
【Photo Gallery】 2008.12〜
名古屋検疫所 検疫官
検疫衛生課長 菊池均先生
検疫所は検疫業務と輸入食品監視業務の二つの大きな業務を担っている。(本所13ヵ所、支所14ヵ所、出張所77ヵ所)。港や空港で、人、動物、食品を介し海外から侵入する病原微生物や有害物質を防止する業務を行う。検疫業務は厚生労働省の管轄であり、医学的な判断や行為が必要なため医師や看護師の資格をもつ検疫官が本所、支所に配置されている。動物検疫、植物防疫は農林水産省の管轄である。
今日、新型インフルエンザはいつ発生しても不思議ではない。マラリア、デング熱、狂犬病、黄熱など一般旅行者が感染する危険のある疾患は世界中に存在している。正しい情報を迅速に収集し、それを行政や医療者が共有し、対策を立てた上で一般国民に周知することが重要だ。名古屋検疫所の検疫衛生課長の菊池均先生は、情報を重視し、検疫官の立場で収集・発信を行ってきた方である。
菊池先生は電子工作やプログラミングに夢中になる子供だった。卒後、衛生学教室に入局した後も情報ネットワークに関わった。検疫官となった1994年、ザイールのエボラ出血熱やインドでの肺ペストの流行を契機に、世界の感染症情報を迅速に伝えていたProMedの情報を邦訳し、発信し始めた。成田空港検疫所へ異動後は上司の理解と同僚の協力を得てさらに多くの情報を発信した(現在は人員の関係で休止中)。ロンドンなどで渡航医学と感染症の知識を深め、厚生労働省検疫所ホームページ(FORTH-海外旅行者のための感染症情報)を立ち上げ、広報に務めている。
水際で対応する検疫所の業務はもちろん重要だ。しかし、動線上の1点での監視のため、海外からの病原微生物の流入について広い視野に立った対策も必要である。渡航前ワクチンの充実や、予防を意識した行動をとることが大切であり、新型インフルエンザ対策などの重要性と同様に、予防可能な疾患に対しての地道な対策の重要性を菊池先生は訴えている。
■名古屋検疫所 検疫衛生課長 菊池均先生
名古屋検疫所は港湾に面して立地し、名古屋港での船舶の防疫を担当する。検疫艇を持ち、船内で検疫検査の必要な患者が発生した場合は現場へ向かい、必要に応じて隔離など防疫措置を発動する。定期的に蚊やネズミの捕獲調査や、海水の調査を行うほか、週に1回黄熱、A型肝炎、破傷風のワクチン接種も行う。
■港湾での検疫活動
入国するすべての船舶に衛生検査が定められている。厨房、食料庫、船室などを調べ、ペストなどを媒介するネズミなどの動物や昆虫などへの対策がされているか、それらが生息した痕跡がないかを確認する。保健室の管理、ごみの分別などの保健衛生管理を指導する。発行された船舶衛生管理免除証明書の有効期限の6ヵ月以内であれば無線での検疫が許可される。
■中部国際空港での空港検疫
入国時にサーモグラフィーで発熱患者の選別を行う。体調不良の乗客乗員に対しては健康相談室で診察や検査を行う。必要時には機内での検疫を行い、水際での病原微生物の侵入を防止する。黄熱ワクチンの接種も月2回行う。
■中部国際空港での衛生検査
微生物検査部門と主に食品に対応する理化学検査部門がある。新興再興感染症に対応するためP3レベルの検査室を備えている。迅速検査キットやサーマルサイクラーなどを備えて検査体制を整えている。航空機に紛れて進入することもある空港内の蚊やネズミに対して検査も定期的に行っている。