2002.01.29

【日本疫学会速報】 抗アレルギー薬、テオフィリン薬の内服は熱性けいれん発症に影響せず?

 小児科でよく使われている抗アレルギー薬(抗ヒスタミン作用のあるケトチフェンなど)やテオフィリン薬で熱性けいれんが誘発されたという報告があるが、アレルギー疾患で通院中の患者約1000人を対象にした調査では、これらの薬剤の内服者に熱性けいれんの発生率が特に高いというデータは得られなかったことがわかった。この結果は、1月25日の一般演題「抗アレルギー剤とテオフィリン製剤の内服は熱性けいれんの発症に影響を与えるか」で、国立小児病院アレルギー科の大矢幸弘氏が報告した。

 抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬やテオフィリン薬のけいれん誘発に関するこれまでの報告は、いずれも小規模な症例報告や動物実験が中心であり、十分な検出力を持つ症例対照研究やコホート研究などの大規模な調査は発表されていない。しかし日本では、これらの薬剤がアレルギー疾患児に多用されていること、また欧米に比べて熱性けいれんの有病率が高いこともあって、現場の小児科医の間には困惑が生じているという。そこで大矢氏らは、これらの薬剤の内服と熱性けいれんの発症に相関があるかどうか、外来通院患者を対象に調査を行った。

 対象としたのは、2001年3月に国立小児病院アレルギー科を受診した患者全員。養育者への問診とカルテ情報から、1.熱性けいれんの有無と発症年齢と回数、2.6歳までの抗アレルギー薬または抗ヒスタミン薬の服薬歴、3.6歳までのテオフィリン薬の内服状況、4.熱性けいれんの家族歴−−などを調べた。なお、熱性けいれん以外の神経疾患の既往のある者と熱性けいれんの既往が不明な者は除外し、いずれの薬剤も半年以上定期的に内服していたか、熱性けいれん発症時に内服していた者を「服薬あり」とした。

 この結果、男601人、女419人から回答を得、うち熱性けいれん「あり」は76人と全体の7.5%を占めた。これは、日本でこれまでに報告された熱性けいれんの累積有病率(7〜8%前後)とほぼ同じだった。初発年齢は1歳が39人(51.3%)と最も多く、累積発症率は3歳までで93.4%に上った。

 テオフィリン薬内服者と非内服者の熱性けいれん経験歴に関するオッズ比は0.63(95%CI:0.37〜1.05)だった。熱性けいれんの家族歴ありと家族歴なしのオッズ比は5.68(同3.68〜10.53)で、明らかに家族歴のある者で有意に高かった。一方、抗アレルギー薬内服者と非内服者のオッズ比は0.42(同0.26〜0.72)で、むしろ内服者が有意に低いという結果が得られた。この傾向は、家族歴を加味した解析による修正オッズ比でも同様であった。

 同病院では、テオフィリン薬は血中濃度が15μg/ml以下にコントロールされるよう低用量で投与しているためけいれん毒性が発現しなかったと考えられるという。しかし、抗アレルギー薬については、熱性けいれんの好発年齢で抗アレルギー薬内服者の比率が低いことが結果に影響している可能性が考えられた。

 このため大矢氏らは、服薬開始年齢が2歳以下の患者だけに限ってさらに解析してみた。すると、熱性けいれんの発症には、いずれの薬剤の内服でも有意差はみられず、家族歴のみが濃厚に影響しているという結果が得られた。
 
 なお、最後に「こうしたけいれん閾値を下げることが示唆されている薬剤の熱性けいれんに与える臨床的影響を厳密に調べるためには、横断的な研究や後ろ向き研究には限界があるのではないか」と大矢氏は付け加えた。(瀬川博子、日経メディカル開発)

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