2002.07.27

【日本骨代謝学会速報】 ステロイド性骨粗鬆症の“2002年版診断基準”が中間報告、原疾患・ステロイド用量別の基準提示

 日本骨代謝学会骨粗鬆症診断基準検討委員会が中心となり検討を進めてきた、ステロイド性骨粗鬆症(糖質コルチコイド誘発性骨粗鬆症)の診断基準が、7月27日のワークショップ「ステロイド性骨粗鬆症の診断基準」で中間報告された。2000年度の検討症例に、さらに約400症例を加えた692症例の解析に基づき、原疾患別・ステロイド用量別の「要治療骨量」が提示された。

 ステロイド性骨粗鬆症は、慢性関節リウマチ(RA)などステロイド薬を長期的に服用する患者で生じる2次性骨粗鬆症。骨量の減少は皮質骨よりも海綿骨で著明に起こるため、骨塩量(BMD)としてはさほど減っていない段階から、脊椎の圧迫骨折や肋骨骨折が高頻度に生じる。そのため、骨折予防の観点からも、原発性骨粗鬆症とは別の診断基準が必要とされていた。

 同委員会が今回、解析対象としたステロイド性骨粗鬆症患者692人の、半数近く(319人)はRA患者。次いで全身性エリテマトーデス(SLE)が162人と多い。男女別では女性が627人と圧倒的だ。これらの症例から、骨折を起こした人と起こしていない人とを最も効率よく分離できる、BMDの「カットオフ値」を求めた。

 その結果、全症例でのBMDカットオフ値は、若年成人平均値(YAM)に対する比率(%YAM)で76.8%、国際的に用いられているTスコア(YAMからの乖離を標準偏差=SDで表示)では−1.97SDとなった。本邦の原発性骨粗鬆症の診断基準では、%YAMが70〜80%を「低骨量」、70%未満を「骨粗鬆症」としており、原発性骨粗鬆症に対する基準では「骨粗鬆症」とは診断されない程度の骨量低下でも骨折が起こり得ることが明らかになった。

 このカットオフ値は、原疾患がRAかそれ以外かで大きな違いが認められた。原疾患がRAの場合の%YAMのカットオフ値は73.6%(Tスコア:−2.24SD)で、RA以外の疾患の場合は81.1%(Tスコア:−1.60SD)となった。また、ステロイドに対する用量依存性も認められ、1日量がプレドニゾン換算で7.5mg以上の人では、骨折を起こす%YAMのカットオフ値が80.3%(Tスコア:−1.67SD)と、全症例(カットオフ値76.8%)よりも骨量が減っていない段階から骨折が起こり始めることがわかったという。

 ただし、症例の半数近くを占めるRA患者では、重症化すると痛みのために動けなくなり、かえって転倒などの機会が減って骨折が少なくなるとの“パラドックス”がある。症例数として2番目に多いSLEでは、患者の年齢が他の疾患より比較的若く、それが結果に影響している可能性もある。検討結果を報告した近畿大学附属奈良病院整形外科・リウマチ科の宗圓聰氏は「こうした日常生活動作(ADL)別の解析や、年齢による補正も今後行いたい」と話した。

 発表後の質疑応答では、「閉経状況や投与期間別の解析ではどうなるか」との質問が出され、宗圓氏は「2000年度までの約300症例については閉経状況や投与期間を調べていない。今回追加した約400症例について、今後わかる範囲で調べたい」と回答した。パルス療法や吸入ステロイドなどステロイドの投与方法による違いや、原疾患の活動性の影響を考慮すべきとの意見も出された。また、SLEについては発症メカニズムの異なる「ステロイド誘発性大腿骨頭壊死症」も問題となっており、SLEをガイドライン上は別格として扱って欲しいとの要請もあった。

 同検討委員会では今後、これらの意見や要請も加味した上で、最終的にどのような形で発表するかについてさらに検討を行う。東京都老人医学研究所の折茂肇氏は「これ以上データを積み重ねるよりも、治療ガイドラインと結び付く方向で、できるだけ早く何らかの勧告を出すべき」との方向性を示した。

 なお、海外のステロイド性骨粗鬆症予防・治療ガイドラインと比較すると、今回報告されたカットオフ値はかなり“緩い基準”となる。海外のガイドラインで提示されているBMDのTスコアは、米国リウマチ学会(ACR)ガイドラインでは−1.0SD、英国コンセンサスガイドラインでは−1.5SD。今回の検討結果に基づく勧告を出すに当たっては、こうした海外ガイドラインとの“乖離”に対する説明も必要となるだろう。

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