カッコいい薬剤師

かぎ分けられる?薬のにおい
「この薬は何という名前ですか」。患者さんからの質問にカッコいい薬剤師が振り向くと、目の前に分包された真っ白い粉薬。薬局名、病院名はもちろん、手がかりになるようなことは何も書かれていない。患者さんはまっすぐカッコいい薬剤師を見つめて、答えを待っている。待合室の患者さんたちも、調剤室の中にいる薬剤師たちも固唾を飲んで見守っている。
次の瞬間、カッコいい薬剤師はおもむろに薬を薬包紙の上にとる。そして一言、「ムコダイン細粒とペリアクチン散、それにアルサルミンの混合です」。待合室に感嘆の声、調剤室内に拍手の嵐。その中で、カッコいい薬剤師は何事もなかったかのように次の仕事に移っている。
なぜわかるのか。答えは簡単。においである。見た目は白くて区別のつかない薬でも、おのおのに独特のにおいがある。それをかぎ分けたのである。別に驚くほどのことではない。カッコいい薬剤師にとって、薬のかぎ分けくらい造作もない。
もちろん、そのためには日々の鍛練が必要だ。どんな散薬も封を切る時にまずにおいをかぐ。そう、あたかもソムリエがワインの栓を抜いた直後に、コルクを鼻に近づけるように。そして、そのにおいを頭に叩き込み、記憶に刷り込む。薬局内にあるすべての散薬のにおいを覚え込めば、たとえ何種類混合してあっても、言い当てられるようになるはずである。たぶん、いや、きっと。
だれでも知っているような能書きをたれる薬剤師は鼻につくだけ。ぜひ鼻の利く薬剤師になってほしい。
(鬼)
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