
【Photo Gallery】 2008.4〜
小児脳神経外科医
大阪医療センター脳神経外科 山崎麻美先生
胎児診断でお腹のわが子に病気があると伝えられた時、家族には、どれほどの不安が起こることだろう。山崎麻美先生は、そうした障害を持つ子供や家族とかかわることをライフワークとしてきた。「もつれた糸を解きほぐしていくような仕事をしていきたい」。山崎先生のそんな思いは、昨年出版された著書『こどもの脳を守る』(集英社出版)にも綴られている。
2年前、山崎先生は、これから医者としての最後の10年間をどのように過ごすかを考えた。そして、後継者を育てること、研究をさらに進めること、女性医師の労働環境を整備すること、の3つを心に決めた。
後継者を育てるために、山崎先生は、若い人たちに能力を発揮できる場を与えることを心がけてきた。臨床でも研究でも適材適所を心がけ、母のように温かく見守りながら、仕事を任せている。
研究者としては遅咲きだった。40代半ばになってから、研究に没頭するためにアメリカに渡り、1年間、X連鎖性劣性遺伝性水頭症の研究を行った。帰国後、厚生労働省水頭症調査研究班の活動をきっかけに病院に隣接した研究室を立ち上げ、治療につながることを夢見ながら、次々と研究の幅を広げている。若い医師が臨床と並行して研究を行える環境も目指している。
近年の女性医師の増加と医師不足の危機感から、女性医師の支援活動を行っている。アメリカ留学中の育児経験がよい刺激になったという。「女性医師が、仕事も家庭もあきらめずに活動できる環境を築かなければ、これからの医療は成り立たない」というのが山崎先生の考えだ。
■小児脳神経外科医 山崎麻美先生
患者さんやその家族の訴えをすべて受け止め、母のように包み込む。丁寧に問題点をすくいあげ、具体的に答えていく。2006年6月からは、助産師資格をもつ寺元千佳さんを専任のコーディネーターとして置くようにした。胎児期水頭症や脊髄髄膜瘤などの胎児診断を受けた妊婦さんや家族の不安を和らげ、疾患や医療制度などの情報を伝えながら、産まれてくる児についてともに考えながらサポートしている。この2人に家族は厚い信頼を寄せている。※〔参考文献〕小児の脳神経 32: 292-296, 2007
■臨床研究センター(分子医療研究室、再生医療研究室)
1999年、先天性水頭症の分子遺伝子学的研究の拠点を創るため、病院併設の臨床研究部に研究室を立ち上げた。当時大学院生であった金村米博先生と共に、物置になっていた部屋を実験室に整備していくところからの始まりだった。2004年、文部科学省再生医療実現化プロジェクトのもと神経幹細胞バンク(セルプロセッシングセンター)を立ち上げ、実験室の整備も進めてきた。現在、先天性水頭症の発生メカニズムの研究、再生医療実現のための研究、脳腫瘍の免疫療法を行う。
■多岐にわたる活動
山崎先生が行くところには笑いが絶えない。とつとつと暖かい関西弁で話しながら、トコトコ進んでいく。レジデントには常に気を配り、若いスタッフとプライベートな話を自然にできるのも山崎先生の人柄である。児童相談所や警察から虐待症例について話し合う機会も多い。常にこどもの側に立ち、必要であれば受け入れる姿勢を伝え、解決には協力を惜しまない。最近は、女性医師の労働環境の整備に力を入れている。2008年4月19日には、休職中の女性医師に向けて「そろそろ復職しませんか」シンポジウムを開催した。今年で2回目になる。
■脳神経外科手術
山崎先生は現在、執刀はしていない。副院長になって多忙を極めるようになったこともあるが、埜中正博先生が後継者として小児脳神経外科の手術を担当しているからでもある。
脳神経外科の成人の症例数は、脳血管障害、脳腫瘍などを中心に非常に多い。血管内治療にも力を入れており、脳卒中ケアユニットも設立された。科長の森内先生を中心に、脳腫瘍に対する治療法としてエックスナイフ、ニューロナビゲーター、活性化自己リンパ球療法などにも積極的に取り組んでいる。