2001.12.12

【日本免疫学会速報】 RA自然発症マウスの関節炎発症機構が解明、胸腺でのT細胞選択異常が鍵に

 慢性関節リウマチ(RA)に酷似した自己免疫性関節炎を自然発症する「SKGマウス」が、どのような機構で関節炎を発症するのかが、徐々に解明されてきた。関節炎の発症には自己を攻撃するT細胞が関与しているが、このT細胞の産生に、正、負双方のT細胞選択異常が関わっているという。ヒトのRA発症機構の解明に向けた大きな一歩となりそうだ。研究結果は、京都大学再生医科学研究所生体機能調節分野教授の坂口志文氏らの研究グループが、12月11日のワークショップ3「慢性関節リウマチ」で発表した。

 坂口氏らが確立したSKGマウスは、単一遺伝子の突然変異により、ヒトのRAに非常によく似た病理像を示す関節炎を高い確率で自然発症するマウス。RAの疾患モデル動物として、最も注目されているマウスの一つだ。これまでの研究で、関節炎を起こすのは自己を攻撃する自己反応性T細胞であり、SKGマウスの胸腺で関節炎惹起性T細胞が産生されていることがわかっていたが、どのような機序でこうしたT細胞が産生されるのかは明らかでなかった。

 胸腺はT細胞の“教育の場”で、自己を攻撃するT細胞を排除する「負の選択」(ネガティブ・セレクション)と、異物進入時にその異物に対する受容体(TCR)を発現するT細胞だけを大量増殖する「正の選択」(ポジティブ・セレクション)が行われている(関連トピックス参照)。同研究グループの坂口教子氏らは、SKGマウスでこれらのT細胞選択がどのように行われているかを検討した。

 坂口氏らはまず、遺伝子変異のないマウス(BALB/cマウス)とSKGマウスとに抗CD3抗体を投与して、胸腺でどの程度樹状細胞が死滅(アポトーシス)するかを調べた。すると、変異のないマウスでは、投与3日後に胸腺の樹状細胞が大幅に減少する。しかし、SKGマウスでは半数程度にしか減らず、「負の選択」に対する抵抗性を持つことがわかった。

 一方の正の選択に関しても、正常マウスとSKGマウスを交配してできた子マウスでは、正常マウスよりも異物に対するT細胞の数が少なく、自己を攻撃するT細胞数が多いことも判明。SKGマウスの胸腺が関節炎惹起性のT細胞を産生するのは、「負の選択を受けるべきT細胞が排除されず、正の選択を受けるべきT細胞が選択されない」(坂口氏)ことが主因と考えられることが明らかになった。

 SKGはT細胞に特異的に発現する遺伝子で、SKG遺伝子に変異があると、T細胞が活性化する際、特定の活性化シグナルに対する伝達異常が起こることが確認されている。坂口氏らは現在、正常なSKG遺伝子をSKGマウスに導入し、関節炎が起こらなくなるかどうかを調べているという。また、RA患者でSKG遺伝子やその関連遺伝子に変異がみられるかどうかについても検討を進めており、ヒトでも同様の変異が確認されれば、疾患モデル動物としての有用性がさらに高まるだろう。

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.10.31 日本アレルギー学会速報】解明進む免疫系の分子機構、リンパ球遊走の制御でアレルギー疾患の克服へ−−会長講演より

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