処方薬事典データ協力:株式会社メドレー
※キーワードをスペースで区切るとAND検索に、半角の「|」で挟むとOR検索になります
分子標的薬(オファツムマブ) 解説
ぶんしひょうてきやく(おふぁつむまぶ)
分子標的薬(オファツムマブ)の解説
薬の解説
-
リンパ球B細胞の表面に発現しているCD20抗原というタンパク質に結合し、結合した細胞を溶解することで抗腫瘍効果をあらわす薬
- 慢性リンパ性白血病はリンパ球B細胞が末梢血、骨髄、リンパ節、脾臓などで増殖する悪性腫瘍
- B細胞の表面にはCD20抗原というタンパク質などが発現している
- 本剤はCD20抗原に高い親和性で結合し、結合したB細胞を溶解する作用をあらわす
- 本剤は特定分子の情報伝達などを阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
- オファツムマブは白血病(慢性リンパ性白血病)のほか、多発性硬化症などに対しても有用となる
がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し正常な細胞を障害し、転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖する。
白血球の中のリンパ球の一つであるB細胞は抗体を産生するなどの役割を果たしている。慢性リンパ性白血病はリンパ球B細胞が末梢血、骨髄、リンパ節、脾臓などで増殖する悪性腫瘍であり、CD20抗原というタンパク質などがB細胞の表面に発現している。
本剤はCD20分子の抗原決定基(エピトープ)に特異的に結合し、補体依存性細胞障害作用(CDC)及び抗体依存性細胞障害作用(ADCC)によりB細胞を溶解することで抗腫瘍効果をあらわす。同じくCD20抗原を標的とする薬剤としてリツキシマブ(主な商品名:リツキサン)があるが、本剤はリツキシマブとは異なる抗原決定基を認識しCD20分子の細胞外小ループ及び大ループに高い親和性で結合し、結合後の解離速度も遅いなどの特徴をもつとされる。
本剤は特定物質に結合する抗体として造られたモノクローナル抗体であり、特定分子の情報伝達などを阻害することで抗腫瘍効果などをあらわす分子標的薬となる。
なお、オファツムマブは細胞融解作用を介して末梢及び中枢神経病巣における自己反応性のリンパ球のB細胞及びT細胞の免疫反応を抑えるため、これらのリンパ球が病巣形成(急性期病巣の形成)に深く関わる多発性硬化症への有用性も考えられる(2021年に、オファツムマブの皮下注製剤〔ケシンプタ皮下注〕が多発性硬化症の治療薬として承認されている)。
-
インフュージョンリアクション(薬剤投与による免疫反応などによりおこる有害事象):主に静注製剤において注意が必要
- アナフィラキシー、発熱、悪寒、疼痛、咳嗽、呼吸困難、血圧下降、倦怠感などがあられわる場合がある
- 特に初回投与開始から24時間以内は症状があらわれやすいとされ十分に注意する
-
腫瘍崩壊症候群:主に静注製剤において注意が必要
- 体内の尿酸が増える、カリウムなどの電解質バランスが崩れるなどがあらわれる場合がある
- 治療開始後、尿量が減ったなどがみられた場合は医師、看護師、薬剤師に連絡する
-
血液障害(好中球減少、貧血、白血球減少など)
- 重篤な血球減少などがあらわれる場合がある
- 血球減少などにより、敗血症や肺炎などの感染症があらわれる場合もある
-
進行性多巣性白質脳症
- 非常に稀とされるが、意識障害、認知障害、麻痺症状、言語障害などがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
-
オファツムマブの静注製剤
- (比較的)CD20抗原の発現量の少ない慢性リンパ性白血病に対しても効果が期待できるとされる
-
インフュージョンリアクション予防のための前投与に関して
- 通常、本剤投与30分〜2時間前に、抗ヒスタミン薬、解熱鎮痛薬、副腎皮質ホルモンの前投与を行う
- 3回目投与以降の副腎皮質ホルモンの前投与に関しては患者の状態により医師の判断のもと適宜実施する
薬の種類一覧
処方薬事典は、日経メディカル Onlineが配信する医療・医薬関係者向けのコンテンツです。一般の方もご覧いただけますが、内容に関するご質問にはお答えできません。服用中の医薬品についてはかかりつけの医師や薬剤師にご相談ください。