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処方薬事典データ協力:株式会社メドレー

分子標的薬(イピリムマブ) 解説

ぶんしひょうてきやく(いぴりむまぶ)

分子標的薬(イピリムマブ)の解説

薬の解説

薬の効果と作用機序
  • がん細胞を攻撃するリンパ球T細胞の活性に対する抑制的調節を遮断することなどにより、がん細胞の増殖を抑える薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • リンパ球T細胞上に発現するCTLA-4が抗原提示細胞上のCD80/CD86分子と結合すると、T細胞の活性化が抑えられ、がん細胞などへの攻撃が抑えられる
    • 本剤はCTLA-4とCD80/CD86の結合を阻害することで、T細胞の活性化を維持させることで抗腫瘍効果をあらわす
  • 本剤は免疫による攻撃が過剰にならないように調節するTreg(制御性T細胞)の機能を低下させる作用などもあらわす
  • 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
詳しい薬理作用

がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖する。

通常、体内ではリンパ球のT細胞などにより、がん細胞などを異物として攻撃する免疫反応がおこる。しかし、がん細胞はリンパ球の活性化を抑える物質を作り出すことなどによって免疫反応から回避する作用をあらわす。

体内で、がん細胞などが異物という情報をT細胞に伝えるのが抗原提示細胞となる。T細胞上に発現するCTLA-4(細胞障害性Tリンパ球抗原-4)という物質が抗原提示細胞上のCD80/CD86分子(B7.1及びB7.2分子)と結合すると、T細胞の活性が抑えられ、がん細胞などへの攻撃が抑えられる。またT細胞の一つにTreg(制御性T細胞)というものがあり、免疫機能による攻撃が過剰にならないように調節する働きがあるが、この細胞にもCTLA-4は発現している。

本剤はCTLA-4に結合する抗体であり、これによりCTLA-4とCD80/CD86の結合を阻害することで、活性化T細胞における抑制的調節を遮断し、腫瘍抗原特異的なT細胞の増殖及び活性化させることでがん細胞の増殖を抑制する。またTregのCTLA-4と結合することで、Tregの機能低下や腫瘍組織におけるTreg数の減少を引き起こすことで抗腫瘍効果をあらわすとされる。

イピリムマブは特定物質に結合する抗体として造られたモノクローナル抗体であり、がん細胞の増殖に関わる特定分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる。また、がん細胞に対する免疫細胞の攻撃を阻止しているブレーキ役の部分を免疫チェックポイントと表現することから、本剤は免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれることがある。

なお、イピリムマブ(商品名:ヤーボイ®)は悪性黒色腫に対して使われる他、他のがんに対する効果も期待されており、本剤と作用の仕組みは異なるが、PD-1という免疫チェックポイントの阻害薬であるニボルマブ(商品名:オプジーボ®)と本剤の併用療法などの臨床での効果も期待されている。(なお、2018年5月に「根治切除不能な悪性黒色腫」に対するイピリムマブとニボルマブの併用療法が追加承認され、2018年8月には「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」に対するイピリムマブとニボルマブの併用療法が追加承認されている)

主な副作用や注意点
  • インフュージョンリアクション(薬剤投与による免疫反応などによりおこる有害事象)
    • 発熱、悪寒、掻痒症、発疹、高血圧、低血圧、呼吸困難などがあらわれる場合がある
  • 消化器症状
    • 下痢、吐き気、腹痛などがあらわれることがあり、場合によっては大腸炎や消化管穿孔などの重度な症状があらわれる可能性もある
  • 皮膚症状
    • 痒み、発疹、皮膚がむける、紅斑などがあらわれることがあり、頻度は稀だが過敏症などの重度な皮膚障害があらわれる可能性もある
  • 眼症状
    • 視野がぼやける、物が二重に見える、眼痛、異物感などがあらわれる場合がある
  • 精神神経系症状
    • 頭痛、味覚異常、しびれ、めまいなどがあらわれる場合がある
  • 肝機能障害
    • ALTやAST上昇などを伴う肝機能障害があらわれる場合がある
    • 倦怠感(いつもより疲れやすいなど)、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、吐き気・嘔吐、痒みなどがみられ症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 腎障害
    • むくみ、尿量の減少、一時的な尿量の増加、発疹、体のだるさなどがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 間質性肺炎
    • 少し無理をしたりすると息切れがする・息苦しくなる、空咳が出る、発熱などがみられ、これらの症状が急にあらわれたり続いたりする
    • 上記のような症状がみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
一般的な商品とその特徴
ヤーボイ
  • 悪性黒色腫への治療では体重に応じた投与量を通常、1日1回、3週間間隔で4回投与する
  • 腎がん(腎細胞がん)の治療ではニボルマブと併用し、体重に応じた投与量を通常、1日1回、3週間間隔で4回投与する

薬の種類一覧

分子標的薬(イピリムマブ)の医療用医薬品(処方薬)
注射薬:液剤

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