子を思う親の心を原点に取り組む先端精神科医療と社会復帰支援

診療業務の可視化と業務効率化を実現したCaché採用のオーダリングシステム

財団法人慈圭会 慈圭病院は、2005年末にオーダー導入調査会を設置して院内のIT化への取り組みを開始し、2009年11月に病院全体でオーダリングシステムを本稼働させた。約1年半を費やした選定作業を経て採用されたのが、Cachéをデータベースに採用する京セラ丸善システムインテグレーションの「MEDIC EHR/P」。同システムの導入により、診療業務の可視化と診療スタッフの業務効率の向上を成し遂げた。

心のケアで頼れる総合精神科医療施設を目指して

病床数600床、1日平均200人の外来が訪れる慈圭病院は、岡山県下トップクラスの精神科専門医療施設である。精神科急性期治療病棟、精神療養病棟、認知症治療病棟を備えるほか、デイケア・作業療法センターや福祉ホームなども整備する総合精神科医療施設として発展してきた。「わが子でも安心して任すことのできる精神科病院」という理念を掲げ、創立以来、職員一人ひとりが患者とその家族の信頼に足る病院であるかを問い続けている。

財団法人慈圭会 慈圭病院 院長 岡山県精神科病院協会 会長 堀井茂男氏

財団法人慈圭会 慈圭病院 院長
岡山県精神科病院協会 会長

堀井 茂男

「創立時に掲げた理念は、今日も病院経営の基調として受け継がれています。慈愛の医療、最先端の精神科医療、最高水準の医療倫理、積極的な地域貢献、職員スタッフのチャレンジ精神という5つの行動指針を設けており、特に患者さんの自由と自主性を尊重し、早期の社会復帰を目指す活動を行ってきました。その例が、24時間完全開放の病棟整備であったり、積極的な作業療法の推進だったり、病院と社会の中間施設の併設といった取り組みです」。2007年4月に第4代院長として着任した堀井茂男氏は、病院のポリシーをこう述べる。

デイケアやリハビリテーション(作業療法)活動の中核施設である「養浩館」には約200人の患者が登録しており、毎日100人~120人が利用している。今でこそデイケアサービスを提供する精神科病院は多いが、同院は診療報酬が点数化される10年前の1979年からサービス提供を始めており、いかに社会復帰支援に力を入れてきたかわかる。また、救護施設「浦安荘」の開設や共同住宅の設置、その後もグループホームや福祉ホームを開設するなど病院と社会の中間施設を活用した社会復帰支援活動を積極的に進めている。

病院の5カ年計画に基づいてオーダリングシステム導入に着手

2000年以降、多くの病院でIT化が進む中で、精神科病院は独自性の強さから業務のシステム化が難しく、総合病院に比べてIT化が遅れていた。慈圭病院も医事課や薬局、検査部門などでシステム導入が先行していたものの病院情報システムとしてのIT化には踏み切れずにいた。しかし、病院の5カ年計画にオーダリングシステムの導入が盛り込まれたのを契機に、2005年末に「オーダー導入調査会」を発足させ、総合病院並みのITレベルを目指して取り組みが開始された。そうした背景を、病棟医長 佐藤創一郎氏は次のように語る。

財団法人慈圭会 慈圭病院 病棟医長

佐藤 創一郎

「精神科医療に関しては県下のトップクラスにあると自負していますが、ITのレベルが低いのはいかがなものかという思いがありました。総合病院のローテーション研修医が当院の状況を見て、『精神科病院はいつまで経っても手書き伝票なのですね』と偏見視されることもあり、そうしたイメージを払拭しないと、現場スタッフのモチベーションにも影響します」。

医師2名、事務部門2名によるオーダー導入調査会は、カタログ等による情報収集に始まり、4社のオーダリングシステムに絞って各社からのデモおよびプレゼンを受けるとともに、導入済み病院の見学を繰り返すなど、約1年半かけて検討を重ねた。途中、院長の交代などもあり検討保留もあったが、最終的に選定されたのがデータベースにCachéを採用する京セラ丸善システムインテグレーションの精神科向けオーダリング・電子カルテシステム「MEDIC EHR/P」だった。オーダリングや電子カルテシステムでは、患者データの蓄積や経年によって患者情報を呼び出す際のレスポンスが徐々に低下して診療業務に支障を来すケースがある。医療向けに開発されたCachéでは、そうした問題が抑えられ、大規模病院でも多く採用され、高く評価されているデータベースだ。

財団法人慈圭会 慈圭病院 医事課長

永井 秀樹

「システム選定にあたり、医事会計システム、薬局システム、検査システムなど、既存システムを運用する部門スタッフの業務継続を考慮し、これらと問題なく接続できることを最低条件に検討しました。それをクリアした上でMEDIC EHR/Pが新バージョンの開発中で、当院のニーズを取り込みながら共同して機能進化させていけるという手応えがありました」。事務部門でプロジェクト推進の中核的役割を担った医事課長 永井秀樹氏は、選定理由の1つをこう述べる。

また、同院では導入作業に際しての現場の混乱をなくすために、病棟や外来といった部門ごとの段階的な稼働と機能ごとの順次稼働を計画していたが、それを可能にする導入手法や運用指導カリキュラムをベンダーが持っているかも判断の理由だったという。

部門・オーダー種による段階的な稼働が成功の要因

導入プロジェクトは部門代表者による検討委員会のレギュラーメンバー、各部門でワーキンググループを立ち上げ、マスター構築の検討やオペレーション指導、全体リハーサル等の実施を経て、2009年5月から本格的に段階稼働へと臨んだ。プロジェクトに関わった人数は全職員の1割にあたる約40名で、「職員一丸となって病院の一大事業」(永井氏)として取り組んだという。そのメンバーの中で、全職員の半数を占める看護部の作業負担を軽減することに奔走したのが、看護副部長の秋山千広氏だった。

財団法人慈圭会 慈圭病院 看護副部長

秋山 千広

「看護スタッフは平均年齢も比較的高く、マウスを握ったことのない人も多かった。コンピュータ操作への対応ができるかが最大の課題で、適応できないことによる離職者を出さないことが私の目標でした」(秋山氏)と当時を振り返る。

同院ではオーダリングシステムの導入作業を控えた約半年前に院内LANの構築とグループウェア導入を行い、コンピュータ操作に慣れることから始めている。そのトレーニングでは、オーダリングシステム稼働後には操作しないスタッフも含めて、全員参加を基本とした。導入したシステムに関与しないスタッフだからと参加機会を奪うことは、職種による格差を認識させることになり、スタッフのモチベーション低下になりかねないという配慮からだ。

こうした初歩的なトレーニングや全体リハーサルに十分な時間を費やしてプロジェクトを進行したことに加え、当初からの計画であった段階的な本稼働により現場の課題を逐一解決していったことが、成功の大きな要因だったと永井氏は指摘する。同院では急性期治療病棟、精神病棟、認知症治療病棟などをベースに11病棟に分けられているが、これらの中から3つの病棟を先行病棟とし、まず入退院・食事・検査・医事の各オーダーを稼働させた。第2次稼働では、同じ3病棟で処方・注射・処置オーダーを稼働させ、第3次稼働として全病棟で入院系オーダーのすべてを稼働。最後の第4次稼働でデイケアオーダーを含めた外来系オーダーの本稼働へとこぎ着けた。

業務負担削減により患者と向き合う時間が増大

先行病棟の本稼働から半年を経た、2009年11月に病院全体でオーダリングシステムの運用が始まった。その後も数回の機能強化を経て現在に至っているが、導入効果を最も実感しているのが看護部だという。慈圭病院では、病棟クラークのような役割を果たす「日直業務」というデスクワークがあり、ドクターの指示から伝票をすべて起票するとともに、病院内を駆け回って指示先部門への伝票集配を一手に行う業務だった。「指示伝票の種類も数も多く、さらに詳細な記述が必要だったため、日直業務の負担は非常に大きいものでした。オーダリングシステムによって日直業務の仕事がまったくなくなったわけですから、業務削減という点で大きな効果です。患者さんと向き合う時間を多くすることを方針にしていますが、システム導入を契機に看護師本来の業務に集中できるようになりました」(秋山氏)と看護部門の導入効果を挙げる。

一方、ドクターから見たシステムのメリットは病院全体の業務の可視化が可能になったことだと佐藤氏は指摘する。オーダーに基づいたステータス管理がなされているため、患者に対して指示が出ているか、部門に伝達されているか、あるいは担当している入院患者が今どのような状態にあるかなど、病院内の状況がシステムから把握できるようになったという。

今後、同院では現在の請求にかかわるオーダーをさらに洗練させるとともに、請求に乗らないオーダー業務への拡大を予定している。オーダリング機能以外でも、患者の入院形態管理や履歴管理、あるいは病棟業務における看護必要度のシステム管理など、取り組むべき案件は次々にある。病院の一大事業として取り組んだオーダリングシステム導入が成功を収めた自信が、診療現場のIT化促進の推進力になりつつある。

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