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代謝拮抗薬(葉酸代謝拮抗薬) 解説
たいしゃきっこうやく(ようさんたいしゃきっこうやく)
代謝拮抗薬(葉酸代謝拮抗薬)の解説
薬の解説
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DNA合成に必要な葉酸代謝酵素を阻害し細胞増殖を抑えることで抗腫瘍効果をあらわす薬
- がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
- 細胞増殖には遺伝情報をもつDNAの複製が必要で、それには葉酸が代謝されてできる物質が必要となる
- 本剤は葉酸を代謝する酵素を阻害することでDNA複製を阻害し抗腫瘍効果をあらわす
- 本剤の中には複数の葉酸代謝酵素を阻害する作用をもつ薬剤もある
がん細胞は無秩序に増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し組織を壊したり、転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖する。細胞の増殖には遺伝情報が刻まれたDNAの複製が必要となる。
核酸(DNA、RNA)を構成する成分(塩基成分)には主にアデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルという物質があり構造によりプリン塩基とピリミジン塩基に分かれる。これらの塩基は葉酸が体内で代謝されて生成されるテトラヒドロ葉酸によって生成される。テトラヒドロ葉酸はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の働きによって生成される。
本剤はDHFRなどのDNA合成に必要な葉酸代謝酵素を阻害することにより、がん細胞などの増殖を抑え抗腫瘍効果をあらわす。本剤の中でもペメトレキセド(商品名:アリムタ)などはDHFRの他、複数の葉酸代謝酵素を同時に阻害することにより高い抗腫瘍効果をあらわす反面、生体内での葉酸やビタミンB12の過度な不足を招くため、副作用を軽減する目的で葉酸とビタミンB12の薬剤を併用する代謝拮抗薬となる。
なお、葉酸代謝拮抗薬のひとつであるメトトレキサート(MTX)はがん治療に使われる他、免疫抑制薬として関節リウマチなどの治療薬としても使われている。MTXは、DNA合成を阻害し、関節リウマチなどの原因となる免疫細胞の過度な活動や増殖などを改善する効果が期待できるため、MTX製剤には関節リウマチなどの治療用の製剤(主な商品名:リウマトレックス、メトレート)もある。
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消化器症状
- 吐き気・嘔吐、食欲不振、便秘、下痢、口内炎などがあらわれる場合がある
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皮膚症状
- 発疹、色素沈着、脱毛などあらわれる場合がある
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骨髄抑制
- 白血球減少、好中球減少、ヘモグロビン減少、リンパ球減少などがあらわれる場合がある
- 上記の副作用などに伴い、敗血症や肺炎などの重篤な感染症があらわれる場合がある
- 突然の高熱、寒気、喉の痛み、手足に点状出血、あおあざができやすい、出血しやすいなどがみられた場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
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急性腎障害
- 尿量が少なくなる、ほとんど尿が出ない、一時的に尿量が多くなる、むくみなどがみられる場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
- ペメトレキセド製剤
- 複数の葉酸代謝酵素を阻害し抗腫瘍作用をあらわす
- 非小細胞肺がん、悪性胸膜中皮腫(CDDP+PEM療法)などに使用する
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体内で葉酸とビタミンB12が不足し骨髄抑制などがあらわれる場合がある
- 重篤な副作用を軽減するため、本剤は葉酸製剤(製剤例:パンビタン)とビタミンB12製剤を併用して投与する
- メトトレキサート製剤
- 葉酸代謝酵素のジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し抗腫瘍作用をあらわす
- 絨毛性疾患(絨毛がん など)、乳がんでのCMF療法、膀胱がんでのMVAC療法などに使用する
- 本剤の成分(メトトレキサート)を使用したリウマチなどの治療薬(主な商品名:リウマトレックス)がある
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プララトレキサート(メトトレキサートの構造類似体)製剤
- 還元型葉酸キャリア-1(RFC-1)を介して速やかに細胞内に取り込まれ、長く滞留するように改良された製剤
- 主に再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫に対して使われる
- 副作用軽減のため通常、葉酸製剤(パンビタンなど)及びビタミンB12製剤を併用する
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