医療統計は臨床現場で不可欠なスキルになっている

科学的に実証された根拠を基にした「根拠に基づく医療(EBM)」を実現するには、医療統計学の知識と実践が必要となる。電子カルテの普及により、患者データの収集は容易になったが、多忙な臨床医が統計分析を活用するためには、教育支援や使いやすい統計ソフトが欠かせない。こうした仕組み作りに積極的に取り組んでいる聖ルカ・ライフサイエンス研究所臨床疫学センター センター長の高橋理氏に話を聞いた。

患者さんのアウトカムや安全が究極の目標

──医療統計の積極的な取り組みは患者さんや病院にとってどんなメリットがありますか。

高橋 医療機関の最終的な目標は、患者さんに最良のアウトカムを提供することです。その中で臨床研究は提供している医療の質を測り、それを医療現場にフィードバックすることで医療の質を向上させる活動と考えられます。

 当院は米国の医療機関の品質基準であるJCI(Joint Commission International)の認証を得ています。その評価項目には、臨床データを研究につなげ、患者さんのアウトカムや安全に生かしているかということが含まれています。

 医療の現場で統計を用いた臨床研究を行うことは、これまでの考え方からは異質でした。しかし、フィードバックによる質向上という共通の目標を達成するためには不可欠だと考えています。この目標をきちんとシェアすることで、医師だけでなく、看護師さんなど他の医療従事者や事務の方を含めて臨床研究に取り組んでいます。こうしたカルチャー作りが重要と言えるかもしれません。

──こうした動きを広げるためにも医療統計専門家の育成は欠かせませんね。

高橋 実際、医療に理解のある統計家が不足しています。医療現場で臨床研究を実践するわけですから、医療者と良好な関係を築けるコミュニケーションスキルを持った人材が求められています。我々も公衆衛生大学院を作って、こうした医療統計家の育成を進めようと考えています。今では統計に興味を持つ方が若い医師にも増えていますので、統計専門家と医療従事者がコミュニケーションをとりながら共同作業ができるようになっていくと期待しています。

──統計ソフトは医療統計の学習や実践にどのように役立っていますか。

高橋 現在では電子カルテのデータベースから膨大なデータを得ることができますので、以前のように表計算ソフトで処理するのは現実的ではありません。大規模なデータを扱っても安定で信頼性が高く、かつ習得が容易で使いやすい統計ソフトが必要です。

 また、最近では日本の臨床研究の場でも、他国との国際共同研究の機会が増えています。こうした機会には、SPSSなどの世界的に普及した統計ソフトを使っているとデータの共有が容易で、強みの1つになります。SPSSには、学生が手軽に統計ソフトの使い方を学べるアカデミックパッケージもありますし、フリーソフトとして研究者の間で普及している「R」との連携も実現していますので、医療統計を学ぶ環境として適しているのではないでしょうか。

──本日はありがとうございました。

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