カッコいい薬剤師

危険な“呪文”から患者を解き放て
ある日突然、スーパーの棚からココアが姿を消したことがあった。世に言う、ココア売り切れ事件である。「ココアが健康にいい」と一言、お昼どきに電波を通じて世の中に伝えた人がいた。ことの発端は、ただそれだけだ。
ブルーベリーの時もそうだった。日焼けしたあの人の「目にいい」の一言で、ブルーベリーブームが沸き起こった。「健康にいい」「身体にいい」は、今や人々をスーパーやドラッグストアへと走らせる“呪文”と化している。
街の健康博士たる薬局薬剤師としては、常にテレビや新聞・雑誌をチェックして、どのような“呪文”が発せられているかを知っておきたいものである。患者が「○○がいいと聞いたのだが……」と尋ねてきた時に、うまく答えられないと、「あの人は何も知らない」という具合に、「素人」のレッテルを貼られかねないからだ。
患者の言う健康法を、頭ごなしに否定するのも考えものだ。「あの人は全くわかっていない」と、これまた素人扱いされてしまう。“呪文”というものは、理屈が通じにくい、なかなかやっかいなものなのである。
もちろん中には、とんでもない“呪文”もある。そんな時は、かかりつけ薬局の威信にかけて、患者を“呪文”から解き放たねばならない。
たとえ「鰯の頭」であろうとも、身体に害がなく治療の妨げにならない健康法ならば、優しく見守ってあげる度量の広さを持ち、危険な健康法に手を染めそうな患者がいたら、毅然としてそれをやめさせる——。豊富な知識を基に、こうした対応を自信を持って行える薬剤師はカッコいいと思う。
(婆)
- 第36回 カッコいい薬剤師にライバル出現! その正体は?
- 第35回 カッコいい薬剤師にカッコいい仲間
- 第34回 調剤技術に名をつけて後世に伝えよう
- 第33回 かぎ分けられる?薬のにおい
- 第32回 カッコいい薬剤師、武道に礼節を学ぶ
- 第31回 印鑑に「こだわり」を持とう
- 第30回 薬包紙アーティストと呼ばれたい
- 第29回 敬語は正しくお使いなさい
- 第28回 薬剤師のための漢字の蘊蓄?
- 第27回 患者を虜にする「いい声」を身につける
- 第26回 温泉でカッコよく英気を養おう
- 第25回 カッコいい薬剤師も「歯が命」
- 第24回 患者の心に残る「決めゼリフ」を考えよう
- 第23回 「カッコいい」の精神を後世に伝えよう
- 第22回 カッコいい薬剤師は朝をこう過ごす
- 第21回 クリスマスケーキ作りは薬剤師の独壇場?
- 第20回 調剤の待ち時間を正確にはじき出せ
- 第19回 絵心のある薬剤師はカッコいい
- 第18回 こだわりの「マイスパーテル」を持とう
- 第17回 「カッコいい薬剤師になる!」と叫ぼう
- 第16回 「正しいモノ言い」で好感度アップ!
- 第15回 薬局外からの視線にも気を配ろう
- 第14回 「知りません」と言い切る勇気を持とう
- 第13回 雨にも負けず、風にも負けない体力作りを
- 第12回 患者向けの名刺をさりげなく手渡そう
- 第11回 電話パフォーマンスで患者の信頼をゲット
- 第10回 危険な“呪文”から患者を解き放て
- 第09回 外国人サポーターに流暢な英語で服薬指導
- 第08回 きれいな手書き文字で温かみを演出
- 第07回 “七色の日本語”で薬局を患者のふるさとに
- 第06回 “七つ道具”を収納できる「オリジナル白衣」を
- 第05回 「0円」の温かいスマイル
- 第04回 患者の信頼感を左右する“背中の表情”
- 第03回 “町の化学者”を演出する眼鏡
- 第02回 ブラインドタッチで患者指導
- 第01回 ガラス越しのパフォーマンス