加来 まず始めに、SGLT2阻害薬の作用機序について浅野先生に解説していただきます。

浅野 グルコースは主要なエネルギー源として利用されていますが、疎水性の脂質二重膜に対して透過性をもたないため、細胞内に取り込まれる際には糖輸送担体と呼ばれる膜蛋白を必要とします。糖輸送担体は、促通拡散型糖輸送担体(glucose transporter;GLUT)と、Na共役能動輸送性糖輸送担体(sodium-glucose cotransporter;SGLT)に大別されます。GLUTは主に細胞内外の濃度差に基づく促通拡散輸送を担っているのに対し、SGLTはNa+/K+-ATPaseによって形成されたナトリウム勾配を利用してナトリウムとグルコースを細胞内に取り込む働きを有しています。

 SGLTファミリーは、現在、6種類のアイソフォームが知られており(表1)、特に研究が進んでいるのがSGLT1と2です。SGLT1は主に小腸に発現していますが、腎臓や心臓にも発現しています。一方、腎臓に特異的に発現しているのがSGLT2です。SGLT2は近位尿細管の近位部、SGLT1は遠位部に存在しており、協働してグルコースの再吸収を行っているわけですが、SGLT2がグルコース再吸収の90%を担っています。これまでの研究で、SGLT1遺伝子の変異や欠損によって生じる病態は、グルコース-ガラクトース吸収不良による致死的下痢症が知られています。また、SGLT5欠損マウスを用いた検討では、高用量フルクトース投与によって脂肪肝がみられることが示されていますが1)、臨床的には明確になっていません。いずれにしても、SGLTファミリーを全て阻害することは、リスクが生じる可能性が高まるわけです。しかし、SGLT2遺伝子の変異や欠損では、尿糖の閾値(通常、170mg/dL)が低下することで尿糖が排泄されますが(腎性尿糖)、現在のところ長期予後への影響は報告されていません。

 SGLT2を選択的に阻害すれば、腎尿細管における尿糖の再吸収をブロックすることで尿糖が排泄され、血中に流入するグルコースが減少し、その結果、血糖降下作用が得られます。そこでSGLT2を選択的に阻害する薬剤が、血糖降下薬として開発されてきました。

 また糖尿病患者では、尿糖の排泄閾値が高く、グルコース再吸収能が上昇していることもわかっています。ですから、尿糖の排泄閾値を正常あるいは正常域以下まで下げて尿糖量を増加させることが、SGLT2阻害薬による治療の基本概念になります。

加来 続いて下村先生より、SGLT2阻害薬の作用について解説していただきます。

下村 SGLT2阻害薬は、糖を尿から排泄することで(通常、60〜80g/日)血糖値を低下させ、それに伴い体内の糖毒性改善も期待できる薬剤です。糖毒性が解除されることにより、膵β細胞でのインスリン分泌能の改善、肝臓・筋肉・脂肪組織といった糖取り込み段階でのインスリン抵抗性改善なども期待されます。また、カロリー源である糖が排泄されることで体重が減少します。さらには、SGLT2阻害薬により糖新生が活性化することもわかっており、糖新生の基質として脂肪組織から脂肪酸が動員されることが、体重減少につながると考えられています。

 インスリン抵抗性への影響、体重減少、脂肪組織減少などにより、インスリン抵抗性や肥満などに随伴した病態の改善、例えば血中中性脂肪の低下、HDLコレステロールの上昇などにつながる可能性が考えられます。SGLT2が糖を取り込む際には一緒にNaも取り込むので、尿中へのNa排泄増加による血圧低下も期待されます。

 SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの第Ⅲ相臨床試験(プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験)をみると、24週時点のルセオグリフロジン単剤投与群(2.5mg/日、79例)では、プラセボ群(79例)に比べ有意にHbA1cが低下しました(プラセボ群との差−0.75%〔95%CI:−0.99,−0.52〕、p<0.001、共分散分析)。52週時点の単剤投与群(図1-A)では、52週時においてもベースラインからの有意なHbA1cの低下が認められました。

 また第Ⅲ相臨床試験(プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験)24週時点の体重変化についてみると、ルセオグリフロジン単剤投与群では、プラセボ群に比べ有意に体重が減少しました(プラセボ群との差−1.77kg〔95%CI:−2.30,−1.24〕、p<0.001、2標本t検定)。また単剤投与群(図1-B)では、52週時においてもベースラインからの有意な体重減少が認められました。

 併用投与群(SU薬150例、ビグアナイド薬117例、α-グルコシダーゼ阻害薬105例、チアゾリジン薬95例、DPP-4阻害薬111例、グリニド薬59例)のいずれにおいてもベースラインより有意にHbA1cの低下、体重減少が認められました(p<0.001、1標本t検定)。このSGLT2阻害薬は他の既存の経口血糖降下薬とは薬効機序が異なりますので、どの経口血糖降下薬と併用しても十分な効果が認められると考えられます。

 またルセオグリフロジン投与群では、アディポネクチンの上昇(図1-C)と腹周囲長の減少がみられたことから、体重減少は体脂肪の減少が寄与しているものと推測されます。さらに、プラセボ対照試験の併合解析(前期・後期第Ⅱ相臨床試験、第Ⅲ相二重盲検比較試験)において、血圧の低下、脂質パラメータの変動(中性脂肪の低下、HDLコレステロールの上昇)、肝機能パラメータの低下、尿酸値の低下などが認められました。

 SGLT2阻害薬が体脂肪に与える影響については、メトホルミンにダパグリフロジンを投与した報告があり、脂肪組織量における変化量をプラセボ+メトホルミンと比較すると、皮下脂肪とともに内臓脂肪の大幅な減少が認められています2)。このことから、SGLT2阻害薬は内臓脂肪の減少という作用を有している可能性が考えられます。

 

1)Fukuzawa T, et al: PLoS One 2013; 8: e56681
2)Bolinder J, et al: J Clin Endocrinol Metab 2012; 97: 1020-1031
3)ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation, 2014年3月28日改訂
※本記事のルセオグリフロジンに関する臨床データは、承認時評価資料に基づいております。