2002.07.09

HCV感染を高感度で検出、ALTの新基準値が提案

 肝障害を反映する検査値、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の基準値を約10U/l引き下げると、C型肝炎ウイルス(HCV)感染の検出感度を約20%向上できることがわかった。イタリアで行われた研究結果で、Annals of Internal Medicine誌7月2日号に掲載された。

 ALTは、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)とも呼ばれる、肝臓逸脱酵素の一つ。同じ肝臓逸脱酵素のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ=GOTとも呼ばれる)と併せ、肝炎や肝硬変など肝障害の診断に用いられる検査値だ。基準値には施設・検査機関による差があるが、わが国では男女とも40U/l前後を基準値とするケースが多い。

 こうした基準値の多くは、例えば人間ドックの受診者など、普通の生活を送っている“健常人”の検査値から決められている。しかし、初期の慢性肝炎などでは本人に病識がないことも少なくなく、そうした肝炎患者が対象にある程度含まれていると、結果として基準値そのものが高めに出てしまう恐れがあった。

 そこで、イタリアMilano大学のDaniele Prati氏らは、同大学の輸血部に献血に訪れた約7000人の血液を分析。うちHCVに感染していない約6800人から、ALTの新基準値を算出し、HCVに感染していた約200人について新旧の基準値による感染検出感度を比較した。

 同大学で従来用いていたALTの基準値は、男性が40U/l、女性が30U/lというもの。ところが、HCV陰性で、脂肪肝を疑わせる他の検査値異常もない人のデータだけを用いると、ALTの新たな基準値は男性30U/l、女性19U/lと従来よりも約10U/lずつ低くなった。

 HCV感染者のうち、旧基準値による感染検出の感度は55%で、半数近くを見落としてしまう。ところが新基準値では、感度が76.3%と、感染者の4人に3人はALTでスクリーニングできることが明らかになった。特異度も、旧基準値(97.4%)より低いものの、新基準値を採用しても88.5%と、「十分許容できる範囲であることがわかった」(Prati氏ら)という。

 わが国にはHCVの持続感染者が100〜200万人いるとされ、しかも多くは自分が感染していることを知らない。そのため、治療を受けないまま、肝硬変や肝臓癌を発症するケースが少なくない。厚生労働省は今年度から、老人保健事業としてC型肝炎検診を開始したが(関連トピックス参照)、一般に検診受診率は“病識”あるいは“病気への不安”がない場合は低く留まるのが普通だ。

 基準値の引き下げによる検査感度の向上は、特異度の低下と「トレード・オフ」の関係にあり、常に“過剰診断”の危険がつきまとう。しかし、確定診断が可能かつ治療手段がほぼ確立された疾患で、特異度が90%近いスクリーニングならば、Prati氏らの指摘通り、十分許容範囲なのではないだろうか。日本人集団を対象に同様の検討を加え、ALTの基準値を見直す方向で検討が進むことに期待したい。

 この論文のタイトルは、「Updated Definitions of Healthy Ranges for Serum Alanine Aminotransferase Levels」。アブストラクトは、こちらまで。わが国のHCV感染の現状については、昨年3月に発表された「肝炎対策に関する有識者会議」の報告書まで。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.2.25 B型、C型肝炎ウイルス検査を老人保健事業で実施、肝硬変や肝癌の発生予防目指す

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