2001.09.12

【EASD学会速報】 持続皮下インスリン注入療法、患者教育や適用の絞り込みに課題

 持続皮下インスリン注入療法を行っている1型糖尿病患者では、患者教育の効果は乏しい−−。9月10日に行われた一般口演で、ドイツの研究者からこんな意外な研究結果が発表された。

 この研究は、1型糖尿病患者の質的な管理向上を目的に、ドイツ糖尿病協会の治療ワーキンググループが実施した全国規模の研究の一環。同グループは、1型糖尿病患者1万912人を対象に、インスリン治療の意義や注射法、血糖自己測定やインスリン量の自己調節、栄養療法などに関する教育を実施。こうした患者教育が血糖コントロールにどのような影響を及ぼすかを調べた。研究は、1992年から2001年までの10年間行われた。

 患者教育の効果は、如実に現れた。長期間の血糖コントロール状態を反映するヘモグロビンA1c(HbA1c)は、患者教育を行う前は平均8.1%だったのに対し、教育後12〜15カ月目には平均7.15%に低下した。重度低血糖やケトアシドーシスの回数も、患者一人1年当たり前者は0.355から0.164に、後者は0.093から0.030へと、いずれも約3分の1になった。

 また、教育前の血糖コントロール状態と、教育の効果との間にも興味深い相関が見られた。HbA1c8%を閾値に患者を2群に分けると、同値が8%以上だった血糖コントロール不良群(全体の37%)では、患者教育の前後でHbA1cは平均9.8%から8.25%に減少していた。これに対し、同値が8%未満だった血糖コントロール良好群(全体の63%)では、HbA1cが6.65%から6.75%とわずかに増加していた。一方、重度低血糖の発生回数では逆に、血糖コントロール良好群の方が減少率が大きかった。ケトアシドーシスの回数変化には違いが見られなかった。

持続皮下インスリン注入療法に対する教育の効果は弱い?

 次に研究グループは、対象患者から1249人を抽出。インスリン自己注射を行っている患者と、持続皮下インスリン注入療法を受けている患者とで、教育の効果が異なるかを検討した。

 その結果、インスリン自己注射群(84%)では、教育の前後でHbA1cは平均7.85%から7.3%へと低下していた。ところが、持続皮下インスリン注入療法群(16%)では、これが8.0%から7.65%で、低下率は自己注射群よりも少ないことがわかった。患者一人1年あたりのケトアシドーシスの発生回数も同様で、自己注射群ではほぼ半減している(0.08から0.04)のに対し、持続皮下注入療法群では0.11から0.15と増加がみられた。なお、重度低血糖の発生回数については、両者とも同様に減少していた。

 持続皮下インスリン注入療法は、速効型または超速効型インスリンを、小型のポンプを使って持続的に注入するインスリン療法。投与量を細かく調節すれば、血中インスリン値を健常人のインスリン分泌パターンにかなり近づけることができるため、血糖の厳格なコントロールが可能になる。しかし、その一方で頻繁に血糖自己測定を行わなければならず、患者の「自己管理」が厳しく求められる治療法だ。ケトアシドーシスの急激な悪化や皮膚感染症など課題も多い。

 結果を発表したドイツJena大学のU. A.Muller氏は「持続皮下インスリン注入療法による患者のケアは、糖尿病患者の診療経験が豊富な施設で行われるべきだ。今後、どのようなケースでは同療法を禁忌とすべきかについて検討を進めたい」と語った。(八倉巻尚子、医療ライター)

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