2002.05.20

【日本糖尿病学会速報】 糖尿病の根治療法へ、膵再生医療研究の最前線を報告

 再生医療では、臓器再生の材料となる細胞の由来(本人か他人か)と再生場所(体内か体外か)により様々な方法が考えられる。5月18日のシンポジウム8「膵β細胞への分化誘導、あるいは膵β細胞の増殖による膵再生医療へのアプローチ」では、5演題中4演題が、患者の残存する膵島細胞か、臓器や組織内にごくわずかに存在し臓器を再生させる能力を持つ「体性幹細胞」の利用を意識した分化制御因子の研究成果と可能性に言及した。

 特に、徳島大学ゲノム機能研究センターの山岡孝氏は、患者膵臓内にわずかに残ったβ細胞に増殖因子を与えることで増殖させる具体的戦略を提示した。

 山岡氏は、従来は増殖しないとされてきたβ細胞が、1日に全体の1〜4%、40日前後の周期で徐々に増殖させ入れ替えされるという最近の知見を紹介した。そして、β細胞が通常の10〜20倍に増加するcdk4トランスジェニックマウスの例を示し、人間でも残るβ細胞を患者体内で再び増やせる可能性を示唆した。

 このマウスはインスリノーマも低血糖も発生しないことから、人間で同様のことを行った場合も、癌化やインスリン過剰による低血糖などの危険性は少ないだろうとした。

 また、防衛医科大学第三内科の尾形毅樹氏らは、ビンカアルカロイドである分子量794のconophylineがラット胎児膵臓培養細胞でβ細胞の分化を誘導し、さらに実際の膵臓同様の組織構造を作らせることを確認したと報告した。そのような分化因子を薬として用いることで、膵臓内の体性幹細胞をβ細胞に分化・増殖させる可能性を示した。

 この1、2年で、各臓器・組織の体性幹細胞も分化因子などの条件次第で、発生学的に近い別の臓器・組織の細胞に分化できることが報告されている。座長らは膵臓は肝、胆、十二指腸と発生学的に類縁であるため、これらの幹細胞や膵臓の大半を占める繊毛細胞を材料とする膵再生医療の可能性も示唆した。

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