2002.04.13

【日本感染症学会速報】 肺炎の起炎菌が15分でわかる、夢の尿検査キットの実力

 喀痰のグラム染色よりも手軽・確実に、培養法よりも早く、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)よりも安価に−−。患者の尿を検体として、肺炎の起炎菌を15分で診断する迅速診断キットが開発された。患者の尿中に排泄された菌の可溶性抗原を検出するもので、既にレジオネラ菌と肺炎球菌に関してはキットが商品化されており、わが国でも保険適用はないものの商品の入手は可能だ。東邦大学微生物学教室の舘田一博氏は、4月12日のシンポジウム2「起炎菌検出法の進歩と応用」で、同氏らの検討結果を中心に「夢の尿検査キット」の実力を紹介した。

 現在わが国で入手できる尿検査キットは、レジオネラ菌(Legionella pneumophilaなど)を検出する「Binax-NOW Legionella」(米国Binax社製)、「Biotest」(ドイツBiotest社製)と、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を検出する「Binax-NOW S. pneumoniae」(Binax社製)の3種類。Binax-NOWはイムノクロマト法、Biotestは酵素免疫法(EIA法)を採用しており、いずれも尿に浸すだけで15分で検査結果が得られる。

 気になるのは検査精度だが、舘田氏らが参加した「厚生省レジオネラ感染症研究班」で集積した9年分の検体を用いた検討では、レジオネラ感染症患者154人中94人(61.0%)で尿検査結果が陽性となることがわかった

 数字だけを見ると低いようだが、他の検査法でも陽性率は決して高くなく、培養法は26.9%、血清抗体価測定では39.5%、PCR法では61.0%。つまり、尿を使った迅速診断は、PCR法に匹敵する精度でレジオネラ感染症を診断できることになる。

 レジオネラ感染症の原因となるレジオネラ属細菌にはいくつか種類があるが、舘田氏らの検討で、菌の種類によってキットの検査精度が変わってくることもわかった。レジオネラ感染症のおよそ半数を占める、Legionella pneumophila血清型1(SG-1)以外のレジオネラ属菌感染症では、尿中抗原の陽性頻度が26.1%にまで下がってしまうのだ。こうした点を踏まえ、舘田氏は「レジオネラ菌の尿検査キットは、血清型1の感染症に関して有用な検査法ととらえるべきだろう」と話した。

肺炎球菌への特異度はほぼ100%、確診率倍増の可能性も

 一方の肺炎球菌尿中抗原検出キット「Binax-NOW S. pneumoniae」は、スペインで行われた検討(Chest;119,243,2001)で、感度80.4%、特異度97.2%という驚くべきデータが発表されたばかり。今年の日本呼吸器学会や日本感染症学会でも、東邦大学第2内科や沖縄県立中部病院、琉球大学第1内科などから同キットの有用性を示す研究結果が報告されている。

 興味深いのは、尿中抗原が陽性になった肺炎患者43人の喀痰・血液培養を行ったところ、約半数しか培養陽性にならなかったという東邦大学のデータだ。検査キットの特異度がほぼ100%であることを鑑みると、「尿中抗原検査の導入で、肺炎球菌の確定診断率は倍増する」(舘田氏)ことになる。

 ただし、小児では偽陽性率が極めて高いことが、昨年から今年にかけて海外で相次いで報告されている。また、鼻咽頭に肺炎球菌を保菌している人では、肺炎球菌性肺炎を発症していなくても尿検査結果が陽性となる恐れもある。こうした限界はあるものの、舘田氏は「少なくとも成人の肺炎患者で陽性となれば、ほぼ肺炎球菌性肺炎と診断できる」と述べ、「誰でもどこでも15分でできる、理想に近い検査法」(舘田氏)への期待を込めた。

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