2002.07.04

糖尿病性網膜症、「明るい部屋での就寝」が有力な予防策に

 2型糖尿病患者では、健常者と比べて、「桿体」(ロッド)と呼ばれる網膜細胞の機能が低下していることが明らかになった。桿体は光を感じる感覚細胞で、暗いところでは桿体の酸素消費量が増え、それが糖尿病性網膜症の引き金となっている可能性があるという。就寝中でも部屋を明るくすれば、桿体の活動をある程度抑えられ、「糖尿病性網膜症の予防に役立つ可能性がある」と研究グループは推察している。研究結果は、Lancet誌6月29日号に掲載された。

 糖尿病性網膜症は、糖尿病の3大合併症の一つ。成人の失明原因として最も多い疾患で、進行すると網膜剥離や硝子体出血を引き起こす。疾患のベースには網膜の酸素不足があるが、なぜ糖尿病患者の網膜で頻繁に酸素不足が起こるかは明らかではなかった。

 網膜には、光を感じる桿体と、色を感じる錐体(コーン)の、2種類の感覚細胞がある。英国Cardiff大学眼科・視覚科学部門のN. Drasdo氏らは、先天的に桿体を欠いている人では、たとえ糖尿病になっても網膜症は発症しないとの報告がある点に着目。周囲が暗くなった時に目の感度を上げる「暗順応」の際、桿体が大量の酸素を消費することが、糖尿病性網膜症の引き金になるのではと考えた。

 そこでDresdo氏らは、網膜症を起こしていない2型糖尿病患者7人と健常者8人に協力してもらい、振動電位を測定して桿体の機能を評価した。糖尿病患者の平均年齢は57.7歳で、平均罹病期間は6.6年。7人中一人を除き、食事療法と経口糖尿病薬で血糖コントロールを行っており、長期的な血糖値を反映するヘモグロビンA1c(HbA1c)は平均7.9%。健常者の平均年齢は57.7歳だった。

 眼底検査では、患者の網膜には新生血管の増生は認められず、健常者と変わらない。しかし、その段階でも桿体の機能は、健常者と比べて大きく低下していた。酸素を補充すると、患者の桿体機能はやや改善したが、健常者のレベルには至らなかった。健常者では、酸素補充下でも桿体機能は変わらなかった。

 このデータが示すのは、眼底検査で異常が認められない段階でも、既に桿体の機能低下が始まっており、酸素不足の影響も認められるということ。目を閉じた状態でも、部屋が明るければ暗順応はある程度抑えられる。研究グループは「明るい部屋で就寝して、桿体による酸素消費を抑える」ことで、2型糖尿病患者の網膜症発症を予防できる可能性があると強調している。興味深い指摘だけに、介入研究の実施を期待したい。

 この論文のタイトルは、「Effect of darkness on inner retinal hypoxia in diabetes」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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