2002.05.14

ACS患者の予後、インフルエンザワクチン接種で改善−FLUVACS研究より

 冠動脈疾患の急性期に、予防的にインフルエンザワクチンを接種すると、心疾患死や心イベントの発生率を引き下げ得ることがわかった。急性冠症候群(ACS)患者など約300人を対象に、インフルエンザ流行期に行われた無作為化試験の結果で、特に心疾患死亡率はワクチン接種群で非接種群の4分の1になったという。研究結果は、Circulation誌5月7日号に掲載された。

 この研究「FLUVACS」(The Flu Vaccination Acute Coronary Syndromes Study)を行ったのは、アルゼンチンFavaloro財団のEnrique P. Gurfinkel氏ら。Gurfinkel氏らは、インフルエンザの流行期にACSなどの虚血性心疾患患者が増えるとの報告や、サイトメガロウイルスなどのウイルス感染と動脈硬化性疾患の進展との関連を示唆する報告がある点に着目。世界保健機関(WHO)が南半球でのインフルエンザワクチン接種を推奨していた、2001年の冬季(5月〜9月)に、ACS患者などを対象とした臨床試験を実施した。

 試験の対象は、ACSで発作後72時間以内に入院した患者200人と、待機的にPCIを受けた安定狭心症患者101人。いずれも、通常の治療を受けた後に無作為に2分し、一方のみにインフルエンザワクチンを接種した。その後、6カ月追跡して、心疾患死や心イベントの発生率などに違いが出るかどうかを比較した。

 6カ月後の心疾患による死亡率は、ワクチン接種群が2%。一方の非接種群は8%となり、相対リスクは0.25(95%信頼区間:0.07〜0.86、p=0.01)と、ワクチン接種で死亡率を大幅に引き下げられる可能性があることがわかった。死亡と再梗塞、虚血による入院を併せた複合予後も、到達率が接種群で11%、非接種群で23%となり、接種群でほぼ半減することが明らかになった(p=0.009)。

 患者の原疾患別では、ACSと待機的PCIのいずれも、ワクチン接種で予後の改善傾向がみられたが、PCIでは統計学的に有意な差とはならなかった。なお、対象患者の平均年齢は両グループとも65歳前後で、およそ7割が男性だが、ACS患者では喫煙率や高血圧合併率がワクチン接種群でやや高く、PCI患者では逆にやや低くなっている。試験期間中のインフルエンザ罹患率については論文に記載されていないが、インフルエンザによる死亡は1例もなかったという。

 この結果について、研究グループは「ワクチン接種がインフルエンザウイルスへの感染・増悪を防いだ」ことで予後が改善したというより、むしろ「ワクチン接種が免疫反応を非特異的に高めた」効果が大きいと考察している。すぐにでも応用可能な、臨床的なインパクトの大きな知見だけに、今回のデータは世界中で注目を集めそうだ。

 この論文のタイトルは、「Influenza Vaccine Pilot Study in Acute Coronary Syndromes and Planned Percutaneous Coronary Interventions」。アブストラクトは、こちらまで。

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