2001.10.26

【日本高血圧学会速報】 遺伝子治療、2003年にも実用段階に−教育講演より 

 10月25日に行われた教育講演「高血圧の成因と治療‐その基礎研究」では、大阪大学遺伝子治療学・加齢医学の森下竜一氏が遺伝子治療の現状と将来展望を概説。特に循環器分野の生活習慣病に対する遺伝子治療が、次々と臨床試験の最終段階に入っており、早ければ2003年にも実用化されるとの展望を示した。

 遺伝子治療が世界で最初に行われたのは1989年。アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症の女児を対象としたものだった。以来、現在までに遺伝子治療は5000人以上に実施されており、「今では年間数百人と、肺移植よりも一般的な治療となった」と森下氏は言う。

 実施件数を対象疾患別にみると、癌に関する遺伝子治療が約7割を占める。次いでADA欠損症などの単一遺伝子疾患が1割強で、生活習慣病に関するものは1割程度。しかし、生活習慣病に関する遺伝子治療は、遺伝子治療の方向性を「遺伝子を治療する遺伝子治療」から「遺伝子をドラッグ・デリバリー・システム(DDS)として使う遺伝子治療」へと大きく転換させた。

 その転機となったのが、「筋肉内に遺伝子を導入し、血管を再生させる」との遺伝子治療。この治療が一定の成果を上げたことで、生活習慣病を治療する、DDSとしての遺伝子治療に対する期待が高まった。

 森下氏によると、血管新生関連遺伝子を用いた遺伝子治療は、血管内皮成長因子(VEGF)や線維芽細胞成長因子(FGF)を用いるものなどが臨床試験を進めており、うちVEGF-2(米国Vascular Genetics社)とFGF-5(米国Collateral社/米国Shering社)については第3相試験が進められている段階だという。森下氏は「このどちらかが、2003年にも、世界で最初に(試験段階を終了して)一般化される遺伝子治療となるだろう」と述べた。

 森下氏らも、肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子をプラスミド・ベクターで筋肉内に導入し、血管新生を促す遺伝子治療臨床試験「TREAT-HGF」を今年6月からスタートしている。対象疾患は末梢性血管疾患(閉塞性動脈硬化症及びビュルガー病)で、現在までに5人の患者に遺伝子を導入した。

 最終的な効果判定は学内審査委員会が行うが、現在までに血管造影で新生血管が確認されており、下脚の血圧比率や痛みの改善もみられ、車いすで入院した患者が歩いて退院するなど“遺伝子治療の効果が期待できる結果”が出ている。虚血性心疾患を対象とした同様のプロトコールについても、今年1月に治験申請を行っており、現在は学内審査委員会が審議を進めている段階だ。


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◆「高血圧治療に関する調査」ご協力のお願い

 MedWaveは日本高血圧学会の開催を機に、「高血圧治療に関する調査」を実施します。医療現場の第一線で活躍されている先生方に、高血圧治療の方法や考え方、降圧薬の処方経験、高血圧治療に関する情報ニーズなどをお伺いし、高血圧治療の実態を明らかにすることを目的としております。調査結果は後日、MedWave上で紹介する予定です。
 ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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