変化は認められなかった。

 ところが、PPARγの遺伝子多型で対象者を分け、運動療法の効果を比較すると、全体では効果がないかにみえたインスリン抵抗性に、変異型の人では明らかな改善が認められた。運動療法前と比べ、変異型のPPARγ遺伝子を持つ人では、空腹時インスリン量が20.33pmol/l、HOMAが0.61、それぞれ低下していた。

 なお、PPARγの遺伝子型別人数は、野生型(Pro/Pro)が117人、ヘテロ変異型(Pro/Ala)が6人で、ホモ変異型(Ala/Ala)は対象者には含まれていない。変異型の人では、野生型の人よりもBMIが低く、体脂肪量が多く、空腹時インスリン量が多く、HOMAが高い傾向はあったが、統計学的な有意差はなかった。

 以上から河原氏は「介入前の臨床面・代謝面での特性に、遺伝子多型の影響は認められないにも関わらず、介入後の効果には大きな差があった」と考察。変異型のPPARγ遺伝子を持つ人では、運動療法でインスリン抵抗性が改善されやすいと結論付けた。今後、他の糖・脂質代謝関連遺伝子についても同様の検索を進める予定で、「将来的には運動療法など種々の介入の効果に影響する様々な遺伝子の多型を、DNAチップを用いて一度に調べ、個々人に適したオーダーメード治療を提案できるようにしたい」と河原氏は話している。

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