2002.06.26

【ISH速報】 欧州の新リスク層別化チャート「SCORE」、CAD死亡率ベースでリスク評価にT-chol/HDL比を採用

 欧州高血圧学会(ESH)と欧州心臓学会(ESC)が共同で策定を進めてきた、心疾患リスクの新評価システム「SCORE」の全貌が、ついに明らかになった。6月25日のプレナリー(必須)セッション「ESH Plenary Session」では、SCOREプロジェクト委員長のI. Graham氏らが、新しいリスク層別化チャートの概要と意義について解説を行った。

 欧州の循環器専門医による「European Task Force」が、今後10年間に冠動脈疾患を発症するリスクを簡便に判定できる「Task Force Risk Chart」を発表したのは1991年のこと。男女・年齢層別に、収縮期血圧値と総コレステロール値、喫煙の有無により、冠動脈疾患の発症リスクを5段階で判定するものだった。

 このチャートは、例えば「高リスク者(10年予測発症率が20%以上)には一段厳しい管理目標を設定する」など、疾患管理ガイドラインともリンクする形で普及したが、当初からいくつかの問題点が指摘されていた。「リスク評価は(冠動脈疾患の発症率が高い米国の)フラミンガム研究のデータに基づいていたため、地中海沿岸部など冠動脈疾患の発症率が低い地域では、リスクが過大評価されるとの問題があった。高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールなど、他の重要な予測因子を組み入れることも難しかった」とGraham氏は述べる。

 そこで、欧州各国で行われたコホート研究データをプールし、「欧州の実情に合う」新しいリスク評価チャートを作成する「SCOREプロジェクト」がスタートした。参加国はベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ロシア、スコットランド(英国とは別にカウント)、スペイン、スウェーデンと英国の12カ国。総計21万6527人分のデータに基づき、新チャートが編み出された。

リスク評価はCHDではなくCVD、死亡率を基準に採用

 新チャート「SCORE」は、様々な点で旧チャートとは異なっている。まず、リスクの評価対象として、冠動脈疾患(CHD)ではなく心血管疾患(CVD)を採用している。これは、CVDに占めるCHDの比率は欧州各国でばらつきが大きく、CHDのリスクのみを評価すると、CHDリスクが低い地域では他のCVDの予防機会を奪う恐れがあるためだという。

 従来の10年予測発症率ではなく、10年予測死亡率に基づいて、リスクの層別化を行ったことも大きな相違点。この点について、「(定義などによりばらつきが生じる)ソフトなエンドポイントではなく、ハードな(客観的な)エンドポイントとして、発生率より死亡率の方が適切」とGraham氏は説明した。
 
 男女別、喫煙の有無別に、各年齢層でのチャートを表示するとの形式は旧チャートと同じだが、年齢区分には違いがある。旧チャートでは30、40、50、60、70歳という10歳刻みの5区分だったが、新チャートではこれが40、50、55、60、65歳となっており、中高年での年齢別リスクをより細かく評価できる形となった。

 チャートの内容は、縦軸に収縮期血圧値、横軸に総コレステロール値(T-chol)を取り、クロスする部分でのリスクを表示するというもの。形式そのものは旧チャートと同じだが、新チャートではリスク値(%)を数字で示し、より具体的なリスクがわかるようにした。

地域のCVDリスク別に2種類のチャートを作成、動脈硬化指数も予測因子に

 さらに、今回から、CVDリスクが高い地域用とCVDリスクが低い地域用として、それぞれ別個のチャートを作成した。収縮期血圧が140mmHg、総コレステロール値が5mmol/lの、55歳の喫煙男性を例に取ると、CVDリスクが高い地域の人なら、10年以内に心血管疾患で死亡する確率は6%と算出される。逆にCVDリスクが低い地域の人なら、心血管疾患の10年予測死亡率は3%と半分になる。

 また、今回新たに、“動脈硬化指数”とも呼ばれる「T-chol/HDL比」がリスク予測因子として採用。従来の「収縮期血圧×T-chol」のチャートに、「収縮期血圧×T-chol/HDL」のチャートが加わった。この2枚を1セットとし、CVD高リスク地域用、CVD低リスク地域用の2セット4枚が、今後は欧州の標準的なリスク層別化チャートとして用いられることとなる。

 「SCORE」チャートは現在、プロジェクトの各委員が最終的な校正を行っている段階。ESCの学術集会開催に合わせ、ESCの学術誌である「European Heart Journal」誌9月号に掲載される予定だ。

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