2001.07.13

運動神経を遮断しない低用量の薬剤投与、従来の硬膜外麻酔より自然分娩率高まる

 分娩時の痛みを和らげる手法として、運動神経を遮断しない低用量の薬剤投与を選んだ方が、自然分娩は増えるようだ。硬膜外麻酔が無痛分娩の手法としてよく用いられるが、出産に要する時間が長くなったり、運動神経の遮断により鉗子分娩や吸引分娩などの器具を使った分娩の割合が増えるとの指摘もあった。そこで、英国の研究グループCOMET(Comparative Obstetric Mobile Epidural Trial)は、低用量の薬剤による脊椎麻酔を併用した硬膜外麻酔や持続硬膜外麻酔といった、運動神経を遮断しない麻酔法を提案し、無作為化比較試験によって、それらの手法の効果を比較した。この研究結果は、Lancet7月7日号に掲載されている。

 比較試験は、これまで出産経験がない女性1054人を対象に実施。英国の二つの産科施設において1999年2月から2000年4月の間に、分娩時の痛みを和らげるために硬膜外麻酔を要求した女性。この1054人のうち、388人を従来からの硬膜外麻酔群(対照群)に、335人を脊椎麻酔を併用した低用量の硬膜外麻酔群(脊椎・硬膜外麻酔併用群)に、331人を低用量の持続硬膜外麻酔群(持続点滴群)の3群に、年齢層がほぼ同じになるように割り付けた。なお、硬膜外麻酔や脊椎麻酔を受けた経験がある人や、過去4時間以内にペチジンを注射された人などは除外している。

 対照群の薬剤投与法は、2%リドカイン3mlを投与した5分後に、0.25%ブピバカイン10mlを投薬するというもの。その後は求めに応じて、1時間以上間隔をあけて、0.25%ブピバカイン10mlを1回静注で与える。脊椎・硬膜外麻酔併用群と持続点滴群については、0.1%ブピバカインに麻薬のフェンタニールを2μg/mlとなるように混ぜた薬剤を使用。脊椎・硬膜外麻酔併用群は、脊椎麻酔した後、混合薬15mlを硬膜外カテーテルで与える。その後、要求があれば1時間以上の間隔で、混合薬10mlを1回静注で投与する。また、持続点滴群については、1時間当たり10mlの速さになるように持続点滴した。

 その結果、自然分娩の割合は、脊椎・硬膜外麻酔併用群や持続点滴群の方が対照群より有意に高く、対照群が35.1%、脊椎・硬膜外麻酔併用群が42.7%、持続点滴群が42.9%だった。研究グループは、麻酔薬の投与量が少ないので、母体の運動機能が対照群より維持されているためとみている。また、経膣出産した人のなかで、対照群に対する、器具を使用しない通常出産のオッズ比を求めると、脊椎・硬膜外麻酔併用群が1.55(95%信頼区間:1.08〜2.24)、持続点滴群が1.62(同:1.12〜2.34)だった。

アプガー・スコアなどは従来の硬膜外麻酔の方が良い結果

 一方、帝王切開した割合は27.8%から29.1%までと、3群間に差はほとんどなかった。このように、3群間で差がみられない評価項目は少なくない。例えば、新生児の状態を評価するアプガー・スコア(出生5分後)が7点未満の新生児の率。対照群が0.8%だったのに対し、脊椎・硬膜外麻酔併用群は2.0%、持続点滴群は2.9%と、有意差はないものの対照群の方が低かった。

 さらに、出生1分後のアプガー・スコアになると、7点未満の割合は対照群が10.8%、脊椎・硬膜外麻酔併用群が15.7%、持続点滴群が18.3%で、持続点滴群は対照群より有意に高かった(p=0.01)。アプガー・スコアが悪い理由の一つとして、研究グループは胎児に悪影響を与えるフェンタニールの使用を挙げている。

 また、高水準の救急蘇生が必要だった率も、対照群が1.4%、脊椎・硬膜外麻酔併用群が1.4%、持続点滴群が4.8%と、持続点滴群は対照群より有意に多かった(p=0.02)。この結果に対しては、器具を使った出産を避けることで得られるメリットも考慮されるべきとの考えを示している。

 最後に、研究グループは、「出産時の結果をみると、無痛分娩の手法としては、従来の硬膜外麻酔よりも新しい薬剤投与手法の方がメリットは大きい。長期予後のデータはないが、硬膜外麻酔をこれまでのように選択するべきではないだろう」と結論付けている。

 タイトルは、「Effect of low-dose mobile versus traditional epidural techniques on mode of delivery: a randomised controlled trial」。現在、こちらで論文のすべてを読むことができる。

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