2002.07.12

乳幼児期の抗菌薬服用とアレルギー性疾患の発症に関連なし、前向き追跡研究で判明

 乳幼児期に抗菌薬を服用しても、喘息などアレルギー性疾患への罹患率は、抗菌薬を飲まなかった子供と変わらないことがわかった。これまでの“通説”を否定するもの。米国で行われた前向き追跡コホート研究の結果で、American Journal of Respiratory and Critical Care誌7月1日号に掲載された。

 近年、小児の気道感染症に対し、抗菌薬が処方されるケースが増えている。それに呼応するように、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患が増加。「抗菌薬処方とアレルギー性疾患発症との間に、何らかの関連があるのでは」との指摘がなされていた。

 実際、複数の後ろ向き観察研究や症例対照研究で、アレルギー性疾患に罹患した子供では、乳幼児期に抗菌薬を服用したケースが多いことが報告。感染症を薬で抑えてしまうことで、かえって免疫系の成熟が遅れ、アレルギー性疾患の発症につながるとの機序が提唱されていた。

 米国Harvard医科大学附属Brigham and Women's病院のJuan C. Celedon氏らは、抗菌薬処方とアレルギー性疾患発症との関連を調べるため、同時期に生まれた子供448人をコホートとする前向き追跡研究を実施。生後1年までの抗菌薬服用の有無で、5歳の時点でのアレルギー性疾患の罹患率が変わるかを調べた。

 1歳までに経口抗菌薬を服用したのは、全体の6割強だった。また、全体のおよそ2割の子供が、5歳までにアレルギー性疾患(喘息、アレルギー性鼻炎または皮膚炎)を発症した。

 しかし、1歳までに抗菌薬を飲まなかった子供(全体の36.8%)と比べ、1回抗菌薬を飲んだ子供(13.2%)のアレルギー性疾患発症のオッズ比は0.7(95%信頼区間:0.4〜1.4)。2回以上抗菌薬を飲んだ子供(50.0%)では0.9(同:0.5〜1.4)で、いずれも相関が認められなかった。2歳時の免疫グロブリンE(IgE)値と抗菌薬の服用状況との間にも相関はなかった。

 研究グループは、以前に報告された後ろ向き観察研究で相関が認められたのは、いわゆる想起(recall)バイアスがかかっていたためではないかと推察する。アレルギー性疾患にかかっている子供の親の方が、病気に関連がありそうな事象(この例では抗菌薬の服用)を後から尋ねられた時、「そういえば何か薬を飲ませたけれど、あれが抗菌薬だったに違いない」と“思い出しやすい”。後ろ向き研究にはつきもののバイアスの一つだ。

 もう一つの可能性として研究グループが示唆するのは、因果関係の取り違え。本当は「喘息に罹患していると抗菌薬服用が増える」のに、誤って「抗菌薬を服用すると喘息に罹患する」と解釈したとの図式だ。いずれにせよ、「我々の研究結果は、“乳幼児期の抗菌薬服用がアレルギー性疾患の発症につながる”との仮説を支持しない」と研究グループはまとめている。

 この論文のタイトルは、「Lack of Association between Antibiotic Use in the First Year of Life and Asthma, Allergic Rhinitis, or Eczema at Age 5 Years」。アブストラクトは、こちらまで。

■ 参考トピックス ■
◆ 2002.5.8 乳児期の流行性感染症への罹患、アトピー発症を抑制せず

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