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2001.09.04

【ESC学会速報】 ICU患者の心不全発症が「見舞い」で減少

 集中治療室(ICU)に入院している重症患者では、親族の面会(見舞い)で、生活の質(QOL)だけでなく転帰にも好影響がもたらされるとの研究結果が発表された。親族が長時間面会した患者の方が、重度の心不全発症率が少なく、一定の手順を踏めば感染症の問題は生じなかったという。イタリアFlorence大学のS. Fumagalli氏らによる研究で、9月1日のポスターセッション「Psycho-social factors」で報告された。

 Fumagalli氏らは、ICUに入院中の患者226人(平均年齢68歳)を、親族による面会に対する制限の有無で2群に分け、QOLと転帰を評価した。入院患者の基礎疾患として最も多かったのは心筋梗塞(156人)で、試験開始時の入院期間は平均5.7日だった。

 面会を「1日2回、1回1時間以内」とする「制限群」と、「1回の面会に立ち会えるのは1名だけ」という制限しかしない「無制限群」とでは、面会回数などに大きな違いが現れた。面会回数は無制限群の1日3.2回に対し、制限群では1日2回。入院期間に占める面会時間の割合も10.9%対4.1%となり、いずれも無制限群で有意に多かった。

 退院時にQOLを評価したところ、無制限群では不安感が有意に減少していたが、制限群では入院時と不変で、無制限群におけるQOLの改善が示唆された。

 それに加え、Fumagalli氏らも予想だにしていなかったのが、重度心不全(心原性ショックまたは肺うっ血)の著明な減少だ。重症心不全の発生率は、無制限群の1.8%に対し制限群は8.7%。オッズ比は5.2(95%信頼区間:1.1〜24.3)となり、面会の制限を撤廃すれば、重症心不全の発生率が5分の1以下になることがわかった。この機序について、Fumagalli氏は「不安が減少することで、交感神経系の活性が抑制されるのではないか」と推察している。良く知られるように、交感神経系の亢進は左室機能低下例の予後悪化因子だ。

 一方、一般には面会機会が増えると感染症の発生率が増加するとされる。しかし、今回の検討では、感染症の発症率は肺炎(無制限群:12.6%、制限群:8.7%)、敗血症(順に0.9%、0.9%)と尿路感染症(順に2.7%、7.0%)のいずれも両群に有意差を認めなかった。

 この意外な結果について、Fumagalli氏は「われわれの施設では『面会を増やしてあげたい』という意思統一ができており、医師やコ・メディカルが感染症には細心の注意を払っている。さらに、面会者には手洗いのほか、靴を脱ぐ、白衣を着るなどの感染対策をとってもらったことが、このような結果を導いたのではないか」と述べた。(指方 通、医療ライター)


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