日経メディカルのロゴ画像

2002.09.03

【再掲】【EASD学会速報】 H. ピロリ菌は2型糖尿病にも関与か、非DM感染者で血糖値が高値に

 胃潰瘍や胃癌、動脈硬化性疾患を引き起こすとされるヘリコバクター・ピロリ(H. ピロリ)菌。糖尿病分野でも、「H. ピロリ菌への感染が、慢性炎症状態を介して2型糖尿病の発症を誘発する」との疑いが持たれているが、関連性を否定する報告もあり一定の見解は得られていない。9月2日に行われたポスターセッションでは、オーストリアHentschelhof医療センターのA. Dzien氏らが、糖尿病に罹患していない外来受診者1810人のH. ピロリ菌感染状況と血糖値との関連を解析。「H. ピロリ菌の感染者では空腹時血糖が高い」との研究結果を報告した。

 オーストリアは欧州の中ではH. ピロリ菌の感染率が高く、人口の約20%がH. ピロリ菌陽性だという。そのため、一般住民のH. ピロリ菌に対する関心も高く、スクリーニング検査が頻繁に行われている。Dzien氏らは、胃のむかつきや関節痛、息切れなど様々な症状で受診した、糖尿病に罹患していない外来患者1810人に、H. ピロリ菌のスクリーニング検査(血清抗体検査)を実施。同時に、血圧や血清脂質、空腹時血糖、炎症マーカーのC反応性蛋白(CRP)値などを測定して、H. ピロリ菌感染との相関を調べた。

 その結果、全体の3割でH. ピロリ菌が陽性であることが判明。空腹時血糖は、陰性者で平均99.8mg/dlだったのに対し、陽性者では110.0mg/dlと、有意に高かった。同様に、CRP値もH. ピロリ菌陽性者で0.40mg/lと、陰性者の0.32mg/lより有意に高かった。一方、総コレステロール値、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値や高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値には、感染の有無による差は認められなかった。トリグリセリド値は、陽性者(平均94.0mg/dl)で陰性者(平均131.0mg/dl)より大幅に低く、感染の有無に性別によるばらつきはなかった。

 以上からDzien氏らは、「H. ピロリ菌への感染が、慢性炎症状態を介して糖代謝に悪影響を与えている」と推察。H. ピロリ菌の除菌で、2型糖尿病の発症を予防できる可能性が出てきたと結論付けた。「陽性者に除菌を勧めないのは今や倫理的に問題となるので、除菌群と非除菌群とに割り付ける無作為化試験は不可能」とのことだが、除菌を希望しない人も含めた経過観察を行って、「除菌が2型糖尿病の発症を遅らせ得るかについて何らかの知見を得たい」とDzien氏は話した。

 ただし、統計学的に有意な差ではないものの、H. ピロリ菌陽性者の平均年齢は女性で66.0歳、男性で66.4歳であり、陰性者(女性:64.8歳、男性:62.0歳)よりわずかに高い。同様に、体格指数(BMI)も1〜2程度陽性者で高く、これが糖代謝に影響を及ぼしている可能性もある。Dzien氏らは、こうした点がどの程度空腹時血糖に影響を与え得るかについても、さらに検討を進める予定だ。

■訂正■
 糖尿病に罹患していない外来受診者の対象数は、1810人でした。お詫びして訂正します。