2002.06.29

【ISH速報】 チェルノブイリ原発事故による放射能高汚染地域で高血圧が多発

 チェルノブイリ原子力発電所の放射能漏れ事故で、高濃度の放射能汚染を受けた地域の住民では、高血圧の罹患率・新規発症率が共に高いことが明らかになった。ベラルーシVitebsk州立医科大学内科疾患部門助手のAndrei Stchastlivenko氏らが、6月27日のポスターセッションで報告した。

 旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所で放射能漏れ事故が起こったのは1986年のこと。この事故で、237人が急性放射線障害を受け、うち28人が死亡した。その後、高濃度の放射能に汚染された地域では、特に小児の間に甲状腺癌などが多発した。

 ベラルーシはチェルノブイリのすぐ西にあり、事故後に国土の多くが放射能汚染を受けた。放射能汚染度(放射線量で評価)そのものは現在、事故直後の50〜500分の1以下に低下しているが、住民の間に健康不安は続いているという。

 Vitebsk州立医科大学では、こうした健康不安を受け、国民を対象とした定期的な健康調査を開始した。Stchastlivenko氏らは、1991〜1992年に成人(18〜64歳)を対象に実施した健康調査で血圧が正常だった人を、高濃度汚染地域と放射能汚染をほとんど受けなかった地域の住民とから抽出。5年後の1996〜1997年調査でそれらの住民の血圧がどう変わったかを比較した。

 当初の調査で正常血圧だった住民の年齢分布に地域差はない。しかし、5年後に高血圧を発症していた人の割合は、ほとんど汚染がない地域住民で33.3%、高濃度汚染地域の住民で49.1%と、大きな違いがあった。より高齢で肥満、運動習慣がなく、アルコール依存がある人で高血圧を新たに発症するケースが多かったが、こうした人の割合は両地域で違いはなかった。両地域で認められた唯一の違いは、高濃度の放射能汚染を受けたかどうかだった。なお、喫煙の有無や総コレステロール、不安の強さは高血圧の発症と相関は認められなかった。

 そこでStchastlivenko氏らは、放射能汚染度が異なる5地域から新たに1526人を選び、2001年に血圧や血清脂質、生活習慣などを調べて地域の放射能汚染度別に比較した。すると、最も放射能汚染を受けなかった地域の住民と比べ、放射能汚染が最も多かった地域と、2番目に多かった地域の住民では、高血圧患者が明らかに多いことがわかった。

 放射能汚染度で下から3番目までの地域では、高血圧患者の割合は45〜50%。ところが、放射能汚染度が上から2番目までの地域では、高血圧患者の割合が62〜64%となった。年齢分布や肥満者比率、喫煙率に地域差はなかったが、血清脂質に異常がある人の割合は放射能汚染度が高い地域ほど多くなった。

 Stchastlivenko氏は「今回得られたデータが示すのは、高濃度の放射能汚染が起こった地域で、新たに高血圧を発症する人が多く、高血圧の罹患率そのものも高いということ。脂質代謝異常が高血圧の発症に先行して起こる可能性も示唆されている」と分析。「恐らくは健康不安を含む将来への不安がストレスとなり、脂質代謝異常を引き起こしているのだろうが、継続的に放射線を浴びたことによる影響も考えられる」と話し、今後も継続的に追跡調査を行っていきたいと述べた。

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