2001.07.12

【日本DDS学会速報】 抗IL6r抗体、難治性の慢性関節リウマチに奏効

 炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL6)の、受容体に対する抗体を用いた疾患治療が現実味を帯びてきた。今春終了した早期第1/2相臨床試験では、約8割の難治性慢性関節リウマチ患者で症状の改善が見られたという。治験を担当した大阪大学健康体育部健康医学第一部門の吉崎和幸氏が、7月12日に行われたシンポジウム2「タンパク療法の展開とDDSへの提言」で、臨床開発の現状を紹介した。

 IL6は、B細胞・T細胞の分化や、肝臓細胞を介したC反応性蛋白(CRP)などの急性期蛋白の発現など、多様な作用を持つサイトカイン。慢性関節リウマチやクローン病など自己免疫性疾患の病態にも深く関与していることが知られている。

 このIL6は、膜型のIL6受容体(IL6r)や可溶性IL6r(sIL6r)と結合し、その複合体が膜型の糖蛋白130(gp130)と結合することで作用を発揮する。吉崎氏らは、IL6rとsIL6rの両者に結合するヒト化モノクローン抗体を開発。発症や増悪にIL6が関与する疾患を対象とした臨床開発に着手した。

 難治性リウマチ患者15人を対象に行った早期第1/2相臨床試験では、患者を3群に分け、抗IL6r抗体を点滴投与した。投与量は体重1kg当たり2mg、4mg、8mgの3種類。抗体医薬であるため経口投与できないのが難点だが、投与間隔は2週間、点滴投与に要する時間は約1時間で、外来で十分実施できるプロトコールだ。

 その結果、15人中12人で、6週後に炎症マーカーであるCRPやフィブリノーゲン、血清アミロイドA(SAA)が正常化した。症状の改善度の指標である、米国リウマチ学会(ACR)の評価スコアも、24週後には約8割の患者で20%の改善(ACR20)、4割の患者で50%の改善(ACR50)が得られたという。

 慢性関節リウマチの第一選択として用いられている、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)では、ACR20の改善が得られる患者は2割程度。新しい作用機序の抗リウマチ薬として期待を集める抗腫瘍壊死因子α(TNFα)抗体でも6割程度であり、「従来薬と比べても、非常に期待の持てる結果」と吉崎氏は高く評価する。

 気になる副作用については、「ほとんど見られない」と吉崎氏。臨床試験を行った患者数がまだ少数なので確定的ではないが、嘔吐や下痢などの消化器症状や発熱、肺炎、投与部の疼痛など主要な副作用は1例も経験していないという。ただ、IL6を抑制することで免疫機能が抑えられるため、吉崎氏は「感染症には注意が必要になる」と指摘した。

後期第2相試験も開始、癌患者のQOL改善にも期待

 現在吉崎氏らは、中外製薬と共同で抗IL6r抗体の後期第2相臨床試験に着手している。慢性関節リウマチのほか、希用医薬品(オーファンドラッグ)としてキャッスルマン病とクローン病が対象疾患だ。慢性関節リウマチ患者に対しては、プラセボ、抗IL6r抗体4mg/kg、同8mg/kgを月1回点滴投与して、効果と安全性を検討するという。

 このほか、癌患者の生活の質(QOL)を改善する効果も、吉崎氏の期待するところ。骨髄腫(ミエローマ)や腎臓癌、子宮癌などは、IL6が癌細胞の増殖に関わっていると考えられている。吉崎氏らは、末期の骨髄腫患者に試験的に抗IL6r抗体を投与。癌は治癒しなかったが、患者が「体が楽になった」とうれしそうに語ったという。

 末期癌では腫瘍周辺に慢性炎症が生じ、慢性的なだるさを訴える悪液質(カヘキシー)がしばしば生じる。これに同抗体の抗炎症作用が奏効した可能性もあり、「癌患者を対象とした臨床試験を行う際には、QOLも含めた評価を行いたい」と吉崎氏は述べた。

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