2002.04.26

【再掲】 【日本消化器病学会速報】 西濃運輸従業員の総医療費、ピロリ菌除菌で3分の1に減少

 1995年からヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ菌)陽性の従業員に除菌療法を行っている西濃運輸で、7年後の医療費が3分の1以下にまで節減されたことが明らかになった。総医療費のおよそ半分を占めていた消化性潰瘍の治療費が、除菌後は20分の1にまで減ったため。一企業という集団内での除菌に、医療費を減らす効果が実証されたのは初めてで、同社の取り組みは医療費の増加に悩む他の健康保険組合や自治体にも参考になりそうだ。大垣市民病院消化器科の曽根康博氏らが、4月26日のシンポジウム3「Hp除菌療法−保険適用後の問題点」で報告した。

 西濃運輸の企業内診療所、西濃健保健康管理センターが、従業員の“集団除菌”に踏み切ったのは1995年のこと。1990年ごろから消化性潰瘍の患者が増え始め、1994年には消化性潰瘍にかかる医療費が1720万円と、ほかの疾患すべてを合わせた医療費(1460万円)を凌駕するようになったためだ。同センターは健保の全組合員2万5000人中8400人を診療対象としており、ほとんどが男性。平均年齢は約40歳で、「潰瘍撲滅」は急務の課題だった。

 そこで曽根氏らは、35歳以上の従業員に、H.ピロリ菌感染の有無を調べる尿素呼気試験を実施。要精検となった人を中心に内視鏡検査を行い、迅速ウレアーゼ試験で菌が見つかった消化性潰瘍患者には全員、除菌療法を受けてもらった。除菌療法を受けた430人中、女性は7人だけ。平均年齢は46.5歳で、7割が胃潰瘍だった。除菌率は中断者も含めたintent-to treat(ITT)解析で74.9%。

 その結果、経過観察を行えた359人中311人(86.6%)で、抗潰瘍薬を中止できたことが判明。追跡期間中(平均1107日)の再発率も、除菌が成功した人では3.1%と低かった。消化性潰瘍にかかっていた医療費は、1995年の2230万円をピークに年々減り始め、2001年には120万円と、ピーク時のおよそ20分の1にまで下がった。この効果で、総医療費もピーク時(1995年)の4160万円から、2001年は1290万円と、3分の1以下になったという。

 ただし、今回検討した医療費は健康保険で支払われたものだけで、スクリーニングにかかった費用や、2000年10月以前(保険適用前)の除菌療法にかかった費用は含まれていない。また、ここまでドラスティックな差が出たのは、組合員の大半が男性で、年齢的にも「潰瘍好発者」が多いためでもある。とはいえ、「企業という一つの閉鎖集団で、除菌の医療費節減効果を直接証明し得た」(曽根氏)意義は大きく、医療費節減という観点からも、改めて「H.ピロリ菌検診」が脚光を浴びそうだ。


■訂正■
 3段落目「35歳以上の従業員に、H.ピロリ菌感染の有無を調べる迅速ウレアーゼ試験」とあるのは「35歳以上の従業員に、H.ピロリ菌感染の有無を調べる尿素呼気試験」の、「要精検となった人を中心に内視鏡検査を行い、菌が見つかった」とあるのは「要精検となった人を中心に内視鏡検査を行い、迅速ウレアーゼ試験で菌が見つかった」の誤りでした。また、5段落目「迅速ウレアーゼ試験の費用」は「スクリーニングにかかった費用」が正しい表現でした。訂正します。

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