薬剤師道一直線

前号で「原点」について書いた。物事には、原点(はじめ)があれば終点(おわり)もある。この「薬剤師道一直線」も、今回をもって終点、最終回となる。
もともと、薬剤師道の「道」という言葉は、柔道、剣道、茶道などの「道」である。そして、武士道の「道」でもある。
武士道に関していえば、「武士道とは死ぬことと見つけたり」という有名な言葉がある。これは元禄時代、佐賀藩の元藩士であった山本常朝が口述し、田代陣基が筆録した「葉隠」の一文である。誤解のないように説明しておくが、これは死を美化したものではなく、「死ぬ気で、命を懸けて物事を行ったときにこそ、真の成果が得られる」という意味である。決して「死=幸せ」ではない。むしろ「生=幸せ」を実践する心得である。
さて、薬剤師は常に「生」と向き合っている職業であり、「生」に責任をもつ職業である。そこについては、医師との違いはない。しかし、医師と薬剤師では、「生」に対する考え方の方向性が違う。医師は「一人でも多くの人を救う。一人でも多くの人を幸せにする」ことを常に思い、命懸けでそれに臨んでいる。対して、薬剤師は「一人として不幸な人を出さない。誰も不幸せにしない」ことを常に思い、業務に勤しむ。
薬害など、あってはならない。薬の副作用で人々が苦しんではならない。薬剤師がかかわれば、誰も泣かない。誰も悲しませない。そのためなら、どんな努力も惜しまない。そのためなら、命をも懸ける覚悟がある。そのために、われわれ薬剤師がいる。
もう一度言う。薬剤師がかかわれば「一人として不幸な人を出さない。誰も不幸せにしない」。これが薬剤師道を極めんとする者の覚悟である。これこそが、薬剤師の目指す道である。薬剤師道、一直線に進むべし。
(結城 真吾)
- 薬剤師道一直線に進むべし
- 薬剤師の原点に立ち返るべし
- 「礼」と「間合い」を習得すべし
- 最後まで、気を抜くべからず
- 薬剤師、美学を持つべし
- 薬剤師たるもの体を鍛えるべし
- 顔に責任を持つべし
- 離れて物事を見るべし
- 「理想の上司」となるべく精進せよ
- 身近な人にまず認められよ
- ラストサムライの心意気を見せよ
- 肩書を捨て実力で勝負せよ
- 薬剤師たる覚悟を新たにせよ(後)
- 薬剤師たる覚悟を新たにせよ(前)
- 薬剤師に休息の時はなし
- 患者とともに歩め
- 分け隔てなく患者に接せよ
- いつも患者のそばに立つべし
- 非常時を想定し鍛錬せよ
- 10年後の自分を思い描け
- 最高責任者として行動せよ
- 環境問題を考え行動せよ
- プロに言い訳は禁物
- たかが挨拶と侮ることなかれ
- 日々の仕事こそ荒行と心得よ
- 初心忘るべからず
- 一日の計は掃除にあり
- 弟子を取ってこそ一人前
- 薬は奇しきものと心得よ
- 名を名乗る