2002.07.17

無作為化試験は報道価値が低い?、英国新聞2紙の分析で判明

 新聞は、たとえ強いエビデンスがあっても、無作為化試験による報告は過小評価し、逆に読者にすぐに役立つような観察研究からの結果を強調する傾向のあることが、英国の大手新聞2紙を分析した研究で明らかになった。研究グループは「医学研究の多くの観点が新聞には十分に反映されていない」と、メディア報道のあり方について疑問を投げかけている。研究結果は、British Medical Journal(BMJ)誌7月13日号に掲載された。

 英国の二大臨床医学雑誌、BMJ誌とLancet誌は、どちらも一部の論文内容を記載したプレス・リリースを毎週発行している。新聞はこの発表内容を参考に「報道価値」のある論文を選び、雑誌発刊日の前日か当日の紙面で紹介する。

 英国Bristol大学のChristopher Bartlett氏らは、「報道価値のある論文」の特徴をつかむため、どのような種類の医学論文が新聞報道されたを検討。1999年から2000年にかけて、Lancet誌とBMJ誌に掲載された原著論文1193報について、医学雑誌の編集者が記者発表した論文と、一般紙であるTimes紙やタブロイド紙のSun紙で紹介された論文とを評価した。

 1193報の論文のうち、コホート追跡研究や症例対照研究などの観察研究は444報、無作為化試験は295報で、残りはメタ分析や基礎研究などだった。うち517報(43%)がプレス・リリースで紹介されたが、紹介率は観察研究で49%、無作為化試験で45%とほぼ同じ割合だった。

 この期間に新聞2紙が報道した研究数は81。すべて、プレス・リリースで紹介された研究だった。しかし研究の種類別では、観察研究に関する記事が47本(発表論文に占める割合:11%)、無作為化研究が5本(同:2%)で、“報道率”には5倍以上の差があった。

 また、研究分野別にみた採択率にも、プレス・リリースと新聞報道とでは違いがあった。女性の健康や生殖、癌に関する研究は、プレス・リリースでも取り上げられやすく、新聞報道もなされやすい。しかし、メンタルヘルスや小児、高齢者に関する研究は、プレス・リリースにはよく取り上げられたが、新聞報道がなされる割合は極めて低いことが明らかになった。

 これらのことからBartlett氏らは、「新聞は無作為化試験によるエビデンスの重要性を説明したり、無作為化にまつわる誤解や混乱を払拭するなど、ヘルスケア分野において一定の役割を担っている」にもかかわらず、「医学雑誌の編集と新聞での報道では、論文選択の方向性がかならずしも同じではない」と批判した。

 これに対し、Times紙は即座に反論を掲載した。7月12日付の紙面に掲載された反論で、同紙は「観察研究には新しい事実が多い」が、「無作為化試験の結果は遅く」、「内容が重要であっても、新しくはない」と主張した。また、そもそも医学的な「エビデンスの価値とニュースの価値は違」い、「新聞は医療者が何を重要と考えているかを伝えるコンベアベルトではない」と強い姿勢を示している。

 この論文のタイトルは「What is newsworthy? Longitudinal study of the reporting of medical research in two British newspapers」。現在、全文をこちらhttp://bmj.com/cgi/content/full/325/7355/81で閲覧できる。Times紙に掲載された反論「When medics and the media fall out」は、こちらまで。(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承ください)。(八倉巻尚子、医療ライター)

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