肝がんとともに

肝がんの治療を受ける方へ

内科的治療について

 肝がんの治療は手術による切除が基本的ですが(「外科的治療について」参照)、切除ができない場合には、内科的治療が行われます。内科的治療には、がんの大きさや部位によって、幾つかの治療法があります。ここでは、代表的な治療であるラジオ波焼灼療法(RFA)、経皮的エタノール注入療法(PEIT)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、そして化学療法の4つを詳しく紹介します。

ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)
経皮的エタノール注入療法(PEIT)
肝動脈化学塞栓療法(TACE)
化学療法
放射線療法


■ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)

 ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)は、腫瘍に電極を差し込んで、ラジオ波という電磁波による熱で、腫瘍を凝固させる治療法です(図1)。長い針を使って皮膚の表面から腫瘍に電極を入れる方法が一般的ですが、内視鏡を使って行う方法や、開腹して直接腫瘍に電極を差し込む方法もあります。


 経皮的なラジオ波焼灼療法では、超音波やCTといった機器(「超音波検査」参照)で腫瘍の位置を確認しながら、局所麻酔後、腹部の皮膚に穿刺針を刺し、針が腫瘍内部に到達したことを確認したら通電して、その針の先端からラジオ波を照射します。

 大腿部などに対極板を張り付けておき、針の電極と対極板との間で電流が流れるようになっています。ラジオ波焼灼療法に使われる穿刺針には、大きく分けて展開針と単針があり、最近では大きな肝細胞がんにも対応できる穿刺針が開発されています。

 また、同様の原理で、マイクロ波を使ったマイクロ波凝固療法(percutaneous microwave coagulation therapy: PMCT)も行われています。しかし、ラジオ波焼灼療法の方が、1回の治療でがん細胞を壊死させる範囲が大きいため、現在ではラジオ波焼灼療法が多く施行されています。

 適応について

 基本的には、がんの大きさが3cm以内で、がんの個数は3個以下と、小型で少数の肝細胞がんに対して施行されています(「肝がんの進行度別の治療アルゴリズム」参照)。がんの大きさが3cm以下の場合、ラジオ波焼灼療法によるがん細胞の完全壊死達成率は90%以上と高いのですが、がんが大きくなると、完全な壊死となる確率は低下する傾向にあります。

 長所と短所

比較的簡便な治療法で、3cm以内のがんなら、数回の治療で根治が可能です。経皮的エタノール注入療法に比べて、再発率が低いのも特徴です。

 しかし、太い血管に接するところでは、治療効果が下がることもあります。また、時にラジオ波の熱で皮膚に熱傷が生じたり、他の臓器に近いところに腫瘍がある場合は、周囲の臓器に熱傷が生じることもあります。腫瘍が肝臓の奥にある場合などでは、まれですが、穿刺針によって胆管を傷つけてしまうケースもあります。副作用としては、治療後、痛みが残り、発熱も2〜3日続きます。

 ラジオ波焼灼療法とエタノール注入療法はどちらも局所治療と呼ばれる治療法で、3cm以内の肝細胞がんに有効です。しかし、ラジオ波焼灼療法は少ない回数で根治が可能であり、最近ではラジオ波焼灼療法が局所治療の中心になっています。

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■経皮的エタノール注入療法(PEIT)

 経皮的エタノール(アルコール)注入療法(percutaneous ethanol injection therapy:PEIT)とは、超音波の画像を見ながら、腹部の皮膚の上から腫瘍まで長い特殊な注射針を刺し、100%のエタノール液(無水エタノール)を注入して、がん細胞を壊死させる方法です(図2)。エタノールには、たんぱく質を凝固させる作用があり、その化学作用によって、がんを死滅させます。


 一般に、早期の小さいがんは1つのかたまり(結節)を形成していますが、そこにエタノール液を注入すると、エタノール液が結節内・外に浸透し、がんと周囲組織を凝固し、壊死させます。

 経皮的エタノール注入療法は、比較的安全で簡便なため広く行われ、以前は早期の肝細胞がん治療の中心的な存在でした。しかし、がんの状態によって、エタノールが腫瘍内に均一に広がらない場合が多く、何度も繰り返し行わないといけないことがあります。

 また、超音波で見えない部分に腫瘍がある場合には、治療が困難になることもあります。エタノール注入療法とラジオ波焼灼療法はどちらも局所を治療する方法ですが、最近ではラジオ波焼灼療法が治療の中心になりつつあります。

 適応について

 ラジオ波焼灼療法と同じく、基本的には、がんの大きさが3cm以内、がんの個数は3個以下の肝細胞がんに対して行われます(「肝がんの進行度別の治療アルゴリズム」参照)。

 経皮的エタノール注入療法は、繰り返して行うとがん細胞の壊死率が高くなり、3cm以下、3個以下のがんでは、完全壊死達成は90%以上となります。しかし、3cmを超えると経皮的エタノール注入療法の局所再発率は高くなります。このような3cm以上の肝細胞がんに対しては、肝動脈化学塞栓療法を行った後に、経皮的エタノール注入療法を行うこともあります。

 長所と短所

 手術のように開腹することがない上、安全で患者さんへの負担の少ない治療法です。繰り返し行えば根治も可能で、小さながんに対しては有効性が高いといえます。

 しかし、エタノールが十分に目的の腫瘍に行き渡らない場合があることや、超音波で描出できない部分に腫瘍がある場合は治療が難しいこともあります。また3cm以上のがんに対しては再発率が高くなります。

 副作用については、治療後、痛みや発熱が約半数に見られますが、一時的なもので、数時間から半日で治まります。

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■肝動脈化学塞栓療法(TACE)

 肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemo- embolization: TACE)は、肝細胞がんに栄養を送っている動脈を薬剤によってふたをすることで、がんをいわゆる「兵糧攻め」にして壊死させる治療法です。肝細胞がんはその大半が肝動脈から栄養を得ていますが、正常の肝細胞は、およそ8割が門脈から、2割が肝動脈から栄養を得ています。そのため、肝動脈を閉塞させても、正常の肝細胞は維持されるわけです。

 以前は、肝動脈を閉塞させる物質のみを注入する肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)が多く行われていましたが、現在は、油性造影剤と抗がん剤を注入後、塞栓物質を注入する肝動脈化学塞栓療法が主体となっています(図3)。

 具体的には、カテーテルという細い管を、局所麻酔後、大腿部のつけ根にある大腿動脈あるいは腕の動脈から挿入して、肝動脈までカテーテルを進め、油性造影剤であるリピオドールウルトラフルイドと抗がん剤の混合液を注入します。このとき血管造影で、目的の肝動脈にカテーテルが挿入されているかどうかを確認しながら行います。抗がん剤には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)やエピルビシン、マイトマイシンC、シスプラチンなどが使われます。

 その後、塞栓物質として1mm角の細かいゼラチンスポンジを注入して動脈を閉塞します。油性造影剤や抗がん剤、塞栓物質の量は、腫瘍の大きさや部位によって決められます。


 適応について

 肝動脈化学塞栓療法は、手術による切除ができない肝細胞がんで、がんの大きさ(腫瘍径)が3〜5cm以上、あるいは3cm以下でがんの個数が4個以上と、経皮的エタノール注入療法やラジオ波焼灼療法の適応でない進行した肝細胞がんに対して行われます(「肝がんの進行度別の治療アルゴリズム」参照)。実際に施行するかどうかは、正常な肝臓組織の割合や治療後の肝臓の機能を考慮して決定されます。

 長所と短所

 肝動脈化学塞栓療法は、3cm以上の比較的大きながん、あるいはがんの個数が多い場合でも実施が可能です。しかし、根治は難しく、繰り返し施行したり、経皮的エタノール注入療法と併用したりする場合が少なくありません。繰り返す頻度は、腫瘍の大きさや範囲によって異なりますが、2〜4カ月ごとに実施する場合が多いと報告されています。

 副作用としては、みぞおちの痛みや腹痛、吐き気、食欲不振、発熱などがありますが、通常、数日で治まります。また、一時的に血液検査で異常が出たり、肝機能も悪化したりしますが、一週間程度で元に戻ります。

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■化学療法

 化学療法とは、抗がん剤などの化学物質を使って、がん細胞の成長や増殖を抑えたり、がん細胞を破壊する治療法のことです。

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■放射線療法

 肝がんの治療には、さほど一般的ではありませんが、放射線療法もあります。放射線療法は、ラジオ波焼灼療法や経皮的エタノール注入療法などの局所治療が困難な、腫瘍径3cm以上のがんに対しても施行できるという利点があります。

 従来は放射線の照射により肝機能が低下することがありましたが、近年、陽子線や重粒子線など特殊な粒子線を使った治療の技術開発が進み、肝がんに放射線の量(線量)を集中して照射できるようになりました。これにより、肝機能を維持しつつ、抗腫瘍効果を得られるようになっています。