薬剤師道一直線

一、たかが挨拶と侮ることなかれ

 4月は薬局が新人薬剤師を迎える季節。この時期、新聞や雑誌によく出てくるのが、新社会人の困った点を取り上げたランキングである。調査によって多少の違いはあるが、「挨拶(あいさつ)ができない」「敬語が使えない」「メモを取らず同じことを何度も聞く」などが上位を占める傾向は共通している。
 中でも問題なのが、「挨拶ができない」であろう。これには「自分から挨拶をしない」「したかしないか、わからないような挨拶をする」「相手に合わせず自分のペースで挨拶する」などのバリエーションがある。あなたの薬局にも、そんな新人がいないだろうか。
 たかが挨拶と侮ることなかれ。もともと挨拶は、宋代の中国で記された禅の修行指針『碧巖録』の一節にある「一挨一拶」が語源とされる。これは、禅問答において相手の悟りの深さを推し量る行為を指した言葉であり、「挨」には「押す」、「拶」には「迫る」という意味がある。
 では、「押し・迫る」挨拶とは──。
 それはすなわち、相手との真剣勝負を意味する。相手との間合いを読み、相手の状態を慮(おもんぱか)り、それでいて自分の気持ちを素直に伝える。独りよがりでは絶対にできないものである。
 薬剤師道を極めんとする者であれば、患者さんと挨拶を交わしただけで、その日の体調や気分はもちろん、コンプライアンスの良しあしまでわからねばならぬ。挨拶一つで患者さんのすべてを見抜いてこそ、調剤報酬点数表に新設された「薬剤服用歴管理指導料」の30点も算定可能となる。
 しかし、平日午後7時を回ってから来局した患者さんに対して、妙にうれしそうに「こんばんは!」と挨拶してはいけない。これまた新設の「夜間・休日等加算」が付くからといって。「挨拶=プライスレス」なのである。

(結城 真吾)

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