2002.04.24

【日本消化器病学会速報】 発癌も防ぐRA系抑制薬、癌の化学予防の有力なターゲットに

 降圧薬として用いられるレニン−アンジオテンシン系(RA系)抑制薬に、肝細胞癌の発生を防ぐ効果もあることがわかった。4月24日のシンポジウム8「消化器疾患のケモプリベンション−新しい試みと実践−」では、動物実験段階ながら、RA系抑制薬が前癌病変の発生を有意に抑制するとのデータが報告。聴衆の注目を集めた。

 この研究発表を行ったのは、奈良県立医科大学第三内科の吉治仁志氏ら。同氏らが「癌の予防薬」として着目したのは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のペリンドプリルだ。

 ACE阻害薬の発癌予防効果が初めて示唆されたのは1998年のこと。高血圧患者を対象とした調査で、ACE阻害薬を服用していた人の方が、他の降圧薬を飲んでいた人よりも癌死亡率が低く、発癌率も低いことが判明したためだ(Lancet;352,179,1998)。その後の研究で、肝細胞癌の発癌母体となる肝硬変でRA系が亢進していることや、RA系の亢進で産生量が増えるアンジオテンシン2に、肝臓の線維化を進展する「肝星細胞」を増やしたり、血管新生を促進する作用があることがわかってきた。

 RA系の活性化が、肝臓癌の発生や肝線維化の進展に関与しているのではないか−−。そう考えた吉治氏らは、発癌物質(ジエチルニトロソアミン)を投与したり、高率で肝臓癌を発生させる餌(コリン欠乏アミノ酸食;CDAA)を食べさせたりして、人為的に肝臓癌を発症しやすくしたラットを用いた動物実験を行った。

 その結果、ACE阻害薬を投与したラットでは、プラセボを投与したラットよりも前癌病変の数が少なく、病変サイズも小さいことが判明。癌を起こした原因の違い、すなわち発癌物質(外因性発癌)か食餌(内因性発癌)かは、効果に影響を及ぼさなかった。

 また、ラットにCDAAを食べさせると、3日で脂肪肝、12週間で肝硬変になり、1年後にほぼ100%が肝臓癌になるが、ACE阻害薬を投与すると肝硬変の悪化が防げることもわかった。このラットでは、肝星細胞の活性化やトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、肝臓内のコラーゲンの産生が抑制されており、肝細胞の線維化が抑えられていた。

 実験に用いたペリンドプリルの投与量は体重1kg当たり2mgで、降圧薬として通常用いられている投与量に匹敵する。既にフランスでは、高血圧を合併した肝硬変患者を対象に臨床試験が始まっており、吉治氏も「将来的には患者さんを対象に効果を検討したい」と話した。

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