2002.09.02
【投稿】簡単に診断できる事例ではなかったのではないか
「割りばし事件の刑事告訴について」という投稿に対して、多くの方からメールをいただきました。以下は「簡単に診断できる事例ではなかったのではないか」と指摘される意見です。引き続き、皆さんのご意見をうかがえれば幸いです。編集部までメールでお送りください。送付先は、 medwave@nikkeibp.co.jp です。
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割り箸による頭蓋内損傷が刑事事件にまでなりました。いろいろな意見がメールで述べられています。
1.果たして、単純撮影のみで割り箸が硬膜内まで刺さっていることが診断できたでしょうか。恐らく側面撮影の方が良いかもしれませんが、診断医でも割り箸がどのように写るかを正確に言える人は少ないと思います。
私も残念ながら、そのような経験はありません。プラスチックの箸の場合はよく注意すればかろうじて見つけることができるとと思います。実際そのような例もあります。その上でX線CTを撮れば検出可能です。
では、割り箸がCTでどのように描出されるでしょうか。人体の中にある状態での割り箸のCT像(X線写真像)について知っている人がいれば、教えて欲しいと思います。CTを撮る場合でも、厚いスライスでは評価は困難であり、5mm以下の薄いスライスが必要と思います。その上で,出血の存在を手がかりにして診断することになると思います。
MRIを撮れば、割り箸は恐らく低信号として描出されると思いますが、併存する超急性期の出血の診断は困難と考えられます。また、その時点においてCTやMRIを施行することができる状態にあったかどうかも考慮する必要があります。
2.穿孔性の外傷で頭蓋内に到達する経路には、眼窩上壁や咽頭壁などがありますが、本邦の医学教育において、それらの実例が十分に示され、学生及び経験の乏しい医師がそのような実例を熟知しているかどうかは甚だ疑わしい所です。
今回の事件では、割り箸の実際の長さと残った長さとの比較ができなかったようです。もし、体内に割り箸の一部が残っている可能性が示唆さされるならば、今回のような不幸な結末にはならなかったかもしれません。
私がその場に居た訳でもないので勝手なことは言えませんが、患児の状態の観察が十分ではなかったのかもしれないとしても、単に単純撮影を撮ったくらいでは割り箸による頭蓋内損傷を正確に診断できなかったのではないかと言いたい訳です。
もし、割り箸の体内遺残が臨床的に疑われるなら、積極的にCTやMRIを撮る必要があったと言うことでしょうか。いずれにせよ、簡単に診断できる事例ではなかったのではと思います。
鈴木正行
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