2001.10.31

【日本アレルギー学会速報】 解明進む免疫系の分子機構、リンパ球遊走の制御でアレルギー疾患の克服へ−−会長講演より

 10月30日に行われた会長講演「免疫システムにおけるソフトとハード構築の分子機構」には、今期総会の会長を務める笹月健彦氏(九州大学生体防御医学研究所遺伝学部門教授・国立国際医療センター研究所所長)が登壇。免疫系の分子機構に関し、ソフト面ではT細胞の成熟過程で起こる正・負の選択、ハード面ではリンパ球の遊走について、免疫による生体制御がどこまで解明されたかを解説した。

 T細胞は免疫系の担い手の一つだが、その前駆細胞(リンパ系前駆細胞)は、胸腺で成熟して異物を撃退する能力を獲得する。T細胞が異物を認識する受容体(TCR)はランダムに作製されるが、その際に重要になるのが、自己に反応する、つまり自己免疫疾患を引き起こし得るTCRを発現したT細胞をあらかじめ除去する「負の選択」(ネガティブ・セレクション)だ。

 一方、生体内に異物が進入した場合、その断片(ペプチド)を主要組織適合分子(MHC分子)が標的として提示。胸腺では、このMHC分子と結合したペプチドを認識するTCRを発現したT細胞のみを大量に増殖する「正の選択」(ポジティブ・セレクション)が行われる。

 この正・負の選択のいずれにも、MHC分子とペプチドとの複合体が関与している。つまり、同じ複合体が正と負の選択という相反する作用を持つわけで、そこにどのような選択基準が存在するのかを解明するため、世界的な競争が繰り広げられた。

 こうした謎の解明に向け、笹月氏らの研究グループは、たった1種類のMHC・ペプチド複合体しか持たない遺伝子組み換えマウスを作製。このマウスを用いた実験で、1.MHC・ペプチド複合体とT細胞受容体(TCR)との親和性、2.MHC・ペプチド複合体の細胞あたりの表現量−−の二つが、どちらの選択が行われるかの鍵となることを見出した。

 また、免疫系のハード面、すなわち異物にリンパ球がどのように遊走されるのかという点についても、研究グループはCDMファミリー分子であるDOCK2が重要な役割を果たしていることを解明。DOCK2遺伝子を欠損させたノックアウト・マウスを作製することで、DOCK2がG蛋白の一つであるRacの活性化を介して細胞骨格を再構築し、リンパ球の遊走を調節していることを明らかにした(Nature;412,826,2001)。

 この研究成果について、笹月氏は「リンパ球の遊走を制御できれば、アレルギーや自己免疫疾患、移植の際に起こる拒絶反応など、免疫が関与する様々な疾患の克服が可能になる」と強調。「免疫の時代は終わったと言われるが、特に臨床面への応用はこれからの課題」と述べ、ソフト面とハード面で得られた知見を組み合わせて疾患の克服につなげたいとした。

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