2002.08.05

「軽度肥満」も心不全の危険因子、フラミンガム研究で判明

 米国の代表的な心疾患前向きコホート研究であるフラミンガム研究(Framingham Heart Study)に基づく解析で、高度肥満(適正体重を75%以上上回る肥満)ではない程度の肥満でも、心不全発症率が高くなることが明らかになった。女性では太り気味(過体重)のレベルでも心不全の有意な増加が認められたという。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌8月1日号に掲載された。

 高度肥満の人では、体重による重力負荷に加え、肥満による二次的な換気不全や睡眠時無呼吸などのため、心肥大型の心不全(肥大型心筋症)が多いことが知られている。しかし、そこまで至らない程度の肥満が心不全の危険因子になるかについては結論が出ていなかった。

 米国Boston医科大学のSatish Kenchaiah氏らは、フラミンガム研究の参加者5881人のデータを詳細に解析。研究登録時の体格指数(BMI)と、平均14年の追跡期間中の心不全発症との相関を調べた。参加者の平均年齢は55歳で女性が54%。肥満度はBMIが18.5〜24.9を「適正体重」、25.0〜29.9を「過体重」、30.0以上を「肥満」とした。体重と血圧値や血清脂質値、糖尿病の合併率などには相関が認められたため、解析はこれらの要素を補正した上で行った。

 他の類似研究との大きな違いは、心不全の診断を厳密に行っていること。発作性の夜間呼吸不全や頸静脈拡張、胸部X線上の心肥大などを主要クライテリア、両側性の足首の浮腫、夜間の咳、労作時の呼吸困難などを副次クライテリアと定め、主要クライテリアを二つ以上、または主要クライテリア一つと副次クライテリアを二つ以上満たす場合を心不全と診断した。

 追跡期間中に496人が心不全を発症し、累積発症率は年を追うごとに増加したが、心不全の発症率と登録時の肥満度とには男女共に相関があることが判明。適正体重の人と比べ、女性では2.12倍、男性では1.90倍、肥満の人では心不全を発症する比率が高かった。この相関は女性の方が明確で、女性では過体重のレベルでも有意に心不全が多かった。BMIを連続量として扱った解析でも、心不全の発症と有意な相関が認められ、BMIが1増えるごとに男性では5%、女性では7%、心不全が増加した。

 直接心臓に負担を与えるほどではない肥満が、なぜ心不全の発症と相関するのかは現時点では明らかではない。研究グループは、たとえ高度肥満と言えないレベルの肥満でも、糖・脂質代謝や血行動態、左室リモデリング、酸化ストレスなどに影響があり、それが複合的に心不全を引き起こしていると考察。国民の6割が肥満である米国では、心不全の予防という観点でも、適正体重の維持を推進すべきだと強調している。

 この論文のタイトルは、「Obesity and the Risk of Heart Failure」。アブストラクトは、こちらまで。


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