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薬の副作用被害と、その救済について考える

医薬品を適正に服用しても、時として失明や死にいたるほどの重篤な副作用を引き起こすことがある。このような副作用被害の救済を目的とした「医薬品副作用被害救済制度」は、一般はもちろん医療関係者にも意外と知られていない。
2012年11月18日、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)が開催したフォーラムでは、PMDA救済業務委員会委員長であり東京女子医科大学名誉教授の溝口秀昭氏、慶應義塾大学病院副病院長の天谷雅行氏らが、副作用の実態とこの制度の有用性について語った。

失明、死をも招くSJ

溝口 秀昭氏 どんな薬にも効果がある反面、必ず副作用がある。胸のむかつきや眠気などの軽い症状だけではない。十分に注意し、適正な用法・用量を守り服薬したとしても、時としてスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や薬物性肝障害、無顆粒球症、横紋筋融解症のように重篤な副作用を発症する場合もある(図1)。

 最も代表的な例は、抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、抗てんかん薬、総合感冒薬などの副作用によって引き起こされるSJSだ。発症すると、38℃以上の高熱を伴い、発疹・発赤、やけどのような水ぶくれなどの激しい症状が、比較的短期間に全身の皮膚、口、目の粘膜に現れる(図2)。発生頻度は人口100万人当たり年間1〜6人。症状が悪化し、失明、死にいたるケースも報告されている。治療の際は、速やかに原因と考えられる薬を中断し、目の炎症を抑制、ステロイドの全身投与、免疫グロブリン注射、血しょう交換などを行わなければならない。

 副作用を重症化させないために最も必要なのは、「早期発見早期治療」と溝口氏は強調する。解熱消炎鎮痛薬を飲んでも高熱が続く場合、薬が効かないと勘違いし、薬を服用し続け、重症化してしまうケースがある。これまで問題なく服用していた薬でも、体調などの変化により、副作用を発症する場合もある。新たな薬を服用し始めた時は特に気を付けなければならない。「発疹など、今までにない症状が出た場合には速やかに病院に行き、服薬を中止する際は医師や薬剤師の指示で行うようにし、自分の判断で行うことはしないで下さい」と、溝口氏は注意を促した。

図1:重い副作用の例 図2:スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)

医師の認知度向上が課題

 その一方で、今回のフォーラムでは、薬の副作用の診断が難しいことも指摘された。 SJSを例に、患者が病院・クリニックを何カ所も渡り歩き、ようやく薬の副作用だと診断されたケースが紹介された。こうした場合は、失明など重い後遺症を抱えたまま、患者は仕事を辞めざるを得なくなり、厳しい生活苦に陥ることになる。

 このような薬の副作用による健康被害を救済すべく制定されたのが「医薬品副作用被害救済制度」だ。薬の副作用が原因で、入院治療が必要な程度の疾病や、日常生活が著しく制限される程度の障害などの健康被害を被った場合について救済給付金が支払われる。昭和55年5月1日以降に適正に使用された医薬品が原因となって発生した副作用による健康被害が対象。製薬会社に損害賠償の責任が明らかな場合などは対象外となるほか、抗がん剤などのうち、厚生労働大臣の指定する医薬品は対象から除外されている。

 給付の種類は、副作用によって(1)入院を必要とする程度に医療を受けた場合、(2)後遺症で障害が残った場合、(3)死亡した場合の3種類(図3)。その決定件数は年々増加し、平成23年度では1,103件。そのうち、支給決定件数は959件(86.9%)となった。

  一方で、この制度の認知度は十分とはいえない。PMDAの調査(図4)によると、一般市民では「知っている」と答えたのはわずか5%。医師でさえも47%と半数を割っている。薬剤師の84.3%と比較すると大きな乖離がある。この状況について溝口氏は、薬剤師の国家試験では毎年出題されるのに対し、医師国家試験で出題されるケースが少ないことを指摘。「医師にも認知度を高めていくためには、医学教育で本制度について取り上げること、また病棟薬剤師による協力、PMDAによる出前講座(研修会)が必要」という。この言葉を受け、天谷氏は、病院ぐるみで制度普及に努める慶應義塾大学病院の事例を紹介した。

図3:給付の種類と請求期限 図4:医薬品副作用被害救済制度

病院ぐるみで積極的な普及を

天谷 雅行氏 慶應義塾大学病院では、患者に重い副作用が生じた場合、まず各科で医師が患者に救済制度について説明。その後、書類作成の支援を医療事務室職員が行っている。患者は副作用により弱視となるなど書類作成が困難なケースが多い。患者が重篤な場合は書類の郵送も職員が行うことがあるという。一方、薬剤師は過去の服薬を問診、あわせて服薬指導を行う。そうして収集した患者の薬歴や薬剤アレルギー歴等は電子カルテに記録され、医師や看護師とも情報共有される。また、PMDAより随時発信されるメディナビなど、新たな情報も院内で共有を図りながら、薬剤師が中心となって医師や看護師に向けた教育も行っている。薬事委員会を隔月で行い、年1回は制度を周知する機会を設けているという。

 とはいえ、このような取り組みはまだまだ少ない。まずは、医療関係者がこの制度を正しく理解することが求められている。

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