2001.09.04

【ESC学会速報】 ESCの慢性心不全ガイドラインが発表、日本とは一部薬剤の位置付けに違い

 9月2日のシンポジウム「On-going guidelines」では、Sahlgrenska大学病院のK. Swedberg氏が、欧州心臓病学会(ESC)の心不全診断・治療ガイドラインに当たる「Task Force for the Diagnosis and Treatment of CHF」を解説した。このガイドラインは、1999年のESC学術集会で召集された諮問委員会(Task Force)が作成、今年5月に上位委員会である臨床ガイドライン・基本方針委員会(Committee for Practice Guidelines and Policy Conferences)が承認したもの。ガイドラインの全文は、ESCの学会誌であるEuropean Heart Journal誌9月号に掲載された。

 わが国との違いが目に付くのは、慢性心不全の薬物療法に関する部分。大筋で最近の大規模臨床試験の結果を反映したものとなっているが、経口強心薬とアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬の位置付けについては、日本とは少し異なるようだ。

 強心薬については、経口強心薬である「ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬の長期ないし繰り返し投与は死亡率を増加させる」とあり、「カルシウム感受性改善薬のレボシメンダン短期投与はドブタミンよりも安全だが、長期にわたる生存率への影響は未確認」とされている。

 しかし、日本人の心不全患者276人を対象とした二重盲検試験では、カルシウム感受性改善薬のピモベンダンを1年間服用することで、生存率に悪影響を及ぼすことなく生活の質(QOL)が改善されたとの結果が得られている。この日欧の違いを、日本の心不全専門医がどう解釈するかに注目したい。

 一方のA2受容体拮抗薬は、わが国では慢性心不全に対し「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と同等の有用性で、副作用は少ない」と考えられている向きがある。しかし、ESCガイドラインでは、エビデンスに基づき「死亡率減少に関して、ACE阻害薬とA2受容体拮抗薬が同等であるとは証明されていない」としている。「ACE阻害薬不耐容例に対し、ACE阻害薬の代替となる可能性もある」という考え方は、エビデンスを参考にした委員会の“意見”として記載されるに留まっているという。

 また、ACE阻害薬とA2受容体拮抗薬との併用については、「症状を改善し入院を減少させる」とする一方、「ACE阻害薬とβ遮断薬との併用例に対するA2受容体拮抗薬の追加は、現状では推奨できず、さらなる検討が必要」との見解が示されている。

 本ガイドラインは、ESCホームページの「Guidelines & Scientific Statements」から入手できる。このサイトからは、ESCと米国心臓協会(AHA)、米国心臓学会(ACC)が共同で作成、8月30日に発表した「心房細動患者管理ガイドライン」も入手可能だ。(指方 通、医療ライター)


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