2002.02.18

【日本総合診療医学会速報】 AF患者への抗凝固療法に消極的な医師、エビデンスより患者個人の状況を重視?

 京都大学臨床疫学の前田健次氏らは2月16日、日本総合診療医学会の一般演題で「慢性心房細動患者の抗凝固療法に対する臨床医の態度」について発表した。抗凝固療法は慢性心房細動(AF)患者における脳梗塞のリスクを軽減するというエビデンスがあるにもかかわらず、実際の臨床の現場では必ずしも十分に実施されていないのがこの調査を行うきっかけだったという。2001年の同学会の会場にて参加者を対象に行った自己回答式のアンケート結果によれば、患者ごとの臨床状況を重視する医師が抗凝固療法に慎重だったようだ。

 アンケートは、年齢(68歳か82歳)、血栓塞栓症のリスクの有無、抗凝固療法での出血性合併症のリスクの有無がそれぞれ異なる8通りの仮想的なAF患者を想定し、血栓塞栓症予防のための治療方針を選んでもらうもの。209人に配布し、126人からの回答を集計、分析した。回答者の背景については、男性が90%、年齢の中央値は38歳。専門分野は総合診療もしくは一般内科が58%を占め、所属施設は大学病院(47%)と臨床研修指定病院(25%)が多かった。

 8通りの仮想患者別に抗凝固療法を選んだ医師の割合をみると、「年齢は68歳で、抗凝固療法による出血性合併症のリスクがなく、血栓塞栓症のリスクがある」場合だけ57%と、半数を超えた。残りの7通りでは6〜33%と、抗凝固療法の実施には消極的な医師の方が多いという結果だった。

 そこで、医師の属性項目別に、抗凝固療法を選択した医師の選択しなかった医師に対するオッズ比を求めると、「卒後11年以上」が0.37(95%信頼区間:0.17〜0.82)、「大学病院に勤務」が0.44(同:0.21〜0.92)、「AF患者に対する血栓塞栓症の予防治療の経験が多い」が2.77(同:1.31〜5.87)、「(治療方針を決める際に)臨床試験の結果に大きな影響を受ける」が4.26(同:1.51〜12.02)といった項目が有意だった。

 前田氏はこうした結果をみて、出血性合併症のリスクがない場合でも抗凝固療法を避けた医師像について、「文献などから新しい知識を得たり、心房細動の患者を診療する機会が少なく、臨床試験の結果をすべての患者にそのまま適用せず、患者ごとに複雑な臨床状況を考慮する必要があると感じている医師ではないか」と語った。

 また、同氏は、調査対象が限られていたことを前置きした上で、「医師が治療方法を決断する際、治療の有効性に関する知識(エビデンス)だけでなく、個々の患者の診療環境や治療に伴って予想されうるリスクに影響されている可能性がある」と述べた。

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