処方薬事典データ協力:株式会社メドレー
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アリセプトD錠5mgの基本情報
基本情報
脳内の神経伝達物質(アセチルコリン)の量を増やしアルツハイマー病などの認知症における記憶障害(もの忘れ)、実行機能障害(問題解決能力の低下)、見当識障害(時間や場所の見当がつかない)などの症状の進行を遅らせる薬
- アリセプト
- レミニール
- イクセロン リバスタッチ
- アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
- レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
- 〈アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制〉通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する
- 高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する
- なお、症状により適宜減量する
- 〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する
- 5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する
- なお、症状により5mgまで減量できる
- (用法及び用量に関連する注意)7.1. 3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1〜2週間を超えて使用しないこと
- 7.2. 10mg/日に増量する場合は、消化器系副作用に注意しながら投与すること
- 7.3. 医療従事者、家族などの管理のもとで投与すること
副作用
注意事項
- 禁止
- 過敏症
- 注意
- 気管支喘息
- 錐体外路障害
- 消化性潰瘍
- 心筋梗塞
- 心筋症
- 心疾患
- 低カリウム血症
- 電解質異常
- 洞不全症候群
- パーキンソン症候群
- パーキンソン病
- 閉塞性肺疾患
- 弁膜症
- 房室接合部伝導障害
- 心房内伝導障害
- アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症以外の認知症性疾患
- レビー小体型認知症で日常生活動作が制限される錐体外路障害
- レビー小体型認知症で薬物治療を要する程度の錐体外路障害
- レビー小体型認知症における行動障害
- レビー小体型認知症における精神症状
- 相対禁止
- 妊婦・産婦
- 注意
- 授乳婦
- 新生児(低出生体重児を含む)
- 乳児
- 幼児・小児
- 注意
- 小児等(0歳〜14歳)
相互作用
- 薬剤名
- 影響
- スキサメトニウム塩化物水和物
- 筋弛緩作用を増強
- コリン作動薬
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- 塩化アセチルコリン
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- 塩化カルプロニウム
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- 塩化ベタネコール
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- アクラトニウムナパジシル酸塩
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- コリンエステラーゼ阻害剤
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- 塩化アンベノニウム
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- 臭化ジスチグミン
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- 臭化ピリドスチグミン
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- ネオスチグミン
- 迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強
- CYP3A酵素阻害剤
- 本剤の代謝を阻害し作用を増強
- イトラコナゾール
- 本剤の代謝を阻害し作用を増強
- エリスロマイシン
- 本剤の代謝を阻害し作用を増強
- ブロモクリプチン
- 本剤の代謝を阻害し作用を増強
- イストラデフィリン
- 本剤の代謝を阻害し作用を増強
- キニジン硫酸塩水和物
- 本剤の代謝を阻害し作用を増強
- カルバマゼピン
- 本剤の代謝を促進し作用を減弱
- デキサメタゾン
- 本剤の代謝を促進し作用を減弱
- フェニトイン
- 本剤の代謝を促進し作用を減弱
- フェノバルビタール
- 本剤の代謝を促進し作用を減弱
- リファンピシン類
- 本剤の代謝を促進し作用を減弱
- 中枢性抗コリン剤
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- トリヘキシフェニジル塩酸塩
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- 塩酸ピロヘプチン
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- 塩酸マザチコール
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- メチキセン塩酸塩
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- 塩酸ビペリデン
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- 抗コリン作用を有する薬剤
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- ブチルスコポラミン臭化物
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- 硫酸アトロピン
- 互いに干渉しそれぞれの効果を減弱
- 非ステロイド系抗炎症剤
- 消化性潰瘍
処方理由
この薬をファーストチョイスする理由(2021年9月更新)
・半減期が長く1日1回内服で済む点はアドヒアランスという意味では長所だが、安全性という意味では短所となる。適応が幅広い点は長所だが、嘔気や場合によって精神症状が悪化した経験もあり、その点は注意している。(30歳代診療所勤務医、精神科)
・1日1回で飲み忘れが少ない。他の薬を飲んでいる高齢者に導入しやすい。よくも悪くも有名で、副作用を気にする人もいる。(40歳代病院勤務医、精神科)
・他の抗認知症薬もそうだが、根本を改善するのではなく、見かけを良くするだけであり、しばしば周辺症状を悪化させることもあるので注意が必要。投与するとすれば最も歴史が長いドネペジルだが、効果がなかったり、周辺症状の悪化があればすぐに中止している。(60歳代病院勤務医、精神科)
・抗認知症薬の中で比較的早い段階から使用されており、投与経験が豊富で、後発品も処方できる。腎機能障害の程度に応じて減量が必ずしも必須ではないなどの利点がある。(30歳代病院勤務医、腎臓内科)
・活動や気力の低下傾向のある患者さんでは活動が活発化する傾向がある。反対に、多動性の場合はメマンチン塩酸塩を選択する場合が多い。(70歳代開業医、一般内科)
この薬をファーストチョイスする理由(2020年1月更新)
・認知症に対する薬剤としては基本的なものと認識しています。効果の点からはメマリーの方がより現れやすいとは思うのですが、ファーストチョイスで使用するかとなると、なかなか手を出しにくいのが現状です。(60歳代病院勤務医、一般内科)
・アリセプトが主だが、レミニール、メマリーも前医が処方していれば続けることがある。特にどの薬剤が一番効果が高いかといった顕著な結果は見られない。投与開始時の所見から判断しないと比較は難しいと思う。(60歳代開業医、一般内科)
・アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症に適応があり、多少ながら認知症進行抑制効果を有する。短所は3mgから5mgに増量しなければならないこと、循環器系や消化器系の副作用が多いこと。(40歳代病院勤務医、循環器内科)
・後発医薬品もある点、そしてメイドインジャパン(エーザイ)の薬剤として、まずはこれで始められる先生が多いのではないでしょうか。認知症専門医の立場からも、一番スタンダードと思います。(50歳代病院勤務医、精神科)
・どの薬も効果が良く分からない印象があるが、アリセプトは外すと認知症の症状が表れる、あるいは悪化して、効いているなあと実感できる患者さんがいる。(70歳代診療所勤務医、循環器内科)
この薬をファーストチョイスする理由(2017年12月更新)
・まずアリセプトから始めます。副作用出現や病状悪化の場合に他の薬剤に変更します。(60歳代病院勤務医、精神科)
・易怒性が出たり、心不全には使いにくいところもあるが、症例に応じて使い分けが必要。(50歳代病院勤務医、消化器内科)
・ジェネリックが存在する、適応病期が広い。(40歳代病院勤務医、循環器内科)
・効果は「限定的」です。胃腸に障ったり、興奮がひどくなって介護負担が強くなったりする症例が、能書の記載以上に多い印象です。(50歳代病院勤務医、一般内科)
・レミニールやリバスチグミンも使うが、まず最初はドネペジルが多い。不穏な人には、レミニールやメマリーにする。(60歳代診療所勤務医、一般内科)
・軽度から高度まで、すべてのステージのアルツハイマー型認知症の人に使用することが可能。(50歳代開業医、消化器外科)
・半減期が長く、1日1回の投与でよい。したがって内服アドヒアランスが向上することが期待できる。しかし投与で易怒性が増すなどの副作用がある場合は気になる。(40歳代病院勤務医、神経内科)
・レビー小体型認知症にも適応がある.ただし、易怒性が増すことが多いので、最近はメマリーやレミニールの処方も多い。(30歳代病院勤務医、神経内科)
・剤形が多く、選択の余地が大きい。1日1回で済むので、服用の負担が小さい。(60歳代病院勤務医、放射線科)
この薬をファーストチョイスする理由(2016年8月更新)
・レビー小体型認知症にも適応拡大になったことと、1日1回投与でいいことが処方する理由です。レミニールもおだやかないい薬ですが、服薬当初に吐き気が多いことと、1日2回の服薬がネックと感じています。(50歳代診療所勤務医、総合診療科)
・ジェネリックが発売されたこともあり、処方する頻度は最も多いです。しかし新規処方に関しては、先発のアリセプトは減り、レミニール、メマリーなど他剤を処方する機会が増えています。(50歳代病院勤務医、消化器内科)
・自閉傾向や抑鬱が見られたときに処方しています。とはいえ患者さんによっては夏場など、ややハイテンションになる方もいて気を遣います。(60歳代開業医、循環器内科)
・副作用をほどんど経験したことがないので使いやすい。ただ、易怒性のある患者さんであったり、周辺症状がある場合はメマリーを第一選択にしている。(30歳代病院勤務医、一般内科)
・第一選択としてまずアリセプトを処方している。その後、症状に合わせてレミニールやメマリーなどに変更する。(70歳以上開業医、小児科)
この薬をファーストチョイスする理由(2015年2月更新)
・軽症から重症まで使用できるから。(60代病院勤務医、放射線科)
・早く発売されたため、患者家族も知っていることがある。(60代病院勤務医、一般内科)
・レビー小体型認知症にも適応があり、使いやすい。(40代病院勤務医、その他の診療科)
・ジェネリックがあるので、低所得の患者さんにも比較的薦めやすい。(30代病院勤務医、総合診療科)
・使い慣れており、腎機能に関係なく使用できる。(40代診療所勤務医、一般内科)
・レム睡眠行動障害の改善効果が報告されている。(30代病院勤務医、呼吸器内科)
添付文書
アルツハイマー型認知症における認知症症状及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制。
(効能又は効果に関連する注意)
5.1. 〈効能共通〉本剤がアルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。
5.2. 〈効能共通〉アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症以外の認知症性疾患において本剤の有効性は確認されていない。
5.3. 〈効能共通〉他の認知症性疾患との鑑別診断に留意すること。
5.4. 〈アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制〉本剤は、アルツハイマー型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
5.5. 〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉本剤は、レビー小体型認知症の臨床診断基準に基づき、適切な症状観察や検査等によりレビー小体型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
5.6. 〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉レビー小体型認知症における精神症状・レビー小体型認知症における行動障害に対する本剤の有効性は確認されていない。
〈アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制〉
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。
〈レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制〉
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。
(用法及び用量に関連する注意)
7.1. 3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1〜2週間を超えて使用しないこと。
7.2. 10mg/日に増量する場合は、消化器系副作用に注意しながら投与すること。
7.3. 医療従事者、家族などの管理のもとで投与すること。
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1. 重大な副作用
11.1.1. QT延長(0.1〜1%未満)、心室頻拍(torsades de pointesを含む)、心室細動、洞不全症候群、洞停止、高度徐脈(各頻度不明)、心ブロック(洞房ブロック、房室ブロック)、失神(各0.1〜1%未満):心停止に至ることがある〔9.1.1参照〕。
11.1.2. 心筋梗塞、心不全(各0.1%未満)。
11.1.3. 消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)(0.1%未満)、十二指腸潰瘍穿孔(頻度不明)、消化管出血(0.1%未満):本剤のコリン賦活作用による胃酸分泌及び消化管運動の促進によって消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)、十二指腸潰瘍穿孔、消化管出血があらわれることがある。
11.1.4. 肝炎(頻度不明)、肝機能障害(0.1〜1%未満)、黄疸(頻度不明)。
11.1.5. 脳性発作(てんかん、痙攣等)(0.1〜1%未満)、脳出血、脳血管障害(各0.1%未満)。
11.1.6. 錐体外路障害
1). 錐体外路障害(アルツハイマー型認知症:0.1〜1%未満):寡動、運動失調、ジスキネジア、ジストニア、振戦、不随意運動、歩行異常、姿勢異常、言語障害等の錐体外路障害があらわれることがある〔8.1参照〕。
2). 錐体外路障害(レビー小体型認知症:9.5%):寡動、運動失調、ジスキネジア、ジストニア、振戦、不随意運動、歩行異常、姿勢異常、言語障害等の錐体外路障害があらわれることがある〔8.1参照〕。
11.1.7. 悪性症候群(Syndrome malin)(0.1%未満):無動緘黙、強度筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水・電解質管理等の全身管理とともに適切な処置を行うこと(本症発症時には、白血球増加や血清CK上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能低下がみられることがある)。
11.1.8. 横紋筋融解症(頻度不明):筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中ミオグロビン上昇及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
11.1.9. 呼吸困難(0.1%未満)。
11.1.10. 急性膵炎(0.1%未満)。
11.1.11. 急性腎障害(0.1%未満)。
11.1.12. 原因不明の突然死(0.1%未満)。
11.1.13. 血小板減少(0.1%未満)。
11.2. その他の副作用
1). 過敏症:(0.1〜1%未満)発疹、そう痒感。
2). 消化器:(1〜3%未満)食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢、(0.1〜1%未満)腹痛、便秘、流涎、(0.1%未満)嚥下障害、便失禁。
3). 精神神経系:(0.1〜1%未満)興奮、不穏、不眠、眠気、易怒性、幻覚、攻撃性、せん妄、妄想、多動、抑うつ、無感情、(0.1%未満)リビドー亢進、多弁、躁状態、錯乱、(頻度不明)悪夢。
4). 中枢・末梢神経系:(0.1〜1%未満)徘徊、振戦、頭痛、めまい、(0.1%未満)昏迷。
5). 肝臓:(0.1〜1%未満)LDH上昇、AST上昇、ALT上昇、γ−GTP上昇、Al−P上昇。
6). 循環器:(0.1〜1%未満)動悸、血圧上昇、血圧低下、上室性期外収縮、心室性期外収縮、(頻度不明)心房細動。
7). 泌尿器:(0.1〜1%未満)BUN上昇、尿失禁、頻尿、(頻度不明)尿閉。
8). 血液:(0.1〜1%未満)白血球減少、ヘマトクリット値減少、貧血。
9). その他:(0.1〜1%未満)CK上昇、総コレステロール上昇、トリグリセライド上昇、アミラーゼ上昇、尿アミラーゼ上昇、倦怠感、むくみ、転倒、筋痛、体重減少、(0.1%未満)顔面紅潮、脱力感、胸痛、(頻度不明)発汗、顔面浮腫、発熱、縮瞳。
発現頻度は、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症承認時までの臨床試験及び使用成績調査、高度のアルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症承認時までの臨床試験の結果をあわせて算出した。
(禁忌)
本剤の成分又はピペリジン誘導体に対し過敏症の既往歴のある患者。
(重要な基本的注意)
8.1. レビー小体型認知症で日常生活動作が制限される錐体外路障害、あるいはレビー小体型認知症で薬物治療を要する程度の錐体外路障害を有する場合、本剤の投与により、錐体外路障害悪化の発現率が高まる傾向がみられていることから、重篤な症状に移行しないよう観察を十分に行い、症状に応じて減量又は中止など適切な処置を行うこと〔11.1.6参照〕。
8.2. 定期的に認知機能検査を行う等患者の状態を確認し、本剤投与で効果が認められない場合、漫然と投与しないこと。
8.3. 他のAChE阻害作用を有する同効薬<アルツハイマー型・レビー小体型認知症>(ガランタミン等)と併用しないこと(AChE:アセチルコリンエステラーゼ)。
8.4. アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症では自動車運転等の機械操作能力が低下する可能性があり、本剤により意識障害、めまい、眠気等があらわれることがあるので自動車運転等危険を伴う機械操作に従事しないよう患者等に十分に説明すること。
(特定の背景を有する患者に関する注意)
(合併症・既往歴等のある患者)
9.1.1. 心疾患(心筋梗塞、弁膜症、心筋症等)を有する患者、電解質異常(低カリウム血症等)のある患者:QT延長、心室頻拍(torsades de pointesを含む)、心室細動、洞不全症候群、洞停止、高度徐脈、心ブロック(洞房ブロック、房室ブロック)等があらわれることがある〔11.1.1参照〕。
9.1.2. 洞不全症候群、心房内伝導障害及び房室接合部伝導障害等の心疾患のある患者:迷走神経刺激作用により徐脈あるいは不整脈を起こす可能性がある。
9.1.3. 消化性潰瘍の既往歴のある患者:胃酸分泌の促進及び消化管運動の促進により消化性潰瘍を悪化させる可能性がある。
9.1.4. 気管支喘息又は閉塞性肺疾患の既往歴のある患者:気管支平滑筋の収縮及び気管支粘液分泌の亢進により症状が悪化する可能性がある。
9.1.5. 錐体外路障害(パーキンソン病、パーキンソン症候群等)のある患者:線条体のコリン系神経を亢進することにより、症状を誘発又は増悪する可能性がある。
(妊婦)
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療での有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(動物実験(ラット経口10mg/kg)で出生率減少、死産仔頻度増加及び生後体重増加抑制が報告されている)。
(授乳婦)
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること(ラットに14C−ドネペジル塩酸塩を経口投与したとき、乳汁中へ移行することが認められている)。
(小児等)
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
(相互作用)
本剤は、主として薬物代謝酵素CYP3A4及び一部CYP2D6で代謝される〔16.4参照〕。
10.2. 併用注意:
1). スキサメトニウム塩化物水和物[筋弛緩作用を増強する可能性がある(併用薬剤の脱分極性筋弛緩作用を増強する可能性がある)]。
2). コリン賦活剤(アセチルコリン塩化物、カルプロニウム塩化物、ベタネコール塩化物、アクラトニウムナパジシル酸塩)、コリンエステラーゼ阻害剤(アンベノニウム塩化物、ジスチグミン臭化物、ピリドスチグミン臭化物、ネオスチグミン等)[迷走神経刺激作用などコリン刺激作用が増強される可能性がある(本剤とともにコリン作動性の作用メカニズムを有している)]。
3). CYP3A阻害剤(イトラコナゾール、エリスロマイシン等)、ブロモクリプチンメシル酸塩、イストラデフィリン[本剤の代謝を阻害し作用を増強させる可能性がある(併用薬剤のチトクロームP450(CYP3A4)阻害作用による)]。
4). キニジン硫酸塩水和物等[本剤の代謝を阻害し作用を増強させる可能性がある(併用薬剤のチトクロームP450(CYP2D6)阻害作用による)]。
5). カルバマゼピン、デキサメタゾン、フェニトイン、フェノバルビタール、リファンピシン等[本剤の代謝を促進し作用を減弱させる可能性がある(併用薬剤のチトクロームP450(CYP3A4)の誘導による)]。
6). 中枢性抗コリン剤(トリヘキシフェニジル塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、マザチコール塩酸塩水和物、メチキセン塩酸塩、ビペリデン塩酸塩等)、アトロピン系抗コリン剤(ブチルスコポラミン臭化物、アトロピン硫酸塩水和物等)[本剤と抗コリン剤は互いに干渉しそれぞれの効果を減弱させる可能性がある(本剤と抗コリン剤の作用が、相互に拮抗する)]。
7). 非ステロイド性消炎鎮痛剤[消化性潰瘍を起こす可能性がある(コリン系の賦活により胃酸分泌が促進される)]。
(過量投与)
13.1. 症状
コリンエステラーゼ阻害剤の過量投与は高度嘔気、嘔吐、流涎、発汗、徐脈、低血圧、呼吸抑制、虚脱、痙攣及び縮瞳等のコリン系副作用を引き起こす可能性があり、筋脱力の可能性もあり、呼吸筋弛緩により死亡に至ることもあり得る。
13.2. 処置
アトロピン硫酸塩水和物のような3級アミン系抗コリン剤が本剤の過量投与の解毒剤として使用でき、アトロピン硫酸塩水和物の1.0〜2.0mgを初期投与量として静注し、臨床反応に基づいてその後の用量を決める(他のコリン作動薬では4級アンモニウム系抗コリン剤と併用した場合、血圧及び心拍数が不安定になることが報告されている)。
(適用上の注意)
14.1. 薬剤交付時の注意
14.1.1. PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜に刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある)。
14.2. 薬剤調製時の注意
14.2.1. 自動分包機を使用する場合は欠けることがあるため、カセットのセット位置及び錠剤投入量などに配慮すること。
14.3. 薬剤服用時の注意
14.3.1. 本剤は舌の上にのせて唾液を浸潤させると崩壊するため、水なしで服用可能である(また、水で服用することもできる)。
14.3.2. 本剤は寝たままの状態では、水なしで服用させないこと。
(その他の注意)
15.1. 臨床使用に基づく情報
外国において、NINDS−AIREN診断基準に合致した脳血管性認知症(本適応は国内未承認)と診断された患者を対象(アルツハイマー型認知症と診断された患者は除外)に6カ月間のプラセボ対照無作為二重盲検試験3試験が実施された。最初の試験の死亡率はドネペジル塩酸塩5mg群1.0%(2/198例)、ドネペジル塩酸塩10mg群2.4%(5/206例)及びプラセボ群3.5%(7/199例)であった。
2番目の試験の死亡率はドネペジル塩酸塩5mg群1.9%(4/208例)、ドネペジル塩酸塩10mg群1.4%(3/215例)及びプラセボ群0.5%(1/193例)であった。3番目の試験の死亡率はドネペジル塩酸塩5mg群1.7%(11/648例)及びプラセボ群0%(0/326例)であり両群間に統計学的な有意差がみられた。なお、3試験を合わせた死亡率はドネペジル塩酸塩(5mg及び10mg)群1.7%、プラセボ群1.1%であったが、統計学的な有意差はなかった。
15.2. 非臨床試験に基づく情報
動物実験(イヌ)で、ケタミン・ペントバルビタール麻酔又はペントバルビタール麻酔下にドネペジル塩酸塩を投与した場合、呼吸抑制があらわれ死亡に至ったとの報告がある。
(取扱い上の注意)
20.1. 製剤の特性上、擦れ等により錠剤表面が一部白く見えることがある。
20.3. PTP包装はアルミ袋開封後、湿気を避けて保存すること(なお、光により変色することがあるため、PTPにUVカットフィルムを使用している)。
20.4. バラ包装はアルミ袋開封後、光を遮り、湿気を避けて保存すること(光により変色、湿気により吸湿することがある)。
(保管上の注意)
室温保存。
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