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2001.09.07

【ESC学会速報】 非Q波心筋梗塞、CK陰性・トロポニン陽性例では従来例と転帰が異なることが判明

 2000年9月に公表された、欧州心臓学会(ESC)と米国心臓学会(ACC)のコンセンサスガイドラインでは、心電図上にQ波を伴わない「非Q波心筋梗塞」の範囲が拡大された。具体的には、心電図上でST部の上昇を認めた際、血中クレアチニンキナーゼ(CK)増加を伴わなくても、血中トロポニン濃度の上昇を認めた場合には「非Q波心筋梗塞」と分類することとなっている。

 ドイツHerzzentrum LudwigshafenのA. K. Gitt氏らは、このガイドラインで新たに定義された非Q波梗塞(CK陰性でトロポニン陽性)と、従来のCK陽性非Q波梗塞とでは、同じ治療に対する臨床転帰が大幅に異なることを発見。9月5日のスライドセッション「Prognostic Aspects」で報告した。

 Gitt氏らは、ドイツ全域の150病院が参加する患者登録データベースのACOSから、非Q波心筋梗塞患者2347人を抽出。従来の非Q波梗塞(1216人)と、新定義で追加された非Q波梗塞(1131人)とに分類し、それぞれが受けた治療や臨床転帰を比較した。

 その結果、両群ともおよそ25%が経皮的冠動脈バルーン拡張術(POBA)を受け、20%近くはステントを留置されており、経皮的冠血行再建術(PCI)の手技には差を認めなかった。

 しかし、両群の臨床転帰には大きな違いが現れた。院内死亡率は従来の非Q波梗塞群が7.5%であったのに対し、新定義で追加された非Q波梗塞群では5.3%と有意に低かった(p=0.01)。非致死的な「心筋梗塞」「心原性ショック」「脳卒中」についても同様で、CK陰性でトロポニン陽性の非Q波梗塞患者の方が、従来のCK陽性非Q波梗塞患者よりも発生率が低かった。

 ただし、両群の背景因子にも違いがある。新定義で追加された非Q波梗塞群では、1.女性、2.心筋梗塞既往、3.PCIや冠動脈バイパス術(CABG)の施術歴、4.高脂血症−−が有意に多かった。これは、CK陰性かつトロポニン陽性の非Q波梗塞は、従来のCK陽性非Q波梗塞よりも、急性冠症候群(ACS)のより早期な段階に位置すると考えられるためだという。

 また、CK陰性かつトロポニン陽性の非Q波梗塞は、従来例よりも収縮期血圧が有意に高い(143mmHg対149mmHg)。服用薬についても、新定義で追加された非Q波梗塞患者では、アスピリン、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、カルシウム(Ca)拮抗薬、クロピドグレルのいずれも有意に服用例が多い。

 以上からGitt氏は、「様々な交絡因子があるので、単純にこれら2類型の非Q波梗塞と予後とを相関させることはできないが、それぞれの類型に適した個別の治療法が存在する可能性もある」と指摘した。(指方 通、医療ライター)


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