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2001.11.05

【日本公衆衛生学会速報】 急性A型肝炎の医療機関からの報告率はわずか10%程度?

 急性A型肝炎は1999年4月から4類感染症として全数報告の対象疾患となっているが、その報告率が10%程度に過ぎないようだ。国立感染症研究所・感染症情報センター(兼大分医科大学微生物学講座)の中島一敏氏らが、臨床検査会社などを対象とした調査からA型肝炎の全発症数を推計したもので、11月1日の一般演題「感染症」で発表した。報告率の低さは、疾病対策を講じる際などに問題になりそうだ。

 中島氏らは、A型肝炎ウイルスの分離培養は困難であるため、急性A型肝炎の確定診断は通常、患者の急性期血清中の免疫グロブリン(IgM)抗体を検出する形で行うことに着目。3大民間臨床検査会社におけるIgM抗体検査の陽性数と全国シェアから全患者数を推計した。

 2000年1〜12月に3社で実施した検査のうち、陽性だったのは1912件。また、検査試薬の購入量から全国シェアを推測したところ、3社で計47%であった。したがって、全患者数は4068人(=1912人÷47%)と推計された。

 一方、2000年に急性A型肝炎報告されたのは394件で、推定報告率は9.7%にとどまった。推定報告率を都道府県別にみたところ、最小0%から最大80%弱となっており、地域により大きく異なることが判明した。さらに、人口10万人当たりの推定患者数についても、都道府県格差が最大約10倍に達することがわかった。

 また、A型肝炎は発症前にウイルスが排泄されるため、感染が広まりやすいのが特徴の一つ。そこで、中島氏らは、全国の保健所591カ所を対象に、急性A型肝炎の集団発生状況についてアンケート調査を行った。574カ所からの回答を集計(回答率96.6%)した結果、集団発生として把握されていたのは12件で、総患者数は116人だった。これは全患者の2.9%に過ぎず、集団発生があまり把握されていない可能性が示唆された。

 中島氏は、「報告率が低過ぎるのは問題。疫学調査の必要性を十分に説明して、現場の医療機関に協力を求めていく必要があるだろう」と語った。