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裁判官が語る医療訴訟の実像
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治療法選択の際の説明はどこまで求められる?
2019/ 1/29
医療訴訟では、説明義務が争点となるケースが少なくありません。その内容は様々ですが、治療開始前に、治療法の選択肢をどこまで説明したかが問われるというのは、比較的よく見られるパターンです。
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まれでも重大な副作用・合併症をどこまで説明?
2018/12/26
11月14日付で、徳島地方・家庭裁判所長から奈良地方・家庭裁判所長に転任しました。その関係で、先月は掲載を見送らせていただきました。今月から再開しますので、よろしくお願いします。 さて、今回から説明義務について考えたいと思います。患者は自らの生命・身体・健康については自ら決める…
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労働時間上限を超えても応招義務を果たすべき?
2018/10/24
「医師の働き方改革に関する検討会」において、応招義務が議論されています。この連載でも以前、救急医療などの応招義務について触れましたが、今回は働き方改革との関係について考えてみたいと思います。 架空の例として、こんな状況を考えてみましょう。ある日、重傷を負った患者XがA病院を訪…
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開業医の転医義務が問われた2つの最高裁判決
2018/ 9/25
前回、転医(転送)義務が生じる3つの条件を紹介しました。今回は、開業医の転医義務について考えたいと思います。一口に開業医といっても、担っている機能は様々ですが、一般的には比較的軽度の疾患の治療に当たるケースが多いでしょう。そうした診療所を受診した患者に重大な病気の可能性がある…
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高次医療機関への転送義務が生じる3つの要件
2018/ 8/22
今回は、転医義務について考えたいと思います。人的態勢や物的設備の関係で、適切な医療行為を自ら行うことができない場合、医師には、患者を別の医療機関に転送して適切な医療行為を受けられるようにすることが求められます。例えば手術を要する場合、自院では対応できず、より高次の医療機関に…
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主治医の過失で上司も法的責任を問われる?
2018/ 7/25
今回は、チーム医療における医療従事者の責任のあり方を考察します。 ある医療従事者に過失がある場合、本人が責任を負うことに問題はありません。チーム医療で問題となるのは、他の医療従事者も責任を負うかという点です。医療訴訟では、患者側が医療機関の開設者を被告とするケースが多いので…
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診療拒否が違法か否かを判断する「3つの要素」
2018/ 6/19
今回は、医療機関が患者の受け入れを拒むことがどこまで認められるかについて考えてみます。医師法19条1項は、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と定めています。この応招義務は、医師が国に対して負う公法上の義務であり、…
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輸血拒否の患者に緊急輸血の必要が生じたら
2018/ 5/22
今回から、裁判例の紹介をしたいと思います。裁判には、訴える人と訴えられる人がいますが、訴える人を「原告」、訴えられる人を「被告」と言います。医療訴訟だと、原告は患者側、被告は医療機関側となるのが通常です。裁判は3審制が採られています。まず、1審として地方裁判所で双方が争います…
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他の裁判より難しい医療訴訟、1点を除いては…
2018/ 4/24
医療訴訟は、民事紛争の中でも審理や判断が最も困難な事件類型の1つであるといわれています。今回は、他の類型の訴訟と比較しつつ、医療訴訟の特徴をご説明します。
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約7割が高裁へ、医療訴訟の控訴率が高い理由
2018/ 3/27
前回は医療訴訟の手続のうち「人証調べ」までのプロセスについてご説明しました。今回は、それ以降の鑑定から判決、和解に至るまでの手続を紹介します。裁判所において、医師や患者らから詳細に事情を聞く「人証調べ」をしても、原告・被告のいずれを勝訴させるかの心証を形成できない場合、当事者…
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医療訴訟で裁判所の「人証調べ」に呼ばれたら
紛争当事者以外の医師が要請を受けることも
2018/ 2/28
今回は、医療訴訟のプロセスについてご紹介します。患者側が訴えを起こす前の段階から、順を追って見ていくことにしましょう。 患者側との間で紛争が発生する際、医療機関側は、患者や患者側弁護士から「医療過誤の疑いがある」として、カルテの開示請求や、それに引き続き協議の申し入れをされ…
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医療訴訟の患者側勝訴率が低下、その理由は?
2018/ 1/24
今回は、医療訴訟の件数や審理期間など最近の傾向をご説明します。裁判所が新しく受けた医療訴訟の事件数(新受件数)は、一貫して増え続けていましたが、2004年の1089件をピークとして減少に向かい、2009年以降は年間700件台で推移してきました。現在は年間800件前後で比較的安定しているといえ…
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32年の裁判官生活で最も印象に残った医療訴訟
2017/12/26
裁判官になって、間もなく32年経ちます。これまで裁判所での裁判実務の勤務としては、大阪地裁を振り出しに、函館地家裁、京都地裁、神戸地裁尼崎支部、大阪高裁、大阪地裁、京都地裁、大阪家裁で勤務し、現在は徳島地家裁所長をしています。刑事の経験は函館地家裁にいた3年、家裁の経験は大阪家…