2002.06.11

抗菌薬による下痢症の予防、やはり生菌製剤に効果あり

 乳酸菌製剤などの生菌製剤(プロバイオティクス)が、抗菌薬服用による下痢症の予防に有効であることが、九つの無作為化二重盲検試験のメタ分析で確認された。わが国では下痢症の予防効果を期待して、抗菌薬に乳酸菌製剤を同時処方する医師が多いが、意外なことに生菌製剤の下痢症予防効果がメタ分析で示されたのは初めて。分析結果は、British Medical Journal(BMJ)誌6月8日号に掲載された。

 抗菌薬を服用すると、消化管内の細菌叢バランスが崩れ、5〜30%の人には下痢症が生じるとされる。ここにクロストリディウム菌が二次感染すると、劇症の偽膜性大腸炎に至ることもあり、特に高齢者では深刻な問題になっていた。

 いったんクロストリディウム感染が起こると、この菌に感受性のあるメトロニダゾールや塩酸バンコマイシンなどを使わないと治療できない。そのため、「安価で副反応が少ない生菌製剤で抗菌薬下痢症を予防する」との戦略が欧米で見直され始めていたが、これまでに報告された臨床試験は症例数が少ないものが多く、抗菌薬下痢症の予防効果に関しては明確な結論が出ていなかった。

 英国Imperial大学医学部高齢者ケア部門のAloysius L. D'Souza氏らは、1966年〜2000年の間に発表された関連論文について、代表的な医学論文データベースであるメドラインやコクラン・ライブラリーを検索。抗菌薬を服用している患者に、生菌製剤またはプラセボを無作為に投与して、下痢症の予防効果を比較した二重盲検試験9報を抽出した。このうち4報は酵母、5報は非酵母(乳酸菌や腸球菌)を使ったもので、2報は乳幼児を対象としている。

 次に研究グループは、下痢症を「平時の腸の状態とは異なり、少なくとも2日間は1日2回以上、下痢気味あるいは水様性の便が出る状態」と定義し、臨床試験のデータを評価し直した。すると、酵母を使った1本の論文を除いては、実薬側で下痢症の予防効果が高い傾向があった。そこでD'Souza氏らは、用いた生菌製剤別に対象患者をプールしてメタ分析を行い、下痢症予防効果に対するオッズ比を求めた。その結果、オッズ比は酵母試験で0.39、非酵母試験では0.34、9報全部では0.37となり、生菌製剤に抗菌薬下痢症の予防効果があることが示されたという。

 ただし、「分析した試験数が少ない上、使われている抗菌薬も試験により異なり、下痢症を引き起こすリスクやそれに対する生菌製剤の反応も違う」(研究グループ)など、今後検討すべき課題も残されている。また、酵母や乳酸菌は「カプセルや乳酸菌飲料などが市販されているが、こうした市販の生菌製剤に、下痢症への効果があるかは今のところ不明」と研究グループは注意を促している。

 この論文のタイトルは、「Probiotics in prevention of antibiotic associated diarrhoea: meta-analysis」。現在、全文をこちらhttp://bmj.com/cgi/content/full/324/7350/1361で閲覧できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承ください)。(八倉巻尚子、医療ライター)

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