
【Photo Gallery】 2009.3〜
クリフム夫律子マタニティクリニック
臨床胎児医学研究所院長
夫 律子(ぷ りつこ)先生
「胎児診断は、診断自体が目的ではない」。夫先生は強調する。大切なのは、胎児に異常が見つかった場合に、正確な情報の提供をはじめとする、胎児と両親のサポートを行うことである。両親と向き合う夫先生の姿をクリニックで撮影しながら、多くの両親がNT(Nuchal Translucency)などの異常を指摘され、その情報に振り回され悩んでいることを私は知った。
「罪を憎んで、人を憎まず」。その言葉に惹かれ、弁護士を目指し法学部へ進んだ。卒業後に生命倫理への興味と、哲学者であった病床の父の勧めで医学の道へ進み、出生・生・死のすべてにかかわる産婦人科医を選んだ。
その後は階段を駆け上がるように国際舞台へ踊り出ることになる。卒後2年目に日本周産期新生児学会で池ノ上克教授に出会い、勧められるまま日台超音波シンポジウムで症例発表を英語で行った。市中病院勤務中に、経腟で胎児脳血流が見えることに気付き、脳神経外科医の夫の助言もあり、症例を重ね学会で発表。胎児脳血流を描出した画像スライドを鳥取大学名誉教授の前田一雄氏から所望され、その画像をきっかけに、胎児診断の第一人者であるクロアチアのKurjak教授との交流が始まった。
卒後6年目には日台超音波シンポジウムで座長を務め、その翌年にはイアンドナルド国際超音波講座で講師を任された。その後、Kurjak教授の下で3D超音波の研究を行った。胎児診断を専門に行うために香川県丸亀市にクリニックを開設し、2007年11月にアクセスの良い大阪へクリニックを移した。国内外で学会幹事を務めるなど、世界で発言し、世界の最先端を走っている医師である。
強い好奇心、超音波を扱うセンスや判断力、物怖じしない性格が恩師たちとの出会いを引き寄せてきた。そして恩師たちが与えた課題に必死に応えて結果を残した。その努力によって短期間に国際的な地位を築いてきた。しかしそれは夫先生が日々の臨床の場で悩む中で、研究した成果を患者さんに還元したいという思いからのものだった。夫先生は患者さんを第一に思いやりながら、今も最前線に立ち続ける臨床医だ。
クリフム夫律子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所のホームページ
(CRIFM: Clinical Research and Investigation in Fetal Medicine)
■胎児診断
クリニックには全国から多くの妊婦とその夫や家族が訪れる。最新の3D/4D超音波を用いた胎児ドック(初期11〜13週、中期18〜21週、後期28〜30週)、羊水検査、妊婦検査、不妊以外の妊娠胎児の各種相談を行っている。働く妊婦やその夫の都合を考慮して、水・金には朝7時からの早朝診察、火・木には21時までの夜間の診察を行っている。すべての診療に夫の立ち会いが可能である。
■胎児ドック
NT(Nuchal Translucency)が正常よりも分厚いとダウン症候群などの確率が増加するといわれるが、計測には正確に正中矢状断面を描出することが前提となる。しかし、NTはマーカーの一つであり、それで胎児異常が確定するわけではない。多くの測定結果と共に総合的に判断するべきことである。クリニックでは最新の3D/4Dエコーを用いて、30項目余りのチェックを行う。その後、必要に応じて羊水検査を行っている。
■羊水穿刺・染色体検査
2007年11月に大阪へクリニックを移してから、既に500例以上の羊水穿刺を行った。全国から悩める夫婦が集まり、国内で最多の症例数となった。その結果、夫先生は日々、多くの異常をもつ胎児を診断し、その両親に向き合いサポートしながら、その経験をさらに積み上げている。
■第2回NT理論・実践セミナー
夫先生は後進の指導が今後の重要な仕事だと考えている。クリニックでのNT理論・実践セミナーは2回目となる。1日目は講義、2日目は実技を指導する。クリニックを受診する妊婦さんにモデルを依頼して、実践的に胎児正中断面を描出し、NTを正確に計測できるようになることを目的にしている。