2002.04.30

【日本消化器病学会速報】 ピロリ菌の再除菌戦略、「全例PAM除菌」が「感受性試験後除菌」に匹敵

 ヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ菌)の除菌治療に失敗した患者に再除菌を行う場合、薬剤感受性試験は必ずしも行わなくてもいいことがわかった。「菌のクラリスロマイシン(CAM)などに対する感受性を調べ、感受性に応じた薬剤選択を行う」との戦略と、「感受性試験を行わず、全員に抗菌薬のメトロニダゾール(MNZ)を用いる3剤併用療法を行う」という戦略とでは、除菌率に有意差がみられなかったためだ。

 CAM耐性のH. ピロリ菌の増加を受け、効率の良い再除菌戦略が模索される中、今回得られた知見は大きな注目を集めそうだ。研究結果は、4月26日の一般口演で順天堂大学消化器内科講師の三輪洋人氏らが発表した。

 H.ピロリ菌陽性の胃・十二指腸潰瘍患者に対しては、潰瘍の再発抑制を目的に、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、アモキシシリン(AMPC)、CAMの3剤併用療法(PAC療法)による除菌が保険適用されている。しかし、除菌に失敗した場合、保険の範囲内では同じ3剤を繰り返し投与するしかない(関連トピックス参照)。

 臨床現場ではここ数年、CAMに耐性を持つH.ピロリ菌の増加が問題となっている。初回の除菌に失敗した人ではCAM耐性菌の比率が高く、CAMを含むPAC療法による再除菌率は決して高くない。一方、CAMの代わりにMNZを用いる「PAM療法」は、除菌の不成功例の再除菌に有効であることが報告されており、新たな再除菌法として期待されている。再治療に先立ってCAMなどに対する薬剤感受性試験を行い、CAM耐性例に絞ってPAM療法などを実施すれば、除菌率をさらに高められる可能性もある。

 そこで三輪氏らは、薬剤感受性試験に基づいた除菌で、一律にPAM療法を行うよりも除菌率が向上するかどうかを、初回の除菌に失敗した消化性潰瘍患者を対象とした無作為化比較試験で検討した。対象患者数は79人で、試験へのエントリー後に菌が陰性化した4人と、追跡ができなかった二人を除き、36人を薬剤感受性試験に応じた除菌戦略を選ぶ「試験施行群」、37人を試験を施行せず全員にPAM療法を行う「非施行群」に割り付けた。年齢、性別、尿素呼気試験値、初回除菌期間、原疾患の種類など患者背景に2群間で有意差は無かった。

 再除菌の方法は、試験施行群ではCAM感受性の10人には10日間のPAC療法、CAMに耐性、MNZに感受性の22人には10日間のPAM療法を行い、CAMとMNZの両者に耐性があった4人にはPPIとAMPCの2剤併用療法を14日間実施した。一方、非施行群に対しては、全例に10日間のPAM療法を行った。PPIとしては両群ともランソプラゾールを用いた。

 再治療後に,尿素呼気試験で再除菌率を評価したところ、中断者も含めたintent-to treat(ITT)解析では、試験施行群の再除菌率は80.6%。非施行群では91.6%となり、両群間に有意差はなく、むしろ薬剤感受性試験を施行しなかった群の方が治療成績が良い傾向があった。

 三輪氏は、「コストの面から考えても、今後は薬剤感受性試験を行わず、全例にメトロニダゾールを用いたPAM療法で再除菌を行うことが推奨されるのではないか」と話している。(星良孝、日経メディカル

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.4.27 日本消化器病学会速報】ピロリ菌の除菌療法、CAM耐性菌の増加が大きな問題に

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