日経メディカル処方薬事典データ協力:株式会社メドレー

漢方製剤(概論)解説

かんぽうせいざい(がいろん)

薬の解説

薬の効果と作用機序

  • 自然由来の生薬(しょうやく)から構成され漢方医学の治療などで使われる薬
    • 漢方医学は中国起源の医学が日本に伝わった後、日本で独自に発展を遂げた伝統医学
    • 漢方医学は日本の風土や日本人の体質などに合わせて独自に発展し、特に17世紀頃大きく発展したとされている
    • 個々の症状や体質などをあらわす「証(しょう)」という漢方医学で重要な概念があり、一般的にはこの証に合わせた漢方薬が使われる(漢方薬の中にはあまり証によらずに使われる製剤もある)
  • 漢方製剤は植物、鉱物、動物といった自然由来の生薬から構成されている
    • 漢方製剤は基本的に複数の生薬から構成されるが、クラシエ甘草湯(カンゾウトウ)のように、単一の生薬成分を構成生薬とする製剤もある
  • 近年ではがん化学療法による有害事象の改善に使われるなど、がん治療の領域で有用となる漢方薬もある
  • 剤形に関して
    • 日本の医療現場で最も普及しているのはエキス製剤(エキス剤)・エキス原末に乳糖やデンプンなどの賦形剤を加え形を整えた剤形・顆粒剤(エキス顆粒)、細粒剤(エキス細粒)、錠剤(エキス錠)、カプセル剤(エキスカプセル)に分けられる
    • 上記のエキス製剤以外にも伝統的な剤形として、湯液、丸剤、散剤、軟膏剤がある

詳しい薬理作用

漢方医学は中国を起源とする医学が中国から直接あるいは朝鮮半島経由で伝来した後、日本の風土や日本人の体質などに合わせて独自の発展を遂げた伝統医学で特に17世紀頃に大きく発展したとされている。

漢方医学では患者個々の症状や体質などをあらわす「証(しょう)」という重要な概念がある。

漢方医学の医療行為は大きく診断と治療に分かれ、一般的に診断では患者の病態を判定し、治療に用いる処方の適応の条件を絞り込んで証を決定する。この証の決定には四診といって医師が五感によって患者を診断する方法がとられる。四診とは以下に挙げられる漢方独自の診断法。

  • 望診:体全体(体格、動作など)、顔色、皮膚の色、舌など様々な身体の部位を肉眼でよく観る診断法。特に舌の望診(舌診)は漢方の診断で非常に大切とされる。
  • 問診:患者自身やその家族から病歴、自覚症状、家族歴などを聞き出す診断法。漢方医学で重視する項目の一つで食欲、排便、睡眠、発汗、口の渇き、冷えやのぼせなどの症状を漢方独自の病態を意識しつつ全身状態を把握する。
  • 聞診:聴覚や嗅覚を用いる診断法で、声の調子(言語や音声など)、おなかの鳴る音、咳や喘鳴などを耳で聞く他、身体や排泄物などの臭いの情報も含まれる。
  • 切診:体に手で直接触れて診断する方法で、動脈に指をあてて脈の力や速さを確認する脈診、腹部に触れ充実の度合いや圧痛点(指などで圧迫した際、強い痛みを感じる点)を確認する腹診は特に重要とされる。

これら四診によって得られた情報をもとに、健康な状態からの隔たりを判断し、判定した病態に対して改善方法を提示し治療を行う。

漢方薬(漢方方剤)は漢方医学で使う薬で、基本的には2つ以上の生薬から構成される(漢方製剤の中にはクラシエ甘草湯のように単一の生薬成分から構成されているものもある)。生薬成分は植物・鉱物・動物といった自然由来の成分で、この生薬の組み合わせによって漢方方剤ができている。

一般的には患者個々の証に合わせて適する方剤が使われるが、五苓散(ゴレイサン)のように比較的証によらずに使える漢方薬もある。

漢方薬は臨床で長い期間培われてきた実績や経験などを踏まえて使われるが、近年ではその科学的根拠(エビデンス)が解明されてきている漢方薬もある。大建中湯(ダイケンチュウトウ)、六君子湯(リックンシトウ)、抑肝散(ヨクカンサン)などはその一例となる。漢方薬の中には、がん化学療法による副作用の軽減に対して有用であったり認知症の治療に有用であったりする薬などもあり、今後も注目を集める薬のひとつとなっている。

主な副作用や注意点

  • 一般的に漢方薬であらわれる副作用はある程度限られていて、極めて稀な特異反応を除けば多くが想定可能なものとされている(以下は漢方薬でみられる副作用を大きく3つに分けたもの)
    • ネビゲータ反応:個々の証に合わない漢方薬により生じる副作用・個々の「証」に合った漢方薬を決定するために役立つ反応にもなるため「ナビゲータ反応」の他に「手がかり反応」などと呼ばれる
    • 瞑眩(めんげん/めんけん):漢方薬で治療中に呈する漢方医学に特有の激しい反応で、比較的マイルドな漢方薬を服用した直後に一過性におこるとされる症状・一般的に慢性の難治疾患が漢方薬による治療で治癒する過程でみられる・通常、症状は比較的激しいものだがそのまま服薬を続けていくと数日で激しい症状は治まり、難治疾患も治癒していくとされる(但し、服用中に想定外の激しい反応がみられた場合は担当医や薬剤師に連絡するなど適切に対処する)
    • 真の副作用(一般的におこる頻度は非常に稀とされる):体表面(皮膚や粘膜など)や身体内部(肺や肝臓など)でおこる過敏反応、心血管系の反応・「真の副作用」は漢方薬が「証」に合っているいないに関わらずみられる・症状として、上気道症状(頭痛、咳、咽頭痛、鼻汁など)、皮膚粘膜症状(発疹、痒み、口内炎など)、薬剤性肺障害、間質性肺炎、薬剤性肝障害、薬剤性膀胱炎、偽アルドステロン症、動悸、不整脈、心不全などが挙げられる
  • 「真の副作用」の例
    • 甘草(カンゾウ)を含む製剤での偽アルドステロン症(偽性アルドステロン症)・甘草に含まれるグリチルリチン酸がコルチゾールを増加させ、電解質異常がおこることで、低カリウム血症(筋肉痛、脱力感など)、不整脈、高血圧、ほてり、浮腫などがあらわれる場合がある・グリチルリチン酸を含む製剤(グリチロンなど)を使用している場合は特に注意が必要
    • 間質性肺炎(特に黄芩(オウゴン)を含む製剤)・頻度は非常に稀とされる・漢方薬による間質性肺炎の症例の多くは小柴胡湯(ショウサイコトウ)などの黄芩を含む漢方薬(黄芩を含まない漢方薬においても症例報告は少数ある)・階段を登ったり少し無理をしたりすると息切れしたり息苦しくなる、空咳が出る、発熱するなどがみられ、これらの症状が急に出現したり持続したりする場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
    • 薬剤性肝障害・頻度は非常に稀とされるが漢方薬の服用中にAST、ALT、γ-GTPなどの上昇などを伴う肝機能障害があらわれる場合がある・特に黄芩(オウゴン)を含む漢方薬では注意が必要とされる・漢方薬の服用中に倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、吐き気、痒みなどがみられ症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
    • 心血管系症状・主に麻黄(マオウ)や附子(ブシ)などを含む漢方薬において、動悸、不眠、精神神経系症状(めまい、興奮など)、頻脈などがあらわれる場合がある
  • その他、漢方薬による主な副作用と生薬の例
    • 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気などがあらわれる場合がある(胃腸が虚弱などの場合は特に注意する)・麻黄(マオウ)、地黄(ジオウ)、川芎(センキュウ)、酸棗仁(サンソウニン)などを含む漢方薬では特に注意する
    • 皮膚症状:皮膚や粘膜の過敏反応により、発疹、発赤、痒みなどがあらわれる場合がある・桂皮(ケイヒ)、当帰(トウキ)、人参(ニンジン)、地黄(ジオウ)、ゴマ油などを含む漢方薬では特に注意する
  • 妊婦(及び妊娠している可能性がある婦人)に対する注意
    • 漢方薬は一般的に安全性が高く、妊婦に対して使われることも多いが注意は必要
    • 大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、附子(ブシ)、桃仁(トウニン)、牡丹皮(ボタンピ)などの生薬を含む漢方薬は早流産などを引き起こす可能性があり特に注意する(特に胎児の器官が形成される妊娠4〜15週の妊娠初期には原則として使用を控える)

一般的な商品とその特徴

葛根湯(カッコントウ):ツムラ葛根湯、クラシエ葛根湯など

  • 葛根(カッコン)、大棗(タイソウ)、麻黄(マオウ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)から構成
  • 風邪(感冒)などの熱性の疾患で、悪寒、発熱(自然発熱を伴わないもの)、頭痛、項背部のこわばり、肩こり、局所の疼痛(神経痛、片頭痛など)、気管支炎などの改善が期待できる
  • 葛根湯加川芎辛夷(カッコウトウカセンキュウシンイ)に関して
    • 葛根湯に川芎(センキュウ)と辛夷(シンイ)を加えた方剤
    • 風邪(感冒)による頭痛、発熱、項背部のこわばり、肩こりなどに加え、鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎などの改善が期待できる
  • 葛根加朮附湯(カッコンカジュツブトウ)
    • 葛根湯に蒼朮(ソウジュツ)と附子(ブシ)を加えた方剤
    • 強い悪寒などがある状態における肩こり、神経痛などの改善が期待できる

大建中湯(ダイケンチュウトウ):ツムラ大建中湯、コタロー大建中湯

  • 乾姜(カンキョウ(ショウガ))、人参(ニンジン)、山椒(サンショウ)から構成
  • 腹や手足の冷えがある腹痛、嘔吐、膨満感などの改善が期待できる
  • 手術後のイレウス、腸閉塞などの予防や消化管運動障害の改善などを目的として使う場合もある

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ):ツムラ芍薬甘草湯、クラシエ芍薬甘草湯など

  • 芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)から構成
  • 急激におこるけいれん性の疼痛やこむら返り、神経痛、腹痛などの改善が期待できる
  • 抗がん薬(タキサン系微小管阻害薬など)による筋肉痛や関節痛などに対して使われる場合もある
  • 芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)に関して
    • 芍薬甘草湯に附子(ブシ)を加えた方剤
    • 冷えがあり関節や筋肉の痛み、麻痺感などがある神経痛、関節炎などの改善が期待できる

補中益気湯(ホチュウエッキトウ):ツムラ補中益気湯、クラシエ補中益気湯など

  • 黄耆(オウギ)、蒼朮(ソウジュツ)、人参(ニンジン)、当帰(トウキ)、柴胡(サイコ)、大棗(タイソウ)、陳皮(チンピ)、甘草(カンゾウ)、升麻(ショウマ)、生姜(ショウキョウ)から構成
  • 全身の倦怠感、食欲不振、貧血などの改善が期待できる
  • 抗がん薬などによるがん治療における全身倦怠感に対して使われる場合もある

六君子湯(リックンシトウ):ツムラ六君子湯、クラシエ六君子湯など

  • 蒼朮(ソウジュツ)、人参(ニンジン)、半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、大棗(タイソウ)、陳皮(チンピ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)から構成
  • 胃腸機能が低下している状態における胃炎、胃アトニー、消化不良、食欲不振、吐き気などの改善が期待できる
  • 抗がん薬による食欲不振や機能性ディスペプシアなどの改善に使われる場合もある

抑肝散(ヨクカンサン):ツムラ抑肝散、オースギ抑肝散料など

  • 蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、川芎(センキュウ)、当帰(トウキ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、柴胡(サイコ)、甘草(カンゾウ)から構成
  • 方剤名にある「肝」は「怒り」や「興奮」などをあらわし、これらの精神神経症状を抑える効果が期待できることから由来
  • 神経症、不眠症、小児の夜なき、小児疳症などの改善が期待できる
  • 認知症の周辺症状、線維筋痛症などの改善に使われる場合もある
  • 抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)に関して
    • 抑肝散に生薬の陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)を加えた方剤
    • 一般的に抑肝散の適する証に比べ、体力が低下し慢性化している状態に適するとされる

牛車腎気丸(ゴシャジンキガン):ツムラ牛車腎気丸

  • 地黄(ジオウ)、牛膝(ゴシツ)、山茱萸(サンシユ)、山薬(サンヤク)、車前子(シャゼンシ)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂皮(ケイヒ)、附子(ブシ)から構成
  • 八味地黄丸(ハチミジオウガン(別名:腎気丸))に牛膝、車前子を加えたもので、方剤名の由来にもなっている
  • 疲れやすさや四肢の冷えなどを伴う下肢痛、腰痛、しびれ、目のかすみ、排尿困難、頻尿、むくみ、痒みなどの改善が期待できる
  • 脊柱管狭窄症、糖尿病性神経障害などのしびれや冷感などの改善に使われる場合もある
  • 抗がん薬による末梢神経障害の改善に使われる場合もある

加味逍遙散(カミショウヨウサン):ツムラ加味逍遙散、クラシエ加味逍遙散料など

  • 柴胡(サイコ)、芍薬(シャクヤク)、蒼朮(ソウジュツ)、当帰(トウキ)、茯苓(ブクリョウ)、山梔子(サンシシ)、牡丹皮(ボタンピ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、薄荷(ハッカ)から構成
  • 疲労しやすく、肩こり、頭痛、めまい、不眠、不安などの症状があるような冷え、月経異常、更年期障害などの改善が期待できる
  • 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)と並び、婦人科領域でよく使われる漢方薬のひとつ

小青竜湯(ショウセイリュウトウ):ツムラ小青竜湯、クラシエ小青竜湯など

  • 半夏(ハンゲ)、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、五味子(ゴミシ)、細辛(サイシン)、芍薬(シャクヤク)、麻黄(マオウ)、乾姜(カンキョウ)から構成
  • 水様の痰や鼻水、くしゃみ、咳などを伴う鼻炎、アレルギー性鼻炎、感冒、結膜炎などの改善が期待できる

麦門冬湯(バクモンドウトウ):ツムラ麦門冬湯、クラシエ麦門冬湯など

  • 麦門冬(バクモンドウ)、半夏(ハンゲ)、粳米(コウベイ)、大棗(タイソウ)、人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)から構成
  • 痰が切れにくく、咽喉の乾燥などを伴う咳、気管支炎、気管支喘息などの改善が期待できる

薬の種類一覧

漢方製剤(概論)の医療用医薬品(処方薬)

外用薬:皮膚塗布剤

内用薬:カプセル剤

内用薬:散剤

内用薬:錠剤

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