2002.05.10

【日本輸血学会速報】 富山医科薬科大病院、全国で初めて「輸血によるC型肝炎感染者の掘り起こし」実施

 富山医科薬科大学附属病院輸血部の多葉田祥代氏、樋口清博氏らは、同大で手術時などに輸血を受けた患者などを対象に、C型肝炎ウイルス(HCV)検査の呼びかけを実施。対象者の拾い出しに5人でのべ1500時間以上と多大な手間を要したものの、治療が必要な患者を新たに6人掘り起こすことができたことを、5月9日のポスターセッションで報告した。

 わが国で輸血用の血液に対する抗HCV抗体検査が始まったのは1989年11月で、それ以前の輸血や非加熱製剤の投与歴がある患者では、本人が知らないうちにHCVに感染している可能性がある。このうち非加熱製剤の投与を受けた患者に対しては、厚生労働省がヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染していないかを検査するよう医療機関に義務付けている。だが、「輸血歴がある患者に連絡を取り、HCVの検査を受けるよう病院が呼びかけたケースは、当院がおそらく初めて」(樋口氏)だという。

 今回、検査を呼びかけた対象患者は、開院(1979年10月)から輸血用血液の抗HCV抗体検査の開始(1989年11月)までに同院を受診し、手術時や手術後に輸血を受けたり、それ以前に輸血の既往があることがわかっている患者。しかし、当時の輸血伝票や輸血台帳などは既に廃棄されて病院には残っていない。そこで多葉田氏らは、開院時からのデータが残っていた麻酔記録2万1500件を調べ、輸血部が中心となって対象患者リストを作成した。この作業には3人でのべ440時間、約5カ月を要した。

 次に多葉田氏らは、抽出した患者データに誤りがないかを麻酔記録とつきあわせて再確認し(225時間)、病院端末で住所を調べ(357時間)、生存確認を行った(180時間)。重複患者を削除した後、診療科別のリストを作成して各診療科に追加や死亡患者の削除を依頼。最終的な対象患者はこの段階で3266人となった。

 住所のわかった3231人には、HCVの検査を呼びかける手紙を送付。うち438人は宛先不明で返送されたが、2793人に連絡が付き、これまでに431人が抗HCV抗体検査のために来院した。うち二人は既に検査済みで、残りの429人中52人(12.1%)で抗HCV抗体検査が陽性となった。

 同院の肝臓内科を受診したのは、抗HCV抗体陽性者52人中20人。そこでHCVのRNA検査を実施したところ、8人が定量検査で陽性となり、既に慢性肝炎と診断されていた患者を除き、6人(慢性肝炎5人、肝硬変1人)を今回新たに掘り起こすことができた。

 富山医科薬科大学附属病院の病床数は612床で、手術数は週30件程度と、国立大学病院としては標準的な規模。掘り起こしにかかったのべ作業時間は、手紙の発送などの事務作業や検査時間などを併せて1519時間と多大なものとなった。しかし、「手術が10年以上前のこととなると、患者さん自身が輸血したかどうかの記憶が定かでないケースも少なくない。こうしたHCV感染の“ハイリスクグループ”に対する受診呼びかけは、社会的な責任という意味でも、病院が率先して行うべき」と樋口氏は話している。

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